「はあっ!」
シェラが再び上段回し蹴りを放った
「キャー!」
引っ張られて
「は、離して!」
俺はシェラの首に
「勝負ありですね!」
ロベルトが素早く宣言した。娘が心配になったんだろう。俺はシェラを手放した。
「流石レッドさんだ。このじゃじゃ馬……シェラをこうも簡単に制圧した人はレッドさんだけです」
「どうも」
俺はシェラの方をちらっと見た。シェラは
「シェラ、実力の差が分かっただろう? これからはレッドさんの指導を受けなさい」
「……分かった」
シェラは不服そうな態度だ。
「レッドさん、どうぞ娘をよろしくお願い
「ああ」
俺は頷いた。
『格闘技の教師』って、俺としては思いもよらなかった仕事だ。でも条件がいいのは確かだ。何か裏があるかもしれないけど、しばらく務めてやる。
それに……『裏組織のボスの生意気な娘』に痛い目を見せてやるのも、少しは楽しそうだ。
---
俺は小屋に戻って、今日の出来事を鼠の爺に話した。すると爺は冷たく笑う。
「ロベルトめ、
「何?」
「あいつはお前の
「俺の弱点?」
俺は
「分からないのか? お前はまだ女を知らない。それがお前の弱点だ」
「……はあ?」
そんなものが弱点だと?
「ロベルトの娘はな、見た目は
「なるほど」
俺はシェラの姿を
「だからロベルトは、自分の娘を
「まさか……」
「お前と自分の娘を結ぶつもりさ」
俺とあの小娘を?
「
「……何か裏があるとは思っていたけど、そういうことか」
「ああ、お前はもう
「何言ってんだ、爺? 俺はまだ引っかかっていないぞ」
俺の答えに爺が
「だから最初に言ったじゃないか。お前はまだ女を知らない。要するに
「俺を馬鹿にするなよ、爺。罠だと知っているのに、俺があの子に手を出すわけがないじゃないか」
「へっ、果たしてそんな自制が出来るかな?」
俺は爺の言葉を
---
次の日、俺はレイモンと一緒に組織員たちの情報を確認した。
「ほとんどが一人暮らしなんだな?」
「はい」
レイモンの話によると、レイモンとリックを除けば全員一人暮らしだそうだ。
「個人差はあるけど、みんな生活に余裕がありません。でも
「そうか」
俺は気付いた。組織員たちが格闘場の選手として戦っているのは、ただ高い報酬のためではない。そもそも報酬が高くても、
みんな格闘技が好きだから戦っている。そんな彼らだからこそ俺に
「……レイモン」
「はい」
「本拠地の話だが、港の近くの倉庫を借りた。明日から使える」
「そうですか? 流石ボスです」
レイモンが明るい顔で俺を見上げる。
「場所を教えてやる。明日の午後、本拠地の前で全員集結できるように」
「かしこまりました」
レイモンは独創的ではないけど、誠実だし行動力もある。組織員をまとめることに関しては有能だろう。
そしてみんなに『道を示す』のが、ボスとしての俺の役目だ。
---
午後になり、俺はロベルトの屋敷に入った。ボスのもう一つの役目である『収入源の確保』のためだ。
「さあ、一時間の授業だ」
俺は『裏組織のボスの生意気な娘』、つまりシェラに向かってそう言った。
「授業の内容は簡単だ。一時間の間、全力で俺にかかってこい」
「……上等だ!」
シェラが挑戦的な眼差しで攻撃を始める。俺は昨日と同じく防御に入った。
「はあっ!」
気合と共に、シェラが連続で回し蹴りを放つ。細い足のわりにはなかなかの
「ちっ!」
シェラは悔しい顔をする。最初から
「まだまだ!」
それからもシェラは激しい攻撃を続ける。その姿は……
「はあ、はあ……」
三十分くらい後、シェラは完全に
「もう終わりか?」
「くっそ……」
シェラは地面に
「明日は……絶対倒してやる……!」
「それは無理だな」
「何でだよ!?」
「俺に他の用事があるからだ。次の授業は明後日だ」
俺は
「……明後日ね。絶対来てよ」
「分かった。それまでゆっくり休め」
ま、シェラの見た目が可愛いのは認める。だがロベルトの
---
港の近くで、俺は『レッド組』の組織員たちを
「全員集まったな」
「はい」
副ボス格のレイモン、
「あれが俺たちの
海岸に向かって立っている大きな倉庫……俺たちはそれに近づいた。
「レイモン、これが
「はい」
レイモンは俺から鍵を受け取り、倉庫の
「おお……」
組織員たちが
「今日からここがお前たちの居所だ」
俺は本拠地の中に一歩踏み入った。
「俺たちはここで
みんなの視線が俺に集まる。
「そしてこの都市のどんな組織よりも強くなる。それが俺たちの目標だ」
「はい!」
みんな口を揃えて答えた。
「レイモンとリックは家族と一緒に住んでいるから、無理しなくていい」
「いいえ」
レイモンが口を開いた。
「
レイモンがそう言うと、リックが頷いた。どうやら俺は……彼らの
「分かった。全員で強くなろう」
「はい!」
それから俺たちは、本拠地の空間の
「よし。本格的な引っ
俺はみんなを見つめながら頷いた。
「じゃ、これからお前たちの実力を確認する」
「実力を? ボスがですか?」
レイモンが目を丸くして聞いた。
「もちろんだ。レイモンは俺と戦ったことがあるけど、他はまだだからな。鍛錬の計画を立てるためにも、みんな実力を確認する必要がある」
俺の言葉に全員
「ジョージから前に出ろ」
「は、はい!」
巨漢のジョージが急いで前に出る。
「当然の話だが、全力でかかってこい。それでなきゃ意味が無い」
「はい!」
俺たちはこれからもっと強くなるべきだ。そのためには個人の差、
ジョージは俺と同格の
「うっ……! さ、流石ボスです!」
ジョージが頭を下げる。
「次、ゲッリト。前に出ろ」
「はい!」
それから十五分くらい後、俺は組織員たちとの対決を終えた。やっぱりみんな強い。でも改善の余地はある。
「今日はここまでだ。身体を洗って食事しよう」
俺たちは街の
---
小屋に帰った俺は、鼠の爺とアイリンに話した。これからは組織員たちと一緒に生活すると。
「やけに真面目だな、お前」
爺が眉をひそめた。
「俺を信じてくれたやつらの覚悟に、俺も
俺がそう答えると、爺は俺の顔をじっと見つめる。俺の覚悟を見定めているようだ。
無表情の爺とは違って、アイリンは今にも泣き出しそうな顔だ。俺はそんなアイリンの頭を
「心配するな、アイリン。組織員たちの鍛錬が一息ついたら、またここで一緒に暮らすさ」
「あう……」
アイリンの顔が少し明るくなる。
「その言葉、果たして信用できるかな?」
爺が口を
「こいつ、都市での生活に満足して、こんなボロ小屋のことは忘れちまうかもしれないぞ」
「あうあう!」
アイリンが
「そんなわけがないじゃないか。いい加減にしろよ、爺」
俺は笑いながら思った。もし
---
翌日の朝、俺と組織員たちは本拠地への引っ越しを開始した。みんな荷物が少ないから時間はあまりかからなかった。
「これは東の国の格闘技が
引っ越しの後、俺は組織員たちに格闘技の本を見せた。
「身体を
「はい」
組織員たちが答えると、俺はジョージとゲッリトを見つめた。
「ジョージとゲッリトはまだ文字を知らないと聞いたが」
「は、はい」
二人が少し
「恥ずかしがることは無い。少しずつ学んでいけばいい。レイモン、俺とお前がこの二人に文字を教える」
「はい!」
それから俺は組織員たちに一対一の対決を指示し、彼らの戦いを観察した。より
今のところ、レイモンがずば
対決が終わった後、俺はレイモンとリックを呼び出した。
「リック、お前の家族は果物屋を経営しているみたいだな」
「はい」
「じゃ、これはお前に任せる」
俺はリックに革袋を渡した。
「今月の運営資金だ。レイモンと二人で相談して使うように」
「は、はい!」
「
「はい!」
これでしばらくは問題ないだろう。俺は本拠地を出てロベルトの屋敷に向かった。
---
「今日こそ、あんたをぶちのめす!」
シェラが勢いよく
「はあっ!」
下段蹴りと上段蹴りの連続攻撃……確かに動きは鋭い。だが俺は難なく防いだ。
「……ちっ!」
シェラは悔しい顔で
何しろ、シェラと戦うのもこれで三回目だ。この小娘の攻撃経路はほとんど把握している。シェラは素早い連続攻撃が得意だけど、相手に読まれてはあまり意味が無い。
「くっ!」
十分、二十分……シェラは諦めずに攻撃を続ける。そして三十分の時点で完全に疲れてしまう。
「くっそ!」
シェラは座り込んで、拳で地面を叩く。よほど悔しいようだ。
「どうして一発も……」
「今日はここまでだな」
俺は
「じゃ、次の授業は明後日だ。また会おう」
シェラを残して、俺はその場を去ろうとした。しかしその時、何かが聞こえてきた。
「うっ、ううっ……」
それは泣き声だ。シェラが座り込んだまま泣き始めたのだ。
俺は無視して足を運ぼうとした。しかし……
「くっそ、
小声で呟いてから、俺はシェラに近づいた。
「おい」
俺が呼ぶと、シェラが
「何よ?」
「泣くのはお前の自由だが、いくら泣いても強くはなれないぞ」
シェラの顔が真っ赤になる。
「じゃ、どうすれば強くなれるか教えなさいよ! あんたって教師なんでしょう!?」
確かにその通りだ。俺は内心笑った。
そもそも俺はシェラと深く関わりたくない。だから適当に相手するつもりだった。でもこれでは教師として失格だし、ロベルトにも少し恩返しするべきだ。
俺はシェラの真正面に座って、彼女の顔を
「お前には二つの問題がある」
「二つの……問題?」
シェラは手で涙を
「一つは、戦い方があまりにも単純だということだ。お前の頭の中には『早く攻撃して早く敵を倒す』ことしか入っていない」
「そ、それは……」
「もちろん攻撃的な戦い方が有効な時もある。しかし『それだけ』だと駄目だ。特に相手との体格の差が激しい時はな」
シェラは別に低身長ではない。しかし俺とは絶対的な体格の差がある。
「体格の差が激しいから、いくらお前が体重を乗せて攻撃しても俺にはあまり効かない。そういう時は
「……じゃ、もう一つの問題は?」
さっきまで泣いていたシェラは、もう挑戦的な顔になっている。向上心の高い子だな。
「もう一つの問題は、お前に
「はあ?」
シェラが眉をひそめる。
「何言ってんのよ? 私だっていろんな相手と……」
「全部父の部下だったんだろう?」
俺の言葉にシェラは口を
「ボスの娘を相手に、本気で戦えるやつがいるもんか。みんな消極的に戦って、結局お前の攻撃に倒されたはずだ」
「でも……」
「お前が攻撃しか知らないのも当然だ。相手がみんな消極的、いや、ほぼ
俺は無表情で話を続けた。
「つまりお前は父の
しばらく
「……私はどうすればいいの?」
自分の
「お前がそれでも強くなりたいと言うんなら、俺が出来るだけのことを教えてやる」
「本当?」
「ああ。でも今日はもう時間だから、次の授業からだ」
「うん、分かった」
シェラが頷いた。こう見ると『裏組織のボスの生意気な娘』じゃなくて、
俺が地面から立ち上がると、シェラも立ち上がる。
「じゃ、俺はこれで」
「あ、あの……」
「何だ」
「その……ありがとう」
シェラは
俺は「気にするな」と答えてから、シェラを残して足を運んだ。
---
本拠地の二階、一番
部屋は広くて
「へっ」
俺は別に『場所が変わると眠れない人』ではない。だが鼠の
ま、今生の別れでもないし……時間が出来れば会いにいけばいい。俺はそう思って眠りについた。
そして翌日、俺は早朝から『レッド組』の組織員たちを連れて鍛錬を始めた。
まずは体力をつけるために走る。港から海岸まで、海岸から街まで、街から港まで……人々の視線を浴びながら走り続ける。
本拠地に
「さあ、かかってこい」
少し
「さ、
「よくやった、レイモン」
六回連続の対決が終わると、各々に必要なことを指示する。文字を知らないジョージとゲッリトには勉強を、経験の足りないカールトンにはレイモンとの対決を、体力の足りないエイブには走りを、腕力の足りないリックには筋力訓練を指示するわけだ。
食事、休憩、訓練、勉強、対決……どれも大事だ。細かいことは誠実なレイモンと頭のいいリックに任せてもいいけど、大きな方向は俺が決めるべきだ。
「レイモン、
「分かりました!」
俺は本拠地を出て格闘場に向かった。組織員たちの試合の日程を確認するためだ。
港から大通りに出て十五分くらい歩くと格闘場だ。門番が俺の姿を見てすぐ扉を開けてくれた。
「おはようございます、レッドさん」
格闘場に入るや
「レッドさん、その……話は聞きました」
「話?」
「レッドさんの試合、全部取り消しになってしまったと」
「ああ、そうみたいだな」
「残念です……」
トムが項垂れる。
「素晴らしい戦いをもっと見たかったのに……本当に残念です」
トムは俺よりも残念がっている。ありがたい話だ。
「ま、確かに残念ではあるな。五十連勝くらいしたかったのに」
鼠の爺の記録を
「レッドさんが最強すぎて
「そのうち挑戦してくるやつが現れるかもしれない。その時は
「はい、任せてください!」
トムが
「トム、お前は何故ここで働いているんだ?」
俺は疑問を素直に聞いてみることにした。
「こういう言い方はあれだが、お前は裏社会に似合わない人間だと思うが」
「それは……」
トムは少し
「自分は……ボスに大きな恩があります」
「ロベルトに?」
「はい」
トムが真面目な顔で頷く。
「自分は生まれた時から身体が弱くて、子供の
「そうか」
「しかし……結局自分の薬代のせいで姉が借金を背負うことになりました。それである日、家に
借金取りか。よくある話だな。
「自分と姉は絶望しましたが……その時、
「ロベルトが……」
「数年後、少し元気になった自分はボスに恩返しがしたくて組織に入ろうとしました。ボスは身体の弱いやつは
そんな事情があったのか。
「自分は
トムが俺を見上げる。
「いつかは、レッドさんの半分くらいだけでもいいから強くなって……ボスに恩返しして、自分の家族を自分の手で守りたいです」
「いい心構えだが、それでは
「そ、そうですよね。やっぱり自分には……」
「男なら
その言葉にトムが笑う。
「いや、流石にそれは無理です。レッドさんを超えるなど自分には
俺も笑った。
「……トム」
「はい」
「俺の下で鍛錬してみないか?」
俺の急な提案に、トムは目を丸くした。
---
『レッド組』のみんなは、本拠地での生活と鍛錬に適応していった。一緒に暮らしてからたった二日目なのに、彼らはもう一心不乱に動いていた。
朝の訓練の後、俺はレイモンと一緒に組織の運営方針について話した。まだ始まったばかりの組織だし、細かい規則などをしっかり決めておく必要がある。
「そう言えば……」
ふとレイモンが口を開いた。
「ボスの試合、全部取り消しになったようですね。本当に残念です」
トムと同じく、レイモンも俺より残念がっていた。
「ボスの試合を見ていると、何というか……勇気をもらいます」
「勇気?」
「はい」
レイモンが頷いた。
「観客たちの声にも
「なるほど」
俺の自分勝手な戦いが、他の人の目にはそう映っていたなんて。ちょっと不思議な気持ちだ。組織員たちは……ただ力に対する憧れで俺に従っているわけではないのだ。
「たった一度の人生だからな」
俺は組織員たちの訓練する姿を眺めた。
「他のやつらに何を言われようが、俺は俺の生き方を変えるつもりは無い。時間が
「流石です」
レイモンが感心した顔で頷く。
「その、ボスの目標は何でしょうか。最強の
「まずはレッド組をこの都市最強の組織に鍛え上げるつもりだ。その次は……」
「その次は?」
「その次は、その時になったら教えてやる」
俺は微かに笑った。
---
午後三時頃、俺は
俺が屋敷に
「レッドさん」
ロベルトは
「ちょうどよかった。ロベルトさん、少し話できるかな?」
俺はロベルトに近づいた。
「何事でしょうか?」
「トムのことだ。実はあいつを少し鍛錬させてやるつもりだったんだが、どうやらボスの許可が必要らしい」
「なるほど」
ロベルトが頷いた。
「そういうことならレッドさんにお任せしても問題ないでしょう。トムのことをよろしくお願い
「ああ」
「じゃ、私はこれで」
ロベルトは馬車に乗って街の方に向かった。俺は屋敷に入った。
美しい庭園を通って屋敷の裏側に回ると、健康美
「頑張り屋だな」
「……レッド!」
シェラが俺を
「約束通り、今日からお前に出来るだけのことを教えてやる」
「うん!」
シェラは明るい顔で頷いた。
「先日話したけど、俺とお前は体格の差が激しい。だから
「うん、分かってる」
「そこで考えられるのが『
俺は手を
「ちょ、ちょっと! いきなり何を……」
「じっとしていろ」
掴んだ手を引っ張ると同時に、外側にひねった。
「痛っ!」
シェラが短い悲鳴を上げると、俺は
「このように、人間は関節をひねられると意外と簡単に制圧される。場合によっては直接殴るよりも効果的だ」
「そんなこと、言葉だけで説明してよ!」
シェラが怒った顔で
「実際に経験してみるのが一番早く理解できる。つべこべ言うな」
それから俺はシェラに関節技の基本と応用を教え始めた。
「ち、近すぎるよ……」
シェラがまた文句を言った。確かに俺とシェラは
「仕方ない。関節技はもともと身体を密着させて使う技だ。それに戦いの
「そうかもしれないけど、ずっと密着しているのは……ちょっと恥ずかしい」
「へっ」
俺は思わず笑った。
「お前のようなじゃじゃ馬にも恥ずかしいことがあるのか」
「わ、私だって……!」
「つべこべ言うな」
顔が真っ赤になったシェラを無視して、俺は授業を続けた。
「関節技は腕力よりも頭だ。相手の姿勢や行動を考えて、どこをどれほど押さえるか常に計算するべきだ」
「うん」
シェラもこの
シェラは向上心もあるし頭もいい
「じゃ、今日はここまでだ」
「あの、レッド」
「ん?」
「ありがとう」
「俺は一応教師だからな」
シェラは何か言いたそうな顔だったが、俺はそのまま屋敷を出た。
---
その日の夜、俺は組織員たちと共に格闘場に来た。今日はジョージとリックの試合がある。二人を応援するために、俺たちは観客席に並び立った。
「来たな、デカブツ!」
「今日もやっちまえ!」
やがてジョージが試合場に登場すると、観客たちが
俺はフードで顔を
「はあっ!」
試合が始まるや否や、ジョージは相手の選手を追い
「ジョージ様の勝ちです!」
数分後、相手の選手が倒れてジョージの勝利が宣言された。楽勝だ。俺と組織員たちはジョージに
それから他の選手たちの試合が二回あって、その後リックの試合が始まる。
「おい、リック!
ジョージも俺たちに合流してリックを応援した。試合の直後なのに元気なやつだ。
「うっ……!」
しかしリックは苦戦した。相手が強いのもあるけど、やっぱりまだ
「はあ、はあ……」
でもリックは
「はあっ!」
相手がリックの
「……リック様の勝ちです!」
「おおおお!」
「よくやったぞ!」
リックの勝利に観客たちが
今日の主役であるジョージとリックを祝うために、俺たちは本拠地でパーティーを開いた。小さくて
やがて
「ボスも歌ってください!」
「お、俺?」
俺は内心
「さあ、早く!」
「……分かった」
覚悟を決めて席から立ち、文字を勉強していた頃覚えた歌を歌った。戦場に出ている兵士が、故郷の
「流石ボスです!」
「ありがとう」
俺が歌い終えると、組織員たちが拍手してくれた。俺は自分の顔が元々赤いことに感謝しながら席に
俺たちは夜通し一緒に話し合って、一緒に笑って、一緒に眠りについた。
---
翌日、みんなで
「来たか、トム」
「おはようございます、レッドさん!」
俺はトムのことを組織員たちに
「みんなも何度か見かけたことがあると思うが、こいつはロベルト組のトムだ。今日からここで少し
「よ、よろしくお願い致します!」
トムが上気した顔で挨拶した。そんなトムをみんな笑顔で
俺はまずトムを走らせて、体力を
午後になり、俺はトムのことをレイモンに任せて本拠地を出た。そして郊外の屋敷に向かった。
「レッド!」
短い
「ねえ、一つ聞いてもいい?」
「何だ」
「あんたが一人で百人を倒したって
シェラが
「あれは
「四十人って」
シェラが
「あんたって本当に化け物なのね。あ、これは
「どうでもいい」
俺は
「暑い……」
三十分くらい後、強い日差しのせいでシェラは
「あ、ごめん。もしかして私
「いいんだ。一々気にするな」
「そうかな……」
シェラは頬を赤く染める。
そう言えば……いつの間にか夏が近づいてきた。街の外の風景が緑に染まり、人々の服装が短くなっている。
この夏、俺はとても
でもみんなにも俺にも、きっと有益な夏になるだろう。俺はそう確信した。