「用件じゃなくて、ただいろいろ会話したいだけ」
「俺と?」
「うん!」
シェラが頷く。
「あんたにはいろいろ聞きたいんだよ。格闘場の試合のこととか」
「へっ、それはお前らしいな」
「どういう意味?」
シェラが半目になる。
ま、少し話すのも悪くはないだろう。結局俺はシェラと一緒に庭園まで行って、木の下の
「あんたの試合はいつも
「分かった」
俺は今までの戦いを簡単に説明した。シェラは目を
「ねえ、レッド」
話の途中、シェラが口を
「あんたはもうそんなに強いのに、まだまだ強くなるつもりでしょう?」
「ああ、そうだ」
「どうして?」
シェラは真顔で質問を続ける。
「どうしてそこまで強くなろうとしているの? あんたの目標は何なの?」
「
俺はニヤリと笑った。
「お前にだけ教えてやる。誰にも言うな」
「うん」
「俺は……この王国を
「……え?」
シェラが目を見開く。
「冗談……でしょう?」
「本気だ」
俺は笑った。
「どうして……王国を?」
シェラの質問に、俺は少し間を置いた。それを説明するためには……過去を振り返らなければならない。
「見ての通り、俺は
シェラが口を噤んで俺を凝視する。
「最初はただ仕方の無いことだと思っていた。だが、ある貴族との出会いでその考えが変わった」
「貴族?」
「ああ」
俺は頷いた。
「その貴族は俺を……虫けら以下のクソを見るような目で見つめた。それで俺は分かった。あいつと俺の間には絶対的な壁があって……同じ人間として扱われることは、絶対ないということを」
シェラが
「俺は
しばらくの
「そしてこれは俺自身との戦いでもある」
俺は自分の赤い手を見下ろした。
「自分自身がどこまで強くなれるか、確かめたい。常に強敵と戦って
俺は長椅子から立ち上がった。
「話はここまでだ。また会おう」
シェラは何も言わなかった。俺はそんなシェラを残して屋敷を出た。
---
昼はあんなに晴れていたのに、夜になると雨が降り始めた。しかも結構大雨だ。
こんな大雨の中じゃ、通行人もあまりいないだろう。俺としては都合がいい。
「行くぞ」
俺の言葉に組織員たちが「はい」と答えた。俺たちは全員フードを
売人の隠れ家は、俺たちの本拠地から意外と近い。俺たちが毎日鍛錬していた間に、やつらは薬物を開発して流通させていたわけだ。
「ここだ」
港の
「
言葉と同時に、俺は扉を
「な、何なんだ!?」
「警告する」
俺はやつらに向かって声を上げた。
「もしこの中に、薬物のせいで無理矢理協力させられている人がいるなら……
その言葉を聞いて、男たちの目の色が変わる。この襲撃の意味が分かったのだ。
「貴様ら……」
男たちがこん棒やナイフなどの武器を持ち出す。どうやら誰も降参する気は無いらしい。
「どこのどいつらかは知らんが、全員殺してやる!」
男たちが
「はあっ!」
俺の
「うおおお!」
レイモンが
「こ、こいつら……うぐっ!?」
戦いは長く続かなかった。俺たちは何倍の敵も正面から
俺たちは用意してきた縄で、
「ボス、ここに」
リックが何かを発見した。それは地面についている
「これは……」
地下室の中は……蒸留器やガラス
「これが例の薬物か」
入り口付近の机の上に、白い粉末が積もっている。俺はそれを小さな
「この中の道具……全部海辺に運んで、ぶち壊してから
「はい!」
組織員たちが化学実験道具を運び始める。道具を残しておけば他のやつら、例えば警備隊に悪用される可能性がある。全部
一人になった俺は考えに耽った。本格的な薬物の開発、そして人体実験……やっぱりこいつらはただの売人ではない。もっと大きな何かが裏にあるに違いない。
---
翌日の朝、俺は
「レッドさん」
ロベルトが机から立って、俺を迎えてくれる。
「本当にお
「ロベルトさん、売人たちの
俺は単刀直入に話した。
「何か情報を得たのか?」
「はい」
ロベルトが頷く。
「彼らに薬物の開発や実験、流通を指示していたのは……やっぱり警備隊隊長のラズロさんでした」
「そうか」
「でもロベルトさん、俺はそのラズロというやつが全ての原因ではない気がする」
「……同意します」
ロベルトの表情が暗くなる。
「欲張りがお金のために
「ああ」
薬物を『流通』させただけなら、お金のためだと説明できる。しかしわざわざ『開発』や『実験』までしたのはおかしい話だ。もうお金より……別の何かが目的だと見るのが
「この件に関しては、自分なりに
「俺も調べてみる。ずいぶんきな
俺の
「じゃ、お
「分かりました」
朝の会話はそれで終わった。
---
ロベルトと別れた俺は、
「あう……!」
アイリンが明るい顔で
「元気にしてたか?」
俺はアイリンの頭を
「レッドか」
「
いつの間にか
「今日は何の用件だ? 言っておくけど、対決はもうごめんだぞ」
「安心してくれ。今日は別の件だ」
俺は懐から革袋を持ち出して、爺に渡した。
「これは何だ?」
「薬物だ」
「薬物?」
「ああ、実は……」
俺は今までのことを爺に話した。
「爺は
「どれどれ」
爺は革袋を開いて、その中の白い粉末を観察する。
「……これは『天使の涙』だな」
「天使の涙?」
「そうだ」
爺が頷く。
「ここから海を渡って、ずっと南に行けば『南方大陸』がある。この天使の涙はそこから伝わって来た薬物だ」
「南方大陸のことは本で読んだことがあるけど……」
「そこの国々では、この薬物を持ち歩くだけで
なるほど。
「
「内臓が壊れて死ぬのか」
「ああ」
爺が俺に天使の涙を返した。
「俺が
「効果だけは確かだからな。副作用を
爺が
「だが、そんな都合のいい薬物があるもんか。作用が強ければ副作用も強くなるのが常識だ」
「そうだな」
俺が頷くと、爺の顔から表情が消える。
「……注意しろ、レッド。薬物とか人体実験とか……常識の通じる連中のやることではない」
「分かった。
「へっ、お前が慎重と言ってもな」
俺は天使の涙を懐にしまった。
確かに爺の言う通りだ。俺が相手しているのは
---
次の日、俺は爺から聞いた情報をロベルトに話した。
「なるほど、薬物の正体は……悪名高い『天使の涙』でしたか」
ロベルトの顔が暗くなる。
「
「あんたの方は、何か情報を
「残念ながら具体的な情報は入手できませんでした。ですが……」
ロベルトは暗い表情で俺を見つめる。
「医者たちの話によると、最近この都市の
「その原因がこの天使の涙だと?」
「ま、貧民たちですからね。死んでも一々調査しませんし、確証があるわけではありません。ですがグレッグさんは薬物による中毒死の可能性が高いと言いました」
しばらく沈黙が流れた。
「……私も正直驚きました」
ロベルトが視線を落とす。
「もちろんここは、昔から危険な匂いが漂う都市でした。しかし同時に活気
ロベルトが本気でこの都市を案じている。裏組織のボスだが、
「もっと早く気付くべきでした」
「
「はい」
その時、
「ボ、ボス……お客さんがいらっしゃいました」
「客? 誰だ?」
「それが……」
部下は
「ビ、ビットリオさんが……多数の組織員を連れていらっしゃいました」
「ビットリオさんだと?」
ロベルトと俺の視線が交差した。
「客をここに案内しろ」
「はっ」
ロベルトの指示を受けた部下が部屋から出ていった。そしてしばらく後、険悪な顔の中年男性が姿を現す。格闘場の選手たちを
「化け物、お前もいたのか」
ビットリオが俺を
「ま、いい。貴様には用が無い」
ビットリオは俺を無視してロベルトに近づく。
「いきなり何ですか、ビットリオさん? 組織員たちまで連れてきて……」
「お前が薬物のことを調べていると聞いた」
「薬物? 何のことでしょうか」
「とぼけるな」
ビットリオの顔が
「私はこの化け物と戦って以来、お前たちの挙動を注視してきた。弱みを
「ビットリオさんらしいですね」
「それで知ったんだ。ロベルト、お前の部下たちが薬物について調べているってことを」
ビットリオがロベルトの
「もう忘れたのか? 薬物に関する情報は、まず私に報告しないと許さないぞ」
俺はビットリオに一歩近づいた。
「おい、ビットリオ。あんたと薬物に何の関係があるんだ?」
「化け物はまだ知らないのか」
ビットリオが俺を
「私には……
「息子?」
「ああ」
ビットリオは
「私は悪党だが、私の息子は……
裏組織のボスの息子が警備隊か……。
「しかし昨年、あいつは……遺体となって発見された。薬物による中毒死だった」
ビットリオはもう一度机を拳で叩いた。
「あいつが薬物なんかに手を出したはずがない。誰かに
ビットリオの声が少し
「あの日以来、私はずっと薬物について調べてきた。そしてついこの間、警備隊隊長のラズロが
ビットリオがロベルトを睨みつける。
「何か薬物に関する情報を掴んだのなら……今ここで言え。でなければ戦争だぞ」
ロベルトは俺を見つめる。俺は軽く
「……いいでしょう。ビットリオさんとは協力できそうですから」
ロベルトは今まで俺たちが調べてきた情報を、ビットリオに話した。ビットリオは
「じゃ、やっぱりラズロの
「そう簡単な話ではありません」
顔が真っ赤になったビットリオに向かって、ロベルトが冷たく言った。
「今までの情報から推論すれば、ラズロとは別の『黒幕』がいると見た方が合理的です」
「なら何を迷っているんだ!?」
ビットリオが声を上げる。
「ラズロの野郎を
「ビットリオさん、
「いや、ビットリオの言うことも正しい」
俺が口を挟んだ。
「俺たちが薬物を調べているってことは、もうすぐラズロの耳にも入る。やつが
「流石化け物だ。戦い方を知っている」
ビットリオが俺に向かって
「ロベルトさん。俺たちが迷っている間にも、やつらは動いているぞ」
「……分かりました」
ロベルトが席から立つ。
「私も
ロベルトの答えに、ビットリオの顔が明るくなる。
「よし、そうと決まれば今夜実行する」
「何かいい作戦でもあるのか?」
俺が聞くと、ビットリオが「もちろんだ」と答えた。
「ここ最近、ラズロの野郎は毎晩と言ってもいいほど
「護衛は?」
「五、六人くらいだ。そいつらを
「問題ない、俺がやる」
俺が名乗り出ると、ロベルトとビットリオが頷いた。
「あんたたちは拉致と陽動を担当してくれ」
「分かった」
「分かりました」
それで大体の作戦が決まった。今夜……俺たちは警備隊隊長を拉致する。
---
夜一時……俺は大通りの真ん中に立って、ちらっと空を見上げた。月が雲に隠れていて、空は真っ暗だ。
フードで顔を隠した後、大通りを歩いて北に向かった。そして二十分くらい後、
当然なことだが、歓楽街は夜中にも通行人が多い。俺はなるべく通行人を
「……あれか」
俺は路地の隅に隠れて、娼館の様子を
今夜の目標である『警備隊隊長ラズロ』は、二階の特別室で女と二人きりだ。それはもうビットリオの部下が
この娼館は警備隊本部から割と近い。
だからこそ俺は一人で動いている。
娼館の入り口をしばらく
「
門番に見える男は身体を
「っ……!?」
俺は後ろから門番に接近して……左手でやつの口を
「よし」
失神した門番の身体を
娼館の内部はとても華麗だ。赤いランタン、高そうな
入り口の正面に二階への階段がある。俺は
「それでさ、あの子が……」
いきなり人の声が聞こえてきて、俺は大きな
「うん、分かる。
「流石にそれはないんじゃない? いくら何でも……」
女たちの会話を聞きながら、俺は
「じゃ、私は仕事に
「うん、後でまた話しましょう」
やがて一人の女が右の方へ、もう一人は左の方へ行ってしまった。俺は
「ふう」
巨体がこんなにも不便と感じるのは初めてだ。だがこれで道が開いた。俺は忍び足で階段に近づき、そっと登り始めた。
「くっそ」
今度は男の声が聞こえてきた。
「くっそ……早く終わらせろ、まったく」
男はまだ俺に気付いていない。だがこのままでは俺も動けない。
「警備隊隊長のくせに毎晩娼館って……いい加減にしろよ、本当」
言動や
「あの野郎……」
しばらく待っていたら、男が椅子から立って足を運ぶ。これは……危ない。もうすぐ俺の姿が男の視野に入ってしまう。そうなる前に……!
「うぐっ!?」
俺は
二階には
こいつらを倒し、裏階段の扉を開けば俺の任務は成功だ。しかし……たとえ四人を
でもずっと機会を待っているわけにもいかない。他の人が二階に登ってきたり、俺が倒したやつらを見つけたりすると同じく騒ぎが起こる。ここは無理矢理にでも
「じゃ、お酒持ってくるよ」
俺が強行突破を
「……うぐっ!?」
俺は後ろから二人の男の首に左右の
「ん? 何だ?」
残り二人が今の音を聞いてしまった。
やつらは周りを警戒しながらこっちに向かう。これでは後ろから奇襲するのは無理だ。そう思った俺は全身の感覚を極限まで高めたまま、懐から
「あ……?」
やつらが空中の硬貨に視線を移す。その
「がはっ!?」
俺は物陰から飛び出て……右の男の
「ふう」
音は最低限に抑えた。でも油断は出来ない。俺は倒れた男たちの身体をなるべく見つかりにくい場所まで運んだ。
「よし、これで……」
忍び足で狭い廊下を
俺はビットリオが用意してくれた鍵で裏階段の扉を開いた。すると三人の男が階段を登ってきた。ビットリオの部下たちだ。
「俺が警戒に当たっている間に、ラズロを連れ出して
「はい」
三人の男はナイフや縄などを持って特別室に入る。特別室は厚い壁のおかげで防音性が高く、たとえ女が悲鳴を上げても外には聞こえないらしい。いや、たとえ悲鳴が聞こえても誰も気にしないみたいだ。
つまり……一階からの
しばらく後、特別室からビットリオの部下たちが出てきた。しかし……ラズロの姿が見当たらない。
「おい、どうしたんだ?」
何か様子がおかしい。そう感じた俺はビットリオの部下たちに近づいた。彼らはみんな……
「どうしたんだ?」
「そ、それが……」
異変が起きたに
「これは……」
目の前の光景に、俺は固唾を呑んだ。
華麗に
---
数秒後……俺は冷静さを取り戻して、寝台に近づいた。そして遺体を観察した。
まだ血が流れている。殺されてから数分も
でも犯人はどうやってここから逃げたんだ? 扉はずっと俺が見守っていたし、窓は小さくて人が通れるほどではない。ということは……。
「
広い部屋の隅に大きな暖炉がある。暑い夏だから今は使われていないけど、当然ながら
俺は慎重に暖炉に近づき、煙突の中を覗いた。
「……っ!?」
俺は見た。
「こいつ!」
俺の巨体では、煙突を通って
「どこだ……」
まだこの近くにいるはずだ。月明かりも無い暗い夜だけど……屋根上を走っているのなら、当然音がするはずだ。俺は全神経を集中し、小さな音も
絶対捕まえてやる。俺は足音を追って走った。暗殺者は足場の不安定な屋根上を、まるで飛行でもするかのように
追跡の
しばらく追跡していたら、暗殺者が屋根上から地面に降りて港の路地裏を走り出す。本当にとんでもないほど速い。もう速さだけなら爺と同格かもしれない。
「ちっ!」
俺も歯を食いしばって必死に走った。真夜中の競走は五分くらい続き、やがて俺たちは海岸に進入した。本来なら砂のせいで走りづらい場所だが、やつも俺も速度を落とさない。
いきなり周りが明るくなる。暗い雲が消え、月が出てきたのだ。そしてそれと同時に状況が変わる。暗殺者がいきなり立ち止まり、こちらを振り向く。俺の追跡を振り切ることは難しいと判断し……ここで仕留めるつもりなんだろう。
暗殺者は
「やっと戦う気になったのか?」
俺は
「ちっ……!」
先に動いたのは暗殺者の方だ。やつはまるで
「こいつは……」
強い。これはもう『戦いに慣れている』という水準ではない。常に生死を分ける戦いの中で生きてきた『
短剣の動きが鋭すぎて接近することも難しい。俺は守りに専念しながら機会を待った。
「はあっ!」
そして短剣がもう一度俺の目を狙ってきた時、俺は
「ほぅ」
俺は
爺を除けば……こいつは今までの相手の中で間違いなく最強だ。前後の事情がどうであれ、俺はこの戦いが楽しくなってきた!
「ぐおおお!」
暗殺者の動きが
「こいつ……」
俺は
「やるな」
傷から血が出てくる。俺は
「っ……!?」
だがその時、俺は自分の左肩から力が抜けていくのを感じた。いや、単に力が抜けていくわけではなく……感覚も無くなっていく……!
「……
暗殺者の短剣には麻痺毒が
暗殺者は立ち止まって、俺をじっと見つめる。
「何しているんだ?」
俺は声を上げた。
「今が好機だぞ。早くかかってこい」
「おい、待て!」
俺は慌てて追いかけようとした。だがもう左足の感覚まで鈍くなっている。追跡は無理だ。
「へっ」
おかしい話だが、別に気持ちは悪くない。むしろ正体不明の強敵の出現が……俺には
---
「一体どういう体なんだよ」
医者のグレッグが
「あんた、本当に人間なのか?」
「俺に聞かれても困る」
俺は上半身の服を
ここは
「普通の人だったら命まで危ないはずなのに、もう回復し始めている。どういうことだ?」
「だから医者はあんただろう? 俺に聞くな」
「医学では説明できないから困っているんだよ」
グレッグは俺の
「どうやらあんたは……他人を
「医学的な説明、ありがとう」
俺はもう一度苦笑して服を着た。その時、誰かが部屋に入ってきた。
「レッドさん」
入ってきたのはロベルトだ。彼は心配そうな顔で俺の肩を見つめる。
「お
「医者さんの話では問題ないようだ」
「幸いですね」
ロベルトが頷いてからグレッグの方を振り向く。グレッグは「じゃ、私はこれで」と言って部屋を出る。それで俺はロベルトと二人きりになった。
「レッドさん」
ロベルトは俺の真正面に座って口を開く。
「大体のことはお聞きしましたが……昨晩のことについて、もう一度ご説明頂けますでしょうか」
「ああ」
俺は昨晩のことを出来るだけ
「なるほど」
ロベルトは顎に手を当てて、しばらく
「……レッドさん、その暗殺者の正体なんですが」
「心当たりがあるのか?」
「はい」
ロベルトが慎重な顔で頷いた。
「『夜の
「初耳だな」
「裏社会に密かに伝わる暗殺集団です」
暗殺集団?
「夜の狩人は
「ほぉ」
「正体を
「だから夜の狩人か」
俺は昨晩
「まるで
「本当に怪談のような存在ではあります。何せ夜の狩人の暗殺者と戦って生き延びた人は、私が知っている限りレッドさんだけですから」
ロベルトは感心した顔で俺を見つめる。
「で、そいつがラズロを暗殺した理由は……やっぱり
「はい。この都市に薬物を広めた『黒幕』は、誰かが自分を追跡していることに気付いたのでしょう。だから暗殺者を
「そうだな」
俺は頷いた。
「しかし暗殺者は
ロベルトの説明によると、夜の狩人は標的を殺してその首を持っていく。しかしラズロの首だけならまだしも、何故
「私もそれが
ロベルトが
「もしかすると、最初からあの女も暗殺の標的だったのかもしれません」
「あの女がただの娼婦ではなかったと?」
「はい。あくまでも推測ですが、彼女はラズロと黒幕の間を繋ぐ
「可能性はあるな」
それが本当なら、黒幕は協力者のラズロと連絡係の娼婦を殺して……自分に辿り着く
「
「まったくです」
「だが、まだ道が完全に塞がれたわけではない」
俺とロベルトは席から立ち上がった。
「死んだラズロと娼婦の周りを調査すれば、何か分かるかもしれない」
「はい、直ちに調査するつもりです」
「俺は
「分かりました」
俺はロベルトと別れて診療所を出た。太陽が眩しい。
大通りでは子供たちが笑いながら走り回っていた。それを見ていると薬物や暗殺者などとは関係の無い、平和な都市に見える。
しかし実際はそうではないのだ。今この都市は見えない危機に
あの暗殺者とは、いずれまた戦うことになるだろう。今度は……逃がさない。俺は