俺は拳を
「へっ」
フクロウも俺と同じ事を考えている。やつは相変わらず無口だが、不思議にもやつの意思がはっきりと伝わってくる。
「はあっ!」
気合と共に、俺は最後の拳を放った。フクロウも同時に拳を放った。両者の攻撃は交差して……
「くっ……」
俺はふらついて壁にぶつかった。そしてフクロウは……倒れてしまう。
地面に倒れたフクロウは
「……見事だ」
その一言を残して、フクロウは目を閉じた。
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夜の山道を、一人の男が必死に走っていた。
だが男の足は遅い。おかげで俺は難なく男に追いついた。
「……どこへ逃げるつもりだ?」
俺が声をかけると、男は足を止めてゆっくりと俺を振り向く。
月明かりの下で、俺は男の顔を
「……私のことをご
男の質問に、俺は笑った。
「ああ、よく知っているさ。お前は……俺の
そう、この男こそが……この善良な市民にしか見えない男こそが、薬物『天使の涙』を使って多くの人を苦しめてきた張本人……『黒幕』だ。
「初めまして。私は『アンセル』と申します」
黒幕が
「俺はレッドだ」
「存じています。
黒幕、つまりアンセルは落ち着いた態度だ。
「でもまさかフクロウが負けたなんて……想定外ですね」
アンセルが
「ご存知ですか? 貴方を暗殺する
「そうか」
「
アンセルは俺の顔を
「やっぱりレッドさんは強者です。だから……レッドさんなら私のことを理解できるはずです」
俺は何の反応も見せなかった。
「この世の多くの人間は、無知で無力な弱者に過ぎません。だからこそ力を持った強者がこの世界を変えるべきです」
アンセルの声は確信に満ちている。
「もちろん多少の
「へっ」
俺がつい笑ってしまうと、アンセルは
「……何が
「お前は自分の敗因すら知らないんだな」
「私の……敗因?」
「ああ、お前は『一番大事な教訓』を分かっていない」
俺は懐から血まみれになった文書を取り出して、アンセルに見せた。
「これが見えるか?」
「それは……」
「これはな、お前の実験の犠牲になった男が……最期の瞬間、
アンセルの顔が
「俺を信じて、命までかけてくれた人々がいるからこそ……俺はここにいる。つまりお前の敗因は……人々の力を舐めすぎたことだ」
しばらく
「……分かりました」
アンセルが微かな笑顔を見せる。
「敗北を認めます。私を
「……俺も舐めるつもりか?」
俺も微かな笑顔を見せた。
「
アンセルの顔から
「……じゃ、私を殺すつもりですか?」
「それはお前
俺は拳を握りしめた。
「たった一発だ。俺はこれからお前の身体にたった一発だけ拳を入れる。もしお前がそれに耐えたら……逮捕してやってもいい」
「ちょ、ちょっと待ってくだ……」
俺は大きく踏み込んで、アンセルの腹に一撃を入れた。
「うぐっ……!」
アンセルは血を
「がはっ!」
何度も血を吐いたアンセルは……やがて動かなくなる。俺はやつの死を確認して、その場を去った。
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砦に
「レッド!」
ドロシーが俺の姿を見つけて
「黒幕は? やつはどうなった?」
「やつは死んだ」
俺の答えを聞いて、ドロシーは視線を落とす。
「……ありがとう」
「感謝される筋合いは無い」
俺は俺を待っている組織員たちに向かって足を運んだ。