「ノクス様……」
ノクスは今の一部始終を見ていたのか早足でやってくると、私の肩を抱いてミシェルから遮るように自分の陰に隠した。
そして立ち上がったミシェルを睨みつけ、きつい口調でこんなことをした意図を問いかけた。
「ミシェル。お前も知っているはずだ。セレナは俺の婚約者だと」
「ええ、もちろん承知しています」
「ならどうして……!」
「先ほどセレナ嬢に言った通りです。私はこの胸の内からあふれる感情を抑えることができなくなってしまった……だから、セレナ嬢にプロポーズしたんです」
ミシェルはノクスに対して一歩も退くつもりはない、という強い目で見つめ返す。
「誤解しないでいただきたいのですが、私は本気です。本気でセレナ嬢に婚約していただきたいと思っているのです」
そうしてミシェルは最後に私に向き直ると微笑んだ。
「それではセレナ嬢、考えておいてください」
ミシェルはそう言い残すと、私たちの前から立ち去った。
一斉に貴族たちが今目の前で起こった出来事について話し始める。
好奇や嫉妬の視線が私に突き刺さる。
「セレナ。こっちへ」
その視線から庇うようにノクスが私の手を引いて、パーティー会場の外へと連れ出した。
人目を避けるように廊下を進んでやってきたのは、王宮のとある一室だった。