「ノクス様に似てるかどうかを聞きたいの。今回はノクス様に寄せてみたから。ほら、私たちって一応いとこじゃない。だからそこそこ似せれるんじゃないかと思って」
たしかに、今日のリリスの男装姿はノクスに似てるな、と思った。でもどうしてそんなことを聞くんだろう。
「似てると思うけど……」
私がそう言った瞬間、リリスの目がキラリと光った。
「それなら……今の私とノクス様。どっちの方が格好いい?」
「それはもちろん……ノクス様だけど」
私は少し頬を染めて照れながら答える。
するとリリスは苦い顔で呟いた。
「……失敗か」
え、失敗? どういうことだろう。
「失敗って……?」
「ああ、うん。私がノクス様よりも格好よくなったら、ノクス様から私の親友を取り戻せるんじゃないかと思って」
「どういうこと!?」
「最近、セレナがノクス様に独占されてる気がするの。セレナは私の親友なのに。だからこうやってノクス様から奪い返せないかなって」
「リリスがノクス様に似る必要はないよ。だって、リリスにはリリスのよさがあるんだから」
「……ありがとう」
リリスはなんてことはないような表情でコーヒーを飲む。
しかし耳が少し赤くなっていた。私はくすりと微笑する。
リリスは私の視線に気がついたのか、誤魔化すようにごほん、と咳払いをした。
「それで、話は変わるけど、知ってる? あの噂」
「あの噂……?」
私は考える。でも、噂と言われても色々ありすぎてどれかわからない。
「最近、他国の王子がこっちに留学してくるんじゃないかって噂があるの」
「えっ?」
「私の両親からの情報だけど、王家の方にはすでに話が行ってるみたい。受け入れるかどうかを今話し合ってる」
「へー……」
留学なんて、珍しい。しかも他国の王子が来るなんて。
「それで、ここからがきな臭いんだけど」
「きな臭い?」
「ええ、どうやらその留学を打診してきた国が……あのマリベルが潜伏しているかもしれない国なの」
「えっ!? シルヴァンディア王国が? それは……」
マリベルが潜伏しているであろう国から、王子が留学にやってくる。たしかにリリスの言う通りきな臭い話だ。そういえばノクスもきな臭い話があると言っていたが、多分この話のことだろう。
「でも、受け入れざるを得ないでしょうね」
「え、なんで?」
「一応留学の理由は私たちの国との親交を深めたい、だからね。それを断ったらお互いの国の関係が悪くなっちゃうし、マリベルの身柄を要求する時に、すんなりと返してもらえなくなるかもしれないから」
「あー……だから怪しくても、一応受け入れなきゃいけないんだね。マリベルの時に断れないように」
「そういうこと。まあ、でももし留学してきたとして何かできるとも思えないけどね。単なる留学生なんだし」
「だからノクス様もあんまり心配する必要はないって言ってたのか……」
まぁ、ノクスがそう言うなら、特に心配しなくてもいいだろう。
あ、そうだ。噂といえば思い出した。
私はニッコリと笑みを浮かべて質問する。
「レオン、そういえば思い出したことがあるんだけど」
「ん?」
リリスはコーヒーから顔を上げる。
「ジュリエットさんに私に関する変なこと、吹き込んでない?」
「変なことって?」
リリスは涼しい顔で首を傾げる。さすがは生まれながらの公爵令嬢。心当たりがあったとしてもそんなことは表情にも出さない。
「私がお昼に必ずデザートを頼むこととか、色々」
「別に、ちょっと報告しただけ。ジュリエットも知りたいって言ってたし」
「あ、そうだ! そういえばいつの間にあんなに仲よくなったの!? 私全然知らなかったんだけど!」
いつの間にか私抜きで親交を深めていたことに私は抗議する。私も一緒に仲よくなりたかったんですけど!
「あなたが一緒にいると、ジュリエットとあなたの話で盛り上がれないし」
「私のいないところで私の話で盛り上がらないで!?」
「仕方がないじゃない。だって、あなたの話、思ったよりも面白くてお互いに尽きないんだから」
お、面白いって……。私はそんな話の種が尽きないようなおもしろ人間になった覚えはないのに……。
私が涙目になっていると、リリスはおかしそうにクスリと笑って、私の頭をなでた。
「ごめんごめん、今度からはあなたも一緒に誘うようにするから、ね?」
「絶対だから」
「わかったわかった。お詫びにこのあとはどこでも付き合うから」
「……言ったからね」
私はそのあとリリスをいろんなところに連れ回した。