ゴクドーに転生ですが何か?

そこは、クレストリア王国という国の王都より馬で南東に一か月近くほど行った所にある最果ての辺境、騎士爵領の領主の邸宅。一人の男の子が産声を上げていた。

「この子の名は……、そう……、リュー、リュー・ランドマークだ!」

父親と思われる赤髪、茶色の目のすらっとした高身長ながらがっちりした男が、子に名付け、抱き上げた。出産した金髪、青色の目の妻も、「いい名前ね」と、喜ぶ。

ランドマーク家に三男が誕生した瞬間だった。


元・横浜竜星こと、リュー・ランドマークは、ただただ動揺していた。

気づくと身体はろくに動かず、目もその視界はおぼろげだった。

自分は誰かに抱かれているらしい。相手は大男のようだ、自分が手の平に収まる程の。

話そうとしたら、思うようにいかず、「だー」とか「うー」とかしかしゃべれない。

動揺したら、泣いていた。どうしてかわからないが、感情的に泣いてしまったのだ。

男が慌てて女性の横に寝かせた。

「リューは元気ね」

おぼろげな視界の中、これは……、まさか自分は赤子なのか……? と、いう考えにやっと思い至った。仏教でいうところの輪廻転生だろうか? とにかく、自分は生まれ変わったという事のようだ。……死んだ覚えはな……、あ! あの、テンセイマホウジンか!

リュー・ランドマークは、今や前世の記憶となった自分の最期を思い出した。

少なからず、ショックだったが、死んでしまったのなら仕方がない、考えを切り替えよう。

幸い、今度の親はカタギで良い人そうだ。

元・横浜竜星は、前世の親の顔を知らない。

生まれてすぐ親に捨てられ、子供の頃はずっと、児童養護施設で育ったのだ。

なので今回の人生は前世に比べれば、まだ幸運だろうと、思えた。


リューは家族の愛を一身に浴びてすくすくと育った。

リューは父親似の赤毛と母親似の青い目を持ち、容姿は二人の血を受け継いで恵まれていた。

育つ中、初めこそ前世の記憶と赤子の自分とのギャップに苦しむ事もあったが家族の存在が大きく助けになり、四歳にもなると、前世の記憶と今の年齢とに折り合いが付く様になってきた。

家族であるランドマーク家の人々はみんな素晴らしい人達だった。

そう、家族は驚くほど善良で、慈悲深く、領民にも優しい。

貧しい者には施しをし、助け、自分達が生活に困るのを顧みないくらい、人が良すぎた。

その為、領主であるにもかかわらず、その生活は質素で貧しかった。

リューはそんな優しいカタギであるこの家族が大好きだったので、四歳で近くの森に出かけると罠を仕掛け、獣を捕らえてランドマーク家の貧しい食事事情に、一品おかずを添えて貢献するようになった。

リューにとって、今まで受けた事がない愛情には、義理と人情を感じていたから、当然の行動であった。他にも、森で食べられそうな物をみつけては、家に持って帰っていた。

リューはずっと赤子の頃から気になっている事がある。

全ての物に一々、名前が表示されているのだ。

おかげで初めて見る物も名前だけはわかって便利だったが、それ以上はわからないので、父の書斎に侵入しては本を見て調べるようになった。字は赤子時代から物に名前が表示されているから、家族が名前を口にしたらそれと照らし合わせる事で覚えてしまっていた。

その為、ある時リューが、本を読んでいるのを発見した父親は、リューを神童ではないかと親バカぶりを見せた。それもそうだ、教えてもいないのに四歳で読み書きができるのである。

家族はリューを将来、王立学園に行かせるべきではないかと真剣に話し合うのであった。


リューは六歳になった。

そして、今日は洗礼の儀が行われる日だ。

領内の六歳になった子供たちが続々と教会に集まってくる。

子供とその両親が静かに席に着いて待っていると、時間が来た。

神父による、洗礼の儀の説明が始まった。

神父の説明によれば、「自分が持つスキル、〝才能〟を確認する事で、今後、どう努力すればいいかの指針にする」のだそうだ。

例えば、自分のスキルが斧使いと裁縫ならば、斧とそれに関係する武術と裁縫の努力をする事で、それに付随した能力を得る事が出来る。

基本ステータスもそれによって上昇していく。

斧使いならば、「力」「体力」などが中心に上がったり、補正が付く様になったりするし、裁縫なら「器用」が中心に上がったり、補正が付いたりする。

これらの能力の取得は『世界の声』が知らせてくれる。

『世界の声』とは、天上の神の声とも言われ、脳に直接聞こえてくるそうだ。

その声が聞こえる時が、努力して条件をクリアした瞬間になる。

神父の説明が終わると、一人一人奥の部屋に通されて、その子が持つスキルを確認する儀が行われる。

他の人の前で行わないのは、他人にスキルを知られる事で後々支障が出る事があるからだそうで、洗礼の儀後、人に話すかどうかは自己責任らしい。もちろん、神父には守秘義務がある。

リューの番が来た。父と母が背中を軽く押す。

「行ってきなさい、リュー。心配は何もないよ、すぐ終わるから」

「はい!」

二人に返事をするとリューは神父に部屋に入る様、誘導される。

室内には神を模した像があり、その手前にはガラスの球体を四角い箱にはめ込んだ形の道具が置いてある。これが、スキルを見る為の魔道具というものらしい。

「では、神に感謝を祈りながら、この球体に手を添えなさい」

神父に言われるままに、リューは球体に手を添える。するとまばゆい光が室内を覆う。