後ろには困った顔をしながらティーセットを持ったデイジーが。
「いや何。ちょっとばかり人攫いか爺さんの
男が肩を寄せておどけると、お爺ちゃんは片眉を上げ、ニヤリと笑った。
「無理もねぇ」
(ああ、本当に
良かった。ホッとして大きく息を吐きだすと身体から力が抜ける。
「……お客様にゃら、今日は帰りゅね」
マグノリアが庭師のお爺ちゃんに向かって暇を告げると、
「いや、このガイなら嬢様が知りたいことを色々知っていると思いまさぁよ。なかなか話す機会もないだろうから、話すといい」
「でも……」
「なぁに、嬢様がお部屋に帰りなさった後、食事にでも行きまさぁよ」
腰を
「デイジーはここで休んで居るといい。ガイはセルヴェス様の
思ってもみなかったが、目の前の男が『
(お
ガイは難しい顔をしてお爺さんに向き直る。いつの間にか自分の
「爺さん、この『お嬢様』は……」
「ああ。ギルモア家の『
「何故」
「さあなぁ」
静かに肯定すると、小さくお爺さんは
「何人もの使用人が旦那様に聞いたが。嬢様とお家の為ということ以外、口を
「……そうっすか」
(これは、思わぬ
ガイは主の母親によく似た女の子を見て、心の中で
オランジェリーの中にある小さな
「さっきはごめんなしゃい。お爺しゃんは居ないち、
「いやいや。そのくらい警戒心が強い方がいいですよ」
放っておいたら問答無用で切り掛かられそうな勢いだったが。ガイはマグノリアの言葉に苦笑いをしながら頷く。
「あっしはガイと申しやす。アゼンダ辺境
「わたちはマグノリア・ギルモアでしゅ。父はジェラルド、母はウィステリアでしゅ」
「ありがとうございます。で、あっしに聞きたいというのは何でしょうか?」
(オッサンの言葉遣いが変化したな……何とも掴みどころがない感じだね……)
ガイと名乗る男は
発言を
なるべく的確に、しかしマイルドに行きたい。
「……えっと、まじゅ、領地間の人の流れって、どの程度
「ん?」
見た目幼女から放たれる質問に、ガイは一瞬固まった。
……予想していた『幼女の質問』とは
「例えば。他領の修道院や
ガイは
「う~ん……まあ、低位貴族と高位貴族じゃ全然違うと思いやすよ。それに普通、領主のお子様が行方不明になった時点で
やっぱりそうだよな、とマグノリアは
「この世界では、子どもは親にとって
「いや……そういうのじゃあねぇと思いやすがね……?」
搾取に資源……何と言ったものか。ガイは明後日の方向から飛んで来る言葉に閉口した。
「じゃあ、他国だったりゃ? 他の国に行くにょ、手形とか許可証とか身分証明書とか必要? 密入国……森を抜けて他の国に入れりゅ? 領地とか国とかを出るのは難ちい?」
「…………」
ガイはいよいよ頭を抱え首を振った。絶句だ、絶句。
(何をする気なんすか! 頼むから、変なことはしねえで下さいよ……!)
マグノリアはマグノリアで、目の前のオッサンの様子に、いつもの質問する勢いは
「おほほほ。友人にょ疑問を代理で聞いただけでしゅ!」
「……………………」
あるあるな言い訳を口走りながら取ってつけたように笑うと、
むむむ。信用されていないっぽい。
「最後にひとちゅだけ。孤児院の子どもは、養子とちて引き取られる以外に買わりぇる事はありましゅか?」
「はい」
今度は
(そうよねぇ、この世界)
渋い顔をしたガイを
「では、金額は
「……年や性別で違いやすが。幼児でしたら、小銀貨二、三枚程かと思いやす」
「しょう。あいがとう、答えてくりぇて」
丁度
……口調は身体に比べて幼過ぎるものだったが、内容はびっくりするぐらいスムーズに理解出来た。いや、話した言葉は理解出来るが、内容はとても理解し難く、閉口した。
かなり知能が高く色々理解しているらしい幼女。三
隠されたご令嬢。
アゼリア様そっくりの女児。
最近王宮から、王家から
セルヴェス様の覚えた
「つーか……ジェラルド坊ちゃまらしくないじゃねぇですか。何やってんすか?」
大人なのだからある程度放っておくのが本来だし、領を分ける今、場合によっては
(
ガイは大きく息を吐くと、必要な情報を
情報収集は彼の得意とするところだ。何処へだって入り
******
最近、ロサに部屋からあまり出ないようにと直接的に言われるようになった。
多分両親のどちらか、もしくは両方かは分からないけど指示を出しているのだろう。
季節の変わり目だから
庭に調理場に、下働きの区画にとチョロチョロしているのが
「子どもを部屋に閉じ込めりゅなんて、身体に悪いのに」
秋晴れの空を見てため息をつく。
「こんにちは、マグノリア様」
リリーが今日は私服でやって来た。小花
「ごきげんよう、リリー」
席を降りて挨拶をする。
……
本当は見て見ぬふりをした方が彼女の為だろうに。正義感が強く、幼き者(物理は。中身じゃない)に優しい女の子なのだ。
今日はライラがお世話係なので、会話の内容も
「
「
そう言ってあっけらかんと笑った。
本来のお茶会では芸術の話や社交界の話、経済や対立
「マグノリア様は色々なことにお詳しいですねぇ」
「しょんなことないよ。本だけだと解らにゃいこともありゅ。例えば『お
急に下の子の支度をしなきゃいけなくなったときの為――ないとは思うが――学べる時に学んでおくのだ。意地悪で、教わってもいないのにやれとか言われることがあるかもしれないから。例えば弟が生まれたときに、支度の
聞かれたリリーとお茶の
……どうも
「……そうですね。お披露目は一歳のお誕生日までに行うことが
「へぇ。やっぱり
「いえ、赤ちゃんが中心ですので、
「にゃる
そりゃあ、何故マグノリアがしてないのかが丸解りだ。
……先日写したブライアンのお披露目会の費用もさることながら、手間も暇も
「もち、ちない場合は?」
「……貴族ならお披露目の重要性が解っていますから、『しない』ということがまず有り得ないです。ですから、出来ない原因がお子様にある、と思われると思います」
リリーは暗い顔で答えた。
「ふぅん。出来にゃい子ども
「例えば、弱かったお身体が
ほうほう。
「確か、『修道院から嫁ぐ』って瑕疵になりゅって聞いたことがありゅんだけど」
「はい。修道院にて教育されても、本来なら
へぇ。
「なりゅほど~。お披露目ひとちゅにちても、色々大変なんだにぇ」
「そうですね……大切なことだと思います」
リリーは少し考えてから、小さな声で
「マグノリア様は……ご教育は何も受けていらっしゃらないのですよね?」
「ロサにお
聞きながら、リリーは小さく何度も頷いた。
「アスカルドでは七歳くらいから教育が
「しょうなの?」
「はい。ですが、やはり建前と言いますか。高位貴族……
マグノリアは先を促すように頷いた。
「まして、王子
(うわぁ。もしかしなくても王子と同年代なのか……)
新たな
「ブライアン様も通常通りのご教育のご様子ですし、お仕事のことといい……
「お仕事?」
「はい。旦那様は行政部への配属が有力視されていたのですが、領政があるからと
(おおぅ、
そしてリリーが想像より情報通だ。
「まぁ、出仕と家を
「リリー、詳ちいね」
「親の世代ではかなり
「ああ……お母しゃまだけじゃなく、お父しゃまにも
察した。リリーが苦笑いする。
「何というか……そういうおつもりはないのかもしれないのですが」
「何? 大丈夫よ」
言い
「旦那様は、王家と距離を置こうと思っていらっしゃるのではないかと思えるのです」
「距離……?」
はい。と小さく頷いた。
(ふむ……)
「……
「今のところ、公爵家のお子様は
「じゃあ、今、王子のお
リリーが息を詰めて答える。
「
「隠しゃれてりゅ」
「はい」
「次は?」
「筆頭侯爵家・シュタイゼン家のガーディニア様かと。お年はマグノリア様の一つ上。……
マグノリアは今
「家柄……ギルモア家は侯爵家の序列四位じゃ?」
「ああ、それはそうなんですが。実質アゼンダ辺境伯領も『ギルモア家』ですから……事実上ギルモア家は公爵家と同列
なんと。同じ
……書面上では
辺境伯は実は
どちらも有力侯爵家(と同等以上)……の
これは。思った以上に
(なんだか私ってば、みつかったらちょっとヤバい存在になっちゃってないか?)
ジェラルドは流石に解って
(……親父さん、
まかり
それらを
「…………」
「マグノリア様?」
「あ、うん。わたち、今後の方針と対策を練り直ちちないと」
「「…………」」
今まで
(ていうか、もう
命を
――問、面倒なのにそうする訳は?
――答、面倒事より利点があるリターンがあるからだ。
宰相になれる道筋を
(……まぁ、私がぼーっとしててアホそうだから、王太子妃とか無理って思った可能性もあるよね)
でも、とすぐに続く。家の
(……クソ親父めぇぇぇ~~~(怒)!!!!)
取り
「「マグノリア様……お顔が、トンデモナイコトになってますよ……?」」
(つーか、
神様はその人に
この難題、どーやって解決せよというのか。
(三歳児に対応出来る
そう来るならこっちだってやってやろうじゃない!?
――そう、
……え? そこはお嬢様らしく泣き
――そりゃ、必ずヒーローが助けに来てくれる人がやることであって、残念ながら何もない予定の人間がするこっちゃない。
うかうかしてると、あっという間に取り返しがつかないことになる。『まだ大丈夫』『もう少し』……が、『あのとき早くやっておけば!』になるのだ(前世経験則)。
準備は早いに
******
王家についてわかる範囲で調べてみたものの、特にこれといった情報は無かった。数年前現国王が
だが、何処かに見落としがあるか、外に漏れ出て来ない何かがあるか。実際に接してみないと解らない理由がある
適当に合わせて
まずは。家を出て安全な場所に行くことだ。
マグノリアが貴族の娘として世間にしなければならない務めがあると言うならば、立場上しなければならないだろう。豊かに暮らすことを許された身ならば、その身はそれを施してくれた人々に対して有効に使わないといけない義務があるのは承知している。
けれど親の勝手で貴族としない為、もしくは損なうための
だって領民の役に立つっていう保証がないのだから。
しかし、三歳という時点でひとり安全な場所に
平民として暮らすとしても。このまま
それにこの見た目が、どのくらいギルモア家と関係しているか解るものなのか……
平民
(うーーーむ)
マグノリアは図書室で借りた地図を広げる。
アスカルド王国は大陸のやや西側にある国だ。北側を大きな森を
西の一部は
(森……。森で暮らすことって可能なんだろうか?)
畑仕事をしたり、薬草を売ったり、裁縫をしまくって暮らす。お使いだと言って作ったものを売りに行って。大きくなったら街へ出て何か見習いになるでもいい。
気分は年末スペシャルの無人島生活である。ちょっとの期待に胸
『――――モンテリオーナ聖国は
……魔獣。そして魔虫。
(魔虫って何? ラノベで魔獣は聞いたことあるけど、虫まで居るの……?)
無理。背筋に
大規模な討伐隊が出るような生物に、ひ弱な三歳児が
(北の森ではなく、アスカルド王国内のどこかの領地の、小さい森の中ならイケるかな?)
取り敢えず森に住む案は置いておいて。
多分、ジェラルドはマグノリアを『修道院から嫁入り』コースに乗せるつもりだろう。
目障りなら領地へ閉じ込めて置けばいいのに、そうしないのはマグノリアを知る人間をこれ以上増やしたくないからだろうと思うのだ。そして万一何かが
家で教育をしないのも、教師達に存在を知られたくないことに加え、はっきりと『修道院で教育された』という瑕疵が欲しいからだと予測する。
多分、そう遠くない時期に修道院行きになる。
修道院自体には、別に
ただ、ずっと監視が付く生活になるだろう。
どの程度の自由があるのか想像がつかないばかりか、団体によって違いそうだし、もしかしたら世話人と言う名の
修道院生活で掛かる金額を少なくするのと、きっちり回収する為、変わったご
普通の人との婚姻より、変な人との婚姻の方が利益(父にとって)が得
だって貴重なほど高値が付くのはいつの世も同じ筈。
win‐winの関係(あくまで親父さんと変態が)。
(……多分、王家に知られたくないなら遠い場所に住む人間が相手だろう。そして王家と接点がないような低位貴族……いや、平民の可能性もあるなぁ。ただお金回りがいいか、親父さんか『ギルモア家』に何かしらの利を
そう考えると、修道院に行く前か移動の最中に行方不明になるのが一番良いだろう。
もしくは準備が出来
Nシステムや監視カメラがある世界じゃない。上手く逃げ通せれば
なんにしても、
(移動中の場合、はぐれて
人間、どの道なんだかんだで生きて行かなくてはならないのだ。泣いても笑っても、最終的に選択し決めるのは自分自身だ。
それなら。マグノリアは小さな声で、だけれども力強く
「わたちは、自由に生きりゅ!」
自分の力で。
なるべく周りに迷惑を掛けずに。誠実には誠実を、
自分の生きる道と場所を探すのだ。ないのならば、作るまで。
よって、
・森や川などで取れる食べ物を覚えること
・潜伏しながら生きられるように、
・武器の使い方を覚えること
・体力をつけること
取り敢えずの近々の課題が決まった。
(よっし!)
マグノリアは気合を入れて
ロサと
名前代わりに花の
実入りの良さそうなレアものを作りたいが、如何せん目立つ。
それに同じものを作った方が手際も良くなれば効率もいいし、第一幾つ作ったか解らないので数を誤魔化し易い。
(目はしぱしぱするけど、ばっちこい!)
「……お嬢様、少しお休みになられては
ロサが流石に違和感を覚えたのか、
「大丈夫。もう少ちちたら休むね。ロサ、よかったりゃ休憩ちてて」
にっこり笑うマグノリアを見て、ロサは心配気に
はじめは外へ出てはいけないと言ったことへの
ロサだって好きでマグノリアを外へ出さないわけではない。ギルモア侯爵に
他の人が自分の態度をどう思っているかは解らないが。
自分がお世話するお嬢様だ。幸せになって欲しいし、いつだって笑っていて欲しい。
そんなの当たり前だ。
マグノリアが希望することなんて、ほんの
……ウィステリアはともかく、侯爵はなにがしかの考えがある筈だと思っている。
常識的な人間だった筈のジェラルドが、それを
ブライアンについては至って
なるべく侯爵夫妻の目に触れないように。
万一関わってしまう場合には、敵意をなるだけ持たれないよう
そう育てる以外に、ロサには守り方が解らないのだった。
リリーが部屋にやって来たときに、こっそりとハンカチが幾らくらいで売れるのか聞いた。
「ものや状態によると思いますが、布代にプラス三~六小銅貨ぐらいでしょうか……」
小銅貨。マグノリアは道のりの険しさに気が遠くなる。
大陸では、各国同じ共通通貨が使われている。
銅貨が小・中・大の三種類。銀貨が小、大の二種類。金貨も小、大の二種類。国家間で取り扱うような大規模な金額の白金貨の計八種類だ。
価値は、一小銅貨は日本の十円ほど。一中銅貨は百円と言ったところか。
そして十進法だから、十小銅貨は一中銅貨になる。
各銅貨が一枚で十円、百円、千円。銀貨が一万と十万円。金貨が百万と一千万円。白金貨は一億円だ。
――ちなみに一小銅貨以下のお金に関しては、各国で独自に流通して使用している国もあるらしい。
ハンカチ一枚が三~六小銅貨、つまり三十円~六十円だ。
売るのに利益も出さなきゃいけないし、原価と考えるとそんなものなのだろう……
現実に、ちょっとしょんぼりする。
「リリーには申し訳にゃいんだけど、もし可能にゃら、
「……わかりました。お値段の下限はございますか?」
何か思うところもあったんだろうに、黙って
「特には。幾りゃが
「ではお急ぎでないのでしたら、お休みのときに行って参りますね」
十枚程ハンカチを渡すと、手すきのときにアイロンをかけてくれると言ってくれた。
みんな細かいところにまで気が回って、本当に
数日後、マグノリアの手には五枚の中銅貨が載せられた。五百円。
「とても
この世界に来て初めてマグノリアが稼いだお金。
金額の小ささに笑ってしまいそうになるけど、同時にとてもかけがえのないものに感じられた。リリーにお礼を言って、強く銅貨を握り
デイジーと一緒のときにはひたすら本を読む。
動植物に関する本、武器の扱い
特に食べられるものと食べられないものの選別は大切だ。無事生きながらえられるかどうかの大きな柱の一つである。
平民の中でのギルモアの識別は、貴族
『
それと、心配そうな顔をしながら、国内外の人の流れについても教えてくれた。
国内は領地によって多少の違いがあるものの、そこまで厳密に取り
国外に出る為に高位貴族は王の許可証が必要となる。
平民は商業目的での出入りはある程度フリーだそうで、商業ギルド発行の身分証があれば
商業ギルドに冒険者ギルド。異世界感たっぷりだ。
出来れば登録したいところだが、三歳児はどちらも無理だろう。
ライラと一緒のときは武器の練習をしている。
マグノリア自身も考えてもいなかったのだが、たまたまライラに貴族女性の護身術について聞いたら、意外にも
「わたちもやってみたいのだけど……駄目だよね?」
「…………。マグノリア様はお美しいですからね。将来に備え簡単ではありますが、
少し考えて
そんなことを思ってたら。
次の日に
(((……鞭……)))
マグノリアと、休日なので見学に来ていたリリーとデイジーが思わず
「体術も加えた方がいいとは思うのですが、未だお小さいですから……お身体を痛めると
(……うん。身体を痛めてまで習おうとは思っていない。つーか、ライラさんガチやね……)
よく屋敷の中を歩けたな(視線的な意味でも、防犯的な意味でも)と思う。そしてどうやってこの大量の武器を運んで来たのだろう……まさか、
三人は思わず顔を見合わせた。
「取り敢えず、こちらで
「……オネガイチマシュ」
短い棒を手に持ち、ライラに向かっていく。躱されたり、ライラが持つ棒と軽く打ち合ったり。
次に長い棒を持って、同じように。
「てい、てい。とぉう。てい!」
マグノリアの気の
まったく表情を変えず、軽い動きで躱すライラ。対比が
……何というか、じゃれつく小型犬とクールな飼い主のようだ。
しばらく
「……だ、大丈夫ですか? マグノリア様……」
デイジーがタオルを持ってやって来て、マグノリアの
「……あいがと、う……」
ヨロヨロと
「ぷはぁ~! 生き返っちゃ!」
「「…………」」
静かに考え続けるライラを見て、三人は『ライラには逆らわんとこう』と決心した。
しばらくしてライラが口を開く。
「マグノリア様は元の身体能力は悪くないと思いますが、ずっとお部屋の中にいらっしゃるので、体力があまりないと思われます」
(そうでしょうね。苦情はギルモア
顔では頷いておき、文句は心の中で言う。
「大きくおなりになれば、どちらでも
「じゃあ、ハルバードとかですかね……?」
鍛錬……と同時に呟きながら、デイジーが
「しかし。お小さすぎて、上手く使えないと思うのです」
「「「確かに」」」
「暗器の方が良いかもしれませんねぇ」
「「「アンキ」」」
おっとり言われた言葉が
取り敢えずこちらを、と言って
「練習用なので
言いながらボタンを押すと、シャリン! と高い音を立てながら柄から大変物騒なものが飛び出て来た。逆に三人の言葉は
……ピカピカに光ったそれは、切れ味満点とでも言いたそうに冷たい光を放ったままだ。
「鎚鉾で
(((こ、これで……)))
「まあ、色々出来ます(にっこり)」
ついでとばかりに、ドサっという音と共に、ベルトの付いたおもりが
三人の視線が、おもりに引き寄せられた。
「「「…………(汗)」」」
「当面こちらをつけて準備運動と軽い鍛錬を致しましょう」
室内で出来るものですからねぇとおっとり言われるが、こっちは全然おっとりしない。こうしてライラによるブートキャンプが幕を開けたのだった。