マグノリアが叔父の助け船に口を
「嫌なら今すぐ返せ。耳を揃えて」
「…………」
マグノリアは、
「あの……っ!」
扉近くの壁から、リリーが意を決して声
ウィステリアの帰宅の際他の侍女と
屋敷の主人と、悪魔将軍と、黒
「私を、マグノリア様と一緒にお連れくださいませ! きっとお役に立てるよう
マグノリアはぎょっとする。
「リリー……! ご家族はどうしゅるの!?」
家族の
「大丈夫です! 家族には、マグノリア様が
リリーは決めたのだ。この小さなお
ぐぐぐ、と拳を握る。
「出奔、バレてたっすね?」
ガイはマグノリアを
「給金はマグノリアにつけておこう」
クロードも当たり前のように言うと、ぽん、とマグノリアの頭に大きな手を置いた。
「さあ、
全く安心出来ない言葉だが、不思議と安心する、
悪魔将軍と黒獅子とアブナイ
******
「お
ジェラルドの
「そんなくたびれて
セルヴェスは苦笑いをして
「まあ、精々後悔するといい」
「……後悔はしませんよ。する資格がないことをしていたのです……
淡々と持論を語るジェラルドに、セルヴェスはため息をつく。さらさらと契約書を書く手元を見ながら、揶揄い交じりに確認する。
「お前は相変わらず
「……要りませんよ。別に、あの
兄の
「まさか借金なんて。あの娘を手助けするための方便ですよ。……多分、『あげる』と言ったら受け取らなかったでしょうからね。それよりも……」
クロードは言い
「どうした」
「その、変質者というのは……」
クロードが言わんとすることを察すると、ジェラルドがじっとりとした目で見遣る。
「それこそ、そんなわけあるまい。あの娘の勝手な想像だ……地方の口の
「……そうですか」
ちょっとホッとしながらも、このままで良いのかと確認すべきか迷った。が。……たとえジェラルドが態度を改めたところで、先ほど見た義姉と
暫し、時間と
「……結果的には
「言ってることは
セルヴェスは自分の赤毛を引っ張ってはねじり、引っ張ってはねじってつぶやいた。
断ったところで存在が知れれば王家に聞き入れられないと思ったからこそ、ジェラルドの判断だったのだろう。
「……お前の眼から視て、王家はそんなにか」
「…………。先王がお亡くなりになり残念です。取り
「そうか」
セルヴェスは静かに返事をした。
(決して口に出してはならない。そんな資格は自分にはないのだから。それどころか自分には本来、祈ることすら許されないだろう)
それだけの事をしたのだ、娘を
そんな苦い思いを何度も噛み締めるようにくり返しながら、それでもジェラルドは願わずにはいられなかった。
同じ頃、リリーとガイによってマグノリアがアゼンダ辺境
春のそよ風というよりは春一番と例えた方がよいようなお嬢様の移領の話は、
そしてマグノリアの部屋では、
デイジーは声をあげて泣き始め、ライラは心底心配だと言わんばかりな様子だった。
ロサは静かにそんな様子を瞳に映していた。
「マグノリア様、借金とか駄目、駄目ですよ。私たちが立て
「こんなにお小さいのに大丈夫なのでしょうか……」
デイジーは『それは
「大丈夫よ。多分だけど、話を合わしぇる為にああ言ってくりぇただけだよ。お金の用意が出来たりゃちゃんと返しゅし」
「そうでしょうか……」
クロードにとって小銀貨三枚など、子どもにお
「そりぇよりも。ふたりを送り出しゅつもりが、わたちが先に出て行くことになってごめんにぇ」
はい、と言ってデイジーとライラに、各々の
「今までお世話してくりぇて、あいがとうごじゃいましゅ。幸しぇになって」
ぶわぁっと、一気に涙がデイジーの瞳の
「うわぁぁぁぁん、マグノリア様~!! あいがどうごじゃいまじゅぅぅ!!」
……おおぅ。
目を
「ロサも、今まで
ローズ。ラテン語でロサ。
バラの刺繍がされたハンカチを渡すと、ハンカチをぎゅっと
「こちらこそ……色々……至らず、申し訳、ございま……んでした……」
「お父しゃまとお母しゃまと、色々
最低限とはいえ
「この後おじいしゃまが細かい手配をしゃれる
大切なことなので、三人にしっかりと伝える。
マグノリアの荷物はびっくりするほど少なかった。
クローゼットにあった数着の洋服とネグリジェ、数組の下着と
何処へも出かけることがなかったマグノリアには
高価そうなドレスは置いて行く。沢山練習した借り物の石板も。
ギルモア家に残すべきものは全て置いて行くのだ。
誕生日とはいえパーティーどころか
それでもクロードは家族の別れの時間を取るべきだと思い、マグノリアに言ってみたものの、一緒に食事を
夕方に差し
オレンジ色と
使用人と言っても下女下男が多く、通常主人達の目には
「お嬢様、これ、ポテト
「わぁ! いいのでしゅか!?」
「はい。あちらでもお
マグノリアの好物だ。料理人として大切な筈のレシピを
「こりぇは
「……ありがとうございます。大切にいたします」
淋し気な顔で料理長と料理人
「お嬢様、行っちゃうんだねぇ」
「遠い場所なんだよね……?」
「うん。色々教えてくりぇてあいがとうね。お茶の時間も楽ちかった」
「あたし達もだよ!」
おいおい泣き出す人も居て、マグノリアは困ったように笑う。
「こりぇ、お茶の時間に使うシートよ。こりぇ
カラフルにあまり布をつなげてパッチワークにしたレジャーシートもどきだ。
「お嬢様が作ったのかい!? 相変わらず
「とっても
「ワシからはこれを」
庭師のお
……包みを
「こりぇは?」
「植物の種でさぁ。機会があれば、お世話してください」
「あいがとう。わたちからはこりぇを」
これから寒くなるので、ロサから貰った毛糸で編んだ
庭師のお爺さんはゆっくりと膝立ちになる。
「ありがとうございます。
深い
中央にはジェラルドが見送りに出ていた。他に、母の姿も兄の姿もない。
代わりに家令と
マグノリアは姿勢を正し、父の前に立った。
「侯爵ちゃま……いえ、お父しゃま。今まで、生きりゅためのご手配をいただき、誠にあいがとうごじゃいまちた」