エピローグ タウンハウスにて
高位貴族は王都にタウンハウスを所持していることが多い。ほぼタウンハウスに住んでいる家、社交の時期しか利用しない家と実に様々であるが。
勿論、この国で一番遠くに領地を持つアゼンダ辺境伯家にもタウンハウスが存在する。
「お帰りなさいませ。お待ちしておりました」
真っ白な髪をピシリと撫で付けた、優しそうな老紳士が四人を出迎えた。
すっかり眠りこけたマグノリアは、セルヴェスの腕の中で……と言うよりも手のひらに乗せられて、割れ物を運ぶように慎重に、恐る恐る運ばれていたのだが。
「……そちらのお嬢様がマグノリア様でいらっしゃいますか?」
「うむ」
道すがら伝書鳩代わりの伝書鴉を、四人で帰るので部屋を用意して欲しいという走り書きを括りつけ飛ばしておいた。
「お部屋をご用意してございます……私がお運びいたしますか?」
「いや、大丈夫だ」
タウンハウスの家令を務めるトマスは、いつになく緊張してゆっくり動くセルヴェスに微笑むと、恭しく頭を下げた。
「畏まりました」
クロードは周囲に若干の違和感を覚えつつ、トマスに向き直った。
「急な事で済まなかったな。変わりはないか?」
「はい。王宮からの急ぎの伝言などはいただいておりません。そして大変申し訳ございませんが現在、使用人数名が風邪をひいておりまして寝込んでおります……皆様に伝染りませぬよう、部屋で安静にしてもらっております」
「だから静かなのか……皆、体調は大丈夫なのか?」
屋敷の中が妙に淋しい違和感の理由が解ると、気遣わし気に青紫色の瞳を揺らした。
昔からの使用人が多い為、辺境伯家もタウンハウスも比較的使用人の年齢が高い。
病気の際、治療方法といえばハーブを用いた民間療法や対症療法が主だ。風邪は甘くみるとあっという間に拗らせて、衰弱したり重篤な病気に罹ってしまう万病の元だ。また別の病の初期症状と重なるものも数多くあり、意外に診断が難しくもある。
頻繁に罹り易いうえ、軽んじていると厄介なこととなりかねない、なかなか手強い病だ。
「ええ。数日休めば問題ございません」
「症状が辛いなら医者に来てもらうか?」
「ありがとうございます。今のところは大丈夫かと思います」
「そうか……熱が下がらなかったり、体調が悪いのならば無理せずに医者を呼ぶように」
「ご配慮ありがとうございます」
綺麗すぎて一見冷たくすら見える青年が、実は心根の優しい人間であると知る家令は、にこにこしながら頭を下げた。クロードはクロードで、ちらりと窓を覗いていたお庭番に目配せをする。お庭番の男は、心得たとばかりに小さく頷いたのであった。
使用人……特に平民であると、医者に掛かることに遠慮をするきらいがある。気持ちは解らなくもないが、拗らせてしまうよりも素直に診察してもらいたいと思うので、お庭番に罹患者に適宜にと指示をしておく。
マグノリアは翌朝、ふかふかのベッドの上で目を覚ました。上掛けから元気よく飛び出している手足が寒くて、急いで引っ込める。
秋も深まって来たせいか、朝夕は冷え込むようになった。
夕食を食べずに眠り続けるマグノリアを心配しては、セルヴェスとクロードが何度か様子を見にやって来たが、精神的な疲労が大きいだろうことを考慮して敢えて起こさずにゆっくりと眠らせておいたのだ。
目を覚ましたマグノリアは、暖かなベッドの上で昨日あったことを反芻する。……夢でないのは、見たことのない部屋の様子から判断した。
(馬車の中で眠っちゃったんだ……)
クロードはタウンハウスで一晩泊まると言っていた。よってここは辺境伯家のタウンハウスなのであろう。
「失礼いたします」
「あい」
ノックと共に落ち着いた女性の声がした。返事をすると、湯気の立ち昇る洗面器を持った侍女が入室して来た。
「おはようございます、マグノリア様。お目覚めでしたら身支度をお手伝いいたします」
寒いのでお湯は有難いが、着替えを手伝ってもらうことには未だ慣れず、丁寧に断って自分で着替える。一人で着替え終えると手放しで褒め称えられ、居たたまれず苦笑いをした。
食堂へ案内されると、セルヴェスとクロードが着席してマグノリアを待っていた。
「良く眠れたようだな」
クールな口調ではあるが、どこか気遣わし気な表情の彼に再び苦笑いが漏れる。
「マグノリア、お腹が空いただろう? 食事にしよう! 嫌いなものはあるか!?」
一人、めちゃくちゃテンションが高いセルヴェスを見て、今度は笑顔のまま顔を引きつらせる。
「……大丈夫でしゅ」
和やかに……孫娘フィーバー中らしいセルヴェスに、マグノリアもクロードもドン引きしつつ、楽しい食事を過ごしていたときだ。
「タウンハウスの者たちに風邪が流行っているそうだ。子どもは大人に比べて体力がない。伝染らないうちに出発するとしよう」
食事も終盤に差し掛かる頃、クロードがそう切り出した。同意と頷くセルヴェスを見て、マグノリアは考えながら口を開いた。
「風邪でしゅか……症状はどんにゃでしゅか?」
風邪とひと口にいっても色々な症状がある。発熱を伴うものや粘膜が炎症を起こすもの、吐き気やお腹にくるもの……更には本当は風邪ではなく、インフルエンザやコロナウイルスのような似て非なるものの場合も往々にしてあるわけで。
(集団でってことは、たまたまなのか。それとも感染力の強い菌やウイルスなんだろうか?)
ロタウイルスやインフルエンザのようなものだったら大変だろうと思い、幼児らしくない様子で眉間に皺を寄せた。マグノリアの質問にクロードとセルヴェスがトマスを見る。つられてマグノリアも視線を動かした。どこかで見たことのある顔をした、初老の家令を見ては首を傾げたが。それよりも今は体調不良の原因についてだと思い直す。
「多少発熱している者もおりますが、そこまで高熱の者はおりません。咳や鼻水が主な症状でございます」
「お腹は大丈夫でしゅか? お医者しゃまには診せまちたか?」
「罹患中ですので、頭痛や腹痛を伴っている者もおりますが、大きな症状としての共通性はないかと思います。お医者様には、未だ診察を願う程ではないかと……」
トマスは小さな子どもの質問にも丁寧に受け答えをしてくれる。家令を務めていると言って丁寧に挨拶をしてくれた老紳士だ。
「お薬とかはありましゅか?」
「薬草を症状に合わせて配合する感じだな」
「なりゅほど……」
薬草。セルヴェスの言葉に民間療法の範囲であろうと推測する。
二十一世紀の地球でも風邪薬はあってないようなものだ。有効成分や薬効成分がこの世界よりは格段に優れてはいるだろうが、熱や咳などの症状を緩和させる成分が混合されたものであった筈だ。
(取り敢えず、免疫力を上げること。殺菌、消炎作用。あとは身体を温める、かな)
酷くなっても抗生物質がないだろう世界。体力がないものはあっという間に肺炎になってしまうだろう。マグノリアは地球時代の無駄な雑学知識をフル回転で引っ張り出しては、朱鷺色の瞳を左右に動かした。
一宿一飯の恩義でもないが、気休め程度にはなるだろう。少しでも回復が早まるならば。
「出発前に少ち、お時間をいただいてもいいでしゅか?」
「うん? まあ、構わんが……」
不思議そうに顔を見合わせる大人たちに向かって、更に付け加えた。
「そりぇと、調理場を見ちぇてもらってもよいでしゅか?」
「おや、どうしたんすか?」
マグノリアが侍女に調理場へ案内してもらおうとしたら、何故だかセルヴェスとクロードもついて来ることになった。調理場の近くには使用人たちの食事や休憩をする場所があり、丁度食事を摂っていたガイが不思議そうに主家の三人と、案内役らしい侍女と家令とを見比べる。
「風邪に効く物がありゅか、確認ちたいにょ」
滋養に富んだものということなのか、はたまた薬草のように症状が改善するものがあるのか。
……僅か四歳であるマグノリアは何か有効な知識があるのか、トマスの話を聞いて躊躇なく調理場へ行きたいと願い出た。
火や刃物があって危ないと心配全開のセルヴェス。同じように幼児が心配四割、どんな知識があるのか興味津々であるのが六割のクロード。そしてニコニコと底が知れない家令と侍女がマグノリアの後ろを固めている。
「料理長しゃんは、いらっしゃいましゅか?」
「……わたくしでございます」
白い帽子を手に取り、小太りな中年男性が頭を下げた。料理長はいきなり現れた主家の人間に、内心何事かとビクビクだ。
「お忙ちい中、お邪魔ちてしゅみましぇん。少ち調理場を見ちぇていただけましゅか?」
見たことのない、もの凄く愛らしい少女……いや、幼女がちょこんと首を傾げる。名乗らずとも、その色味を見れば幼女が主家に連なる者であることは明白だ。
「どうぞどうぞ!」
「あいがとうごじゃいましゅ」
小さく頭を下げるマグノリアを見て、トマスと侍女はほっこりする――同時に笑顔のままセルヴェスとクロードを見た。ついでにガイも主たちを見遣る。
「……忙しいところを邪魔する」
「大人数で押しかけ、すまぬ」
何とも言えない表情でふたりがそう言うと、料理長は勢い良過ぎる程に首を横に振った。
マグノリアは調理場にある食材を順に見て回り、手に取っては何やら確認をしている。
この世界の食材は、知る限り見た目も味も、地球で食べたことがあるものとほぼ同じだ。
名前も『人参』『玉ねぎ』といったように地球と同じものが多いが、時折違う呼び名で呼ばれるものもある。例えば、通常のトマトは『赤トマト』と呼ばれ、じゃが芋は『ポテト芋』と呼ばれている。マグノリアが実家の調理場でポテト芋の名を聞いたとき、秘かに『チゲ鍋』みたいだなと思ったのを思い出した。
(栄養素までは同じなのか解らないけど、同じと考えるしかないよなぁ)
玉ねぎを切ったら涙が出るし、かつて侍女たちは美容と健康の為にヨーグルトを食べると言っていた。なのでそう大差ないのではないか……と思っているが。
「病気の人の食事はどうちていましゅか?」
「賄いと一緒に作っております……普通の賄いよりも消化の良いものでしょうか」
主にスープや麦粥、パン粥等だそうである。
「ではそりぇに、ほうれん草や人参、ブロッコリー、南瓜などを多めに入りぇて欲ちいの」
体調が良くなって来たら、魚のすり身を団子にして入れて欲しいとお願いする。ビタミンACEにミネラルといった免疫力を上げる食材達だ。果物も有効であろう。更に、一部の乳酸菌が感染症予防に有効だという説もあった為、ヨーグルトも良いと付け加える。
ふと素焼きの壺を見れば、生姜に似た塊が目に入った。掴んで匂いを確認すればお馴染みの爽やかな香りがする。確か、過去の中世ヨーロッパでは高額だったと記憶していたが。大きな塊をみて、この世界では比較的安価に出回っているらしいことに安堵した。
――生姜は生の状態で食べると『ジンゲロール』という成分が身体を冷やしてくれる上、殺菌効果も高い。火を通すと『ショウガオール』という成分に変化し、身体を温め、抗酸化作用と抗炎症作用に優れているといつかどこかで聞いたことがある。
(体内に炎症が起きてるだろうし、熱を下げるにも身体を温めるにもピッタリじゃない?)
消炎作用のある蜂蜜と一緒に取れば、味も効果もいい感じであろう。
「こりぇを、すりおろちて貰えましゅか? あと、蜂蜜とぬる目のお湯をお願いちましゅ」
ぬる目のお湯にするのは、ジンゲロールとショウガオールの両方を摂取する為だ。ゴブレットに入れてかき混ぜれば、スパイシーで爽やかな香りが辺りに広がっていく。
「一度に全部でなくとも構わにゃいので、出ちてみてくだしゃい」
「畏まりました」
ただ出せでは納得出来ないだろうと、途中に不自然でない程度の簡単なウンチクと効能も一緒に伝えてある。それを聞いた料理長とトマスは酷く感心した上で、素晴らしいと連呼しながら恭しく頭を下げた。
一方、はじめは騒がしくマグノリアを褒めたり、身を守る為――火や刃物から――壁になったりしていたセルヴェスだったが、ちらりと窺うようにクロードの顔を見る。
確かに生姜は身体によいとされている。それ故生姜を摂取させるということに否はないので誰も何も言わなかったが……ここまで具体的、かつなぜ健康に良いのかという理由を聞いたのは皆初めてだった。
途中簡易な言葉に言い直していたが、薬師からも聞いたことがない言葉での説明の数々。ましてや生姜だけのことではなく、沢山の食べ物についてだ。効能だけではなく、その利用方法までを熟知している様子をみせる――どう差し引いても、物知りな子どもという範囲を超えている。
クロードは何かを考えるように難しい顔をしながら、生姜がすり下ろされる様子をじっとみつめていた。
そんな中、マグノリアの指示はまだまだ続く。
「あと、定期的に部屋の空気を入りぇ替えて欲ちいの。出来たりゃお湯を沸かしゅか、お湯を張った桶を部屋に置いて湿度を上げてくだしゃい」
「了解っす!」
ガイが頷いて、使用人部屋の方に走って行った。
表情には表さずとも、ガイもマグノリアの規格外さに気付いていることだろう。
換気に気を付けた方がよいことも、気温や湿度が下がると菌やウイルスが活発になることも、地球では子どもだって知っている事実だ。ついでに手洗いうがいの徹底、度数の高いアルコールで定期的に取っ手等を拭くと予防によいと付け加えておく。
侍女には綺麗な手巾やハンカチ、手頃な細い紐を集めて欲しいとお願いする。
そして今。セルヴェスとクロード、トマスと侍女と換気と火起こしから戻って来たガイと一緒に、談話室で簡易マスクを作っている。……かつて地球にいた頃、コロナ禍でマスクが手に入らなくなったときに急場しのぎで活用した、『縫わない・切らないマスク』を折っているのだ。
「広げて、しょれから三ちゅ折りにちて、ひだを作って……」
出来たそれらを、今度は左右を三つ折りに畳みながら、重なった部分に紐を通す。本当はゴムがよいのだが、今まで一度も見ていない。未だ製品としては存在しないのかと思う。
「こうやって鼻と口を覆って下しゃい。飛沫には風邪や病気の原因の『バイ菌』という悪いものが沢山含まれていましゅ。それを吸い込まにゃい為につけりゅのでしゅ」
セルヴェスは太い指でちまちまとひだを作っては、感心したように言った。
「マグノリアは、よくそんな事を知っているな」
(うっ!)
痛いところを突かれる。高速で頷くトマスと侍女から視線を外し、マグノリアは朱鷺色の瞳を左右に揺らした。
「……何かで読んだか……誰だったかに、聞いたのでしゅ?」
「……このような知識は聞いたことがないが……なぜ疑問形なのだ? それはどんな本だ? 誰に聞いたのだ?」
見極めるような視線を投げるクロードへ誤魔化し笑いをし、急いで侍女へと向き直る。
「く、苦ちくないなりゃ風邪をひいていりゅ人にも、バイ菌を飛ばしゃないように着けりゅように言って下ちゃいまちぇ。使用ちた物は、キチンと煮沸消毒ちて干ちて下ちゃい」
次亜塩素酸などはないであろうから、煮洗いして天日干しが確実な筈だ。
数時間後。元気な使用人達がマスク姿で一斉に見送りに立つ。
(……何だか怪しい集団だけど……。貴族のお屋敷的には大丈夫なのかな?)
自分が勧めたのではあるが。お仕着せとマスクのミスマッチさに思わず閉口した。
「マグノリア様、我々の為に貴重な情報をご教授いただき、またお骨折りいただきありがとうございます」
トマスがそう言って白髪の頭を下げた。他の使用人も一斉に頭を下げる。
「い、いやぁ……? しょこまでのことでは……」
思わぬ過大評価に口篭もる。かつて過ごした時代では誰でも知っている範囲のことだ。
……若干雑学方面に詳しいのは、好奇心が旺盛であるのと同時に面倒臭がりだからで。
それというのも、後で同じ内容を調べたり覚え直すのが面倒なので、調べるついでにその周辺知識を仕入れることが癖のように結びついているからだ。地球の歴史にしろ地理にしろ、はたまた英語の構文の数々にしろ……何度も都度調べ直すより一度に関連知識を覚えてしまった方が結局早いという、教訓めいた事実に行き着いただけなのである。
どこまでも調べてしまう人間であれば研究者向きであろうが、如何せん面倒臭がりなので広く浅く、ただの雑学止まりだ。
「マグノリア様はアゼンダの領民、ひいてはアスカルド王国を導く灯となられましょう!」
トマスの言葉にセルヴェスと侍女はイイ笑顔で頷き、他の使用人たちは拍手をする。
「……えええぇ~~?」
トンデモな発言と巨大過ぎる展望に、マグノリアはドン引きだ。
隣でニヤニヤしているガイに睨みを利かせながら、クロードに促されて馬車に乗り込む。これからリリーの実家に寄りピックアップして、新天地のアゼンダ辺境伯領へと向かうのだ。
「マグノリア様。何かございましたら、何なりとお申し付けくださいませ」
トマスがそう言うと、並んだ使用人一同と共に礼をとった。
「は、はははは……はぁ」
マグノリアは引きつり笑いをしながら、窓の外へと手を振る。
カラカラと車輪が回る音がする。
ガイの操る馬車は、滑るように軽快に王都の石畳を進んで行く。
「トマスのテンションがやたら高かったなぁ」
苦笑いをしながらセルヴェスがマグノリアの頭を撫でた。大きい大きい手は温かくて、マグノリアはそっと目をつむる。
「使用人たちも年嵩の者が多いですから心配なのでしょう。その上マグノリアが親身に対応してくれたので、余程嬉しかったのでしょう」
何よりもその心根が、と。クロードの言葉にセルヴェスはそうだなと返した。
「まあ、無理に国の灯になんかならずとも、家族はいてくれるだけで既に他の家族の灯なのだよ」
両親から始まり、妻。実子に養子、嫁も孫も……様々な形と立場でそれぞれの家族と過ごして来たセルヴェスの言葉は、誇張することも無く静かに紡がれる。
「トマスだけでなく他の使用人も、もちろん儂もクロードも遠慮なく頼ってくれればいい」
「…………」
当たり前の家族としての善意と好意。
マグノリアは何の躊躇いもなく与えられた愛情に酷く困ったような顔をして、クロードを仰ぎ見る。深い青紫色の瞳が優しく細められたのを見て、何故だろうか、自分の存在が、居場所が、あるべき場所に辿り着いたような感覚を覚えていた。
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タウンハウスを発って三日後。全員が回復したとトマスから伝書鴉が飛んで来た。
未だ帰路の途中であるが。休憩がてら街の露店で軽食を購入していたところだった。
……もうしばらく馬車に揺られれば、アゼンダ辺境伯領が見えて来る頃だろう。
何も知らないリリーは首を傾げ、相変わらずのガイは何だかニマニマと笑っている。
「凄いな、マグノリアは!」