僕はエピク。

 エフィリトの街に住む冒険者だ。

 いや冒険者と自信をもって名乗れるかと言うと微妙なところ。

 なら僕は一度ギルドマスターによって追放を言い渡されたのだから。

『もう冒険者じゃない』と言われたら、そうとしか言いようがなかったり。

 しかし最近になって、僕に追放を言い渡したギルドマスター自身がしくじりによって立場を追われた。

 破れかぶれとなったギルドマスターは、我が街の禁忌……遠き魔の山に住まわれる怪物メドゥーサ様の怒りに触れんとしたが、他ならぬこの僕の活躍によって危機は未然に回避された。

 それがここまでのあらすじ。

 しかし事態が大きかっただけに影響は様々なところに波及して、尾を引くのだった。

 その一つが今、目の前に……。

 この僕エピクの前で、薬師協会長さんとその娘スェルが向かい合っている。

 いや、にらみ合っている? と言っていいぐらいの眼光の鋭さ。

「お母さんは、ずっと遠いところにいるって言ったわよね? それってお母さんは死んだってことだと思っていたんだけど」

 ここ薬師協会本部の会長宅スペースで、父娘は一触即発のてい。

 いつも仲のいい親子なのに今日だけは険悪だ。

 プライベートが保たれた空間で切り込むスェル。

 彼女の父親である薬師協会長さんも察していたのか、無言のまままなむすめを見つめ返すのみ。

 そんな親子の重苦しい空気をかたわらで見守る僕!!

 ここにいていいのかな!?

「いや、エピクくんもいてくれ。お互い感情的になるかもわからない。必要だと思ったら止めに入ってくれ」

「私からもお願いします。今一人だけでお父さんと向かい合うのは、怖いので」

 父と娘がこうして睨み合う理由は、母。

 父と母がいて、娘がある。これまで欠けたピースであったスェルのお母さんの正体が判明し、それが波紋を呼んでいるのだった。

 ついに明かされたスェルのお母さん。

 それが山の魔女にして女神メドゥーサ様だという。マジで!?

「『お母さんは遠くにいる』って遠くのお山にいるってことだったの!? そんなのわかるわけないじゃない!」

「たしかに、そういう風に取れるような言い回しをした。意識的にそうしたのも事実だ。事実をありのままに伝えるわけにもいかないしな」

「なんで!?

「スェル、お前はたしかにメドゥーサが生んだ娘だ。半分は人間、しかしもう半分は何者かも計りがたい超越的存在の血が流れている。それを幼い子どものうちに伝えられるか?」

 スェルが、自分の母親のことをはぐらかされてきたのは想像がつく。

 はぐらかさずにはいられない存在だものなあ。

 男手一つでスェルを育てた薬師協会長さんの苦労は察して余りある。

 そもそもなんでそんなことになったんだ?

「最初から話そう。……二十年ほど前、私が今のキミたちよりほんの少し上の年頃だった。その時の私は薬師とは何のかかわりもない仕事をしていた。……冒険者だ」

「冒険者……!?

「A級で実績もあり、……正直てんになっていたよ。自分にクリアできないクエストなどないと豪語していたな。己を高めるため、限界を超えた危険を常に求めていた。その挙句にメドゥーサへと手を伸ばした」

 まるでさっき議員さんたちの話に上っていた冒険者そのものだなあと思った。

 薬師協会長さんも耳が痛かったに違いない。

 きっちりと実力を備えていた当時の薬師協会長さんは、ちゃんとみずからの力のみで魔の山を登り切ったそうだ。

 現れるモンスターを斬り伏せ、野営にて幾夜もしのぎ、険しい道を踏破してついにあの頂上の城へとたどり着いた。

「しかし彼女は、私などの想像をはるかに超える強大な危険だった。私は一瞬にして敗れ、全身を石にされてしまった。あの髪の毛の蛇に睨まれて」

 その証言は僕たちの体験したものと一致する。

 実際にあの巨大な存在と相対したからこそ共感できる。

「彼女は言った。『いにしえの盟約を破って私に危害を加えたからには、その罰は麓の人間すべてに受けてもらいましょう』と」

 それも僕たちが実際に会って言われたことと同じだ。

「しかし同時に彼女は救済も与えてくれた。もし石化状態のまま三ヶ月耐え抜けば、その意志力に免じて罰するのは私一人でとどめようと。私は全力で耐えた。私一人の身勝手で街が滅びるなど絶対にあってはならないからだ。私の冒険者の誇りにかけて何とか三ヶ月耐え抜いた」

 石となり、見えず聞こえず、何の刺激も与えられないまま時間だけが過ぎていく。

 人間はそういう状態に三日も耐えられないとか。

 同じ状態にさらされたガツィーブが数時間ともたなかったことからもその過酷さは証明済みだ。

「本当に三ヶ月も過ごせたのかどうか。私自身の感覚では何十年に思えたからね。私が耐え抜き、さらには正気をも保っていたことに彼女は驚いていたよ。石化を解かれてから随分褒められたのを覚えている」

 しかし彼は、死を覚悟していた。

 約束は『耐え抜きさえすれば自分一人だけを罰する』というもの。薬師協会長さんは、自分一人助かるためではなく、自分を含まない多くの人のために地獄を耐え抜いた。

「とっくに死を覚悟していたが、彼女は褒美だと言って、私を寝台に誘った。そこで味わったのは先の地獄とはまったく違う、まさに天国そのものだった」

「……」

「快楽に浸され、暗黒に冷え切った心も体も溶けていくようだった……! 特に私の体にまたがった彼女がスルリとドレスを脱ぐと、つやめくような……!」

「ストップ。ストップしましょう」

 そこ詳細に語らなくて結構です。

 スェルにも両親のトークとかしんどすぎる。

 傍観者ポジションながらこれは止めに入らざるを得ない僕だった。

『感情的になったら止めてね』ってこういうことだったの!?

「……ゴホン、つまりそんなこんながあってお前が生まれたんだ。彼女によれば、数百年に一度こういうことがあるのだという」

「こういうことって、どういうことよ?」

「彼女は超越的存在だ。それゆえに我ら人間にはない特別な感覚を有している。その感覚で、時代の潮目というものを敏感に察知するのだそうだ」

「時代の……潮目……!?

「そうした時彼女はみずからの分身を生み落とし、世の乱れに介入させたという。歴史上に現れた英雄豪傑の傍らには、いつも必ず彼女の血族が寄り添っていたというのだ。……ウソか真かはわからぬが」

 それを聞いてスェルは……、何故か僕の方を見た。

 どうして?

「お前がエピクくんを連れてきた時に、私もその運命を強烈に感じたよ。私も元は冒険者だからね、彼の隠し持った凶悪さに直感がうずいた。ここまでヤバい気配に現役の冒険者どもは何故気づかなかったのか。やはりぬるま湯に浸りきって鈍感になっていたのだろう」

「お父さんは……、なんで薬師協会長なの?」

「ん?」

「だって冒険者だったんでしょう? だったら冒険者ギルドマスターになる方が自然じゃない。なのになんで……!?

 たしかに山で出会ったメドゥーサ様ですら、現職のギルドマスターを彼だと思っていた……。

「彼女の娘たちが歴史においてどのような役割を果たすか、さっきも言っただろう。英雄を傍らで支えた女性は常に優れた薬師であったそうだ」

 メドゥーサ様の血統を、調合術という形で引き継いだ結果なのかもしれない。

「それを聞いた私は、お前を連れて街に戻ったあとはお前を薬師協会に入れるべきだと思った。しかし冒険者であった私は協会に何のもない。後ろ盾のない会員は立場も弱く、いじめの対象になることも多い。……エピクくんがギルドでそうだったように」

 いきなり例に出されて心苦しい。

 しかし痛いほど同意できてまた心苦しい。

「だから私がまず飛び込み、薬師協会でのお前の立場を確保しようと思ったのだ。私も薬剤調合に関しては素人しろうとだったが、幸い彼女のもとで基礎を学ぶことができた」

「お母さんの?」

「覚えていないだろうが、お前は二歳になるまであの城で過ごしたんだよ。さすがに乳飲み子の時点では彼女も別れがたかったのだろう」

 その時間を利用して協会長さんは死に物狂いで勉強し、冒険者でありながら薬師の心得をひとしきり修得した。

 そのアドバンテージは強力で、なんのコネもない新人からスタートして十年そこいらで協会長までのし上がったのも魔女直伝の薬学ゆえだろう。

 おかげでスェルは協会長の愛娘という肩書きを得て、薬師協会でしっかりした立場で勤めることができた。

「お父さん、どうしてそこまで……!?

「もちろんお前が心配だからだ。頼るもののない協会で、もしお前がいじめられていたらと思うと心配で胸が張り裂ける。それなら私が先に飛び込んでお前の居場所を作ってやりたかったんだ」

「でもお父さんは冒険者として……」

「お前の方がずっと大事だ。私はね、お前のお母さんのことを愛している。あんな出会い方ではあったが、彼女の圧倒的なまでの強さと、美貌に、完全に心奪われてしまった。彼女と愛し合った結果であるお前のことも心から愛している」

 はたから見ていてもスゲーなと思える。

 僕は物心ついた時から両親もいなかったので、冒険者ギルドでの立場も弱く、結局いじめられる側だった。

 スェルのお父さんのように全力を懸けて守ってくれる大人が僕のそばにもいたら何か変わっただろうか。

『もしも』の話はむなしいだけだが、しかし事実はある。

 スェルが父親からとても愛されているということが、親のいない僕にはよくわかる。

「お父さん」

「娘よ!」

 ヒッシリと抱き合う親子。

 二人のきずなは固く決して壊れぬと思えた。

 しかしそんな不滅の絆に差し込まれる横やり。

 コンコンとノックされて薬師協会員さんが入ってきた。

 そして言う。

「あの~、協会長の奥様と名乗られる方がお越しなのですが」

「「は!?」」

 協会長さんの奥様?

 って言ったらあの人が思い浮かぶんだけど。

 そんなまさかと思って入口へ駆けつけてみると、待っていたのはたしかにあの人だった。

「ハロー」

「メドゥーサ様!?

 人間に擬態しているのか、魔の山で会った時ほど妖気も漂わず平凡な感じがしたが、絶世の美しさは見間違えようもない。

 女神にして魔女にして美女メドゥーサ様!?

「どうしてここに!?

「せっかくだから私もしばらく下界で生活しようと思って。我が娘もこんなに大きくなったことだから世界も動くでしょう? それを間近で見物しようと思ったのよ」

 だから人間に化けて街に隠れ住もうと?

 そんなことができたんだ!?

「それにね、山を下りてからのアナタの行動が気になってね?」

「私ですか……!?

「冒険者を辞めて薬師協会で成り上がった。まさか本当だったとはね。娘のために生業まで捨てるなんて、今まで私がめてきた男の中にもいなかった。そこまで私の子どものことを思っているなんて……」

 ゆっくりと近づき、薬師協会長さんの首に手を回す。

 その動作が、まるで大蛇が獲物に巻き付くかのようだった。

「そんなアナタの子どもなら、もう二、三人生んでもいいかなと思ったのよ」

 これで家族の完璧な形が築き上がった。

 しかし何故だろう。

『羨ましい』と思うより『ご愁傷さま』という感想が先に浮かんだのは。


     ◆


 ともあれ魔の山騒動も決着を見て平和が戻った。

 今回大きな変化は冒険者ギルドマスターがいなくなったこと。

 さらに前の魔の森炎上事件で、逃れようのない大きな責任を負ったギルドマスターは逃走。

 今でも行方は知れない。

 元から責められる立場にあった彼は、この逃げ出しでさらに印象を悪くし本人不在のまま都市議会にて解任動議が可決。

 ちなみに満場一致であったという。

 この結果は直ちに世界中の冒険者ギルドを統括するギルド理事会へと送られ、さらなる審議の対象となる。

 とはいえ肝心のギルドマスターが逃亡して不在なので、街側は日々の生活を守るためにも独断でギルドマスター代行を指名し、業務の保全に当たらせた。

 そのギルドマスター代行というのが……。

「……本当に私でいいんでしょうか?」

 ギルド受付嬢を務めるヘリシナさんだった。

 僕がギルドに所属していた頃から唯一優しくしてくれたお姉さん。

 前ギルドマスターに反発し、その不正の証拠をひそかに集めていたことで都市議会から好印象を持たれたようだ。

「でも私は、結局直接的にギズドーンの暴走を止めることはできませんでしたし、エピクくんの不当な立場を改めることもできませんでした。むしろエピクくんを苦しめるのに加担した面もあります。ギズドーンを排斥したらその責任を取って退職するつもりでいましたのに……!」

「今ヘリシナさんに辞められたら冒険者ギルドはそれこそ終わりですよ」

 彼女は冒険者ギルドに残った唯一の良心。

 これからの立て直し作業に必要不可欠な存在となる。

「冒険者ギルドは人間社会に必要な組織なのよ。だからこうして存在し続けられる」

 そう言ったのはA級冒険者のリザベータさん。

 何故か今日、僕と一緒に冒険者ギルドに顔出ししている。

「冒険者ギルドの活動は何があろうと止めてはいけないの。たとえどんなに腐敗しようとも。腐った部分を切り落として自浄していく最中もクエストをこなして人々の生活を守らないといけないのよ」

「さすがA級冒険者のお言葉ですね。身に染みます……!」

 ヘリシナさん、まして神妙な顔つきとなり……。

「ここまで来たからには私も腹をくくって、違った形で責任を取ろうと思います。いずれはギルド理事会から新たなマスターが派遣されてくるでしょうがそれまでは、ギズドーンのせいで評判がどん底となったこのギルド、私が全力で支えていきます」

「いいぞその意気ー」

 無頓着にはやしたてるリザベータさんやめてくれないかな。

「そこでお二人をお呼びだてした用件ですが……」

 ああ。

 そういえばなぜ僕らここにいるの?

 薬師協会ではイチャイチャする協会長さん&メドゥーサ様にやきもきするスェルをなだめるので大変なのに。

「冒険者ギルドの立て直しのためにお二人の力を是非借りたいと思っています。まずはエピクくんには正式に冒険者ギルドへ復帰していただこうと」

「え?」

 でも僕は、前のギルドマスターによってギルドをクビになった。

 冒険者の資格もはくだつされて……。

「本来ギルドマスターには、気分次第で冒険者資格を剥奪する権限なんてないんですよ。ガツィーブのように重大な犯罪行為でもしでかしてたら別ですが。エピクくんは日々のクエストを失敗することなくこなし続けてきました。クビになる落ち度などありません」

「でも僕は最低のF級で……」

「F級だろうとS級だろうとクエストはクエストです。依頼者にとっては重要で失敗していいものなど一つもありません。それらを勤勉に成し遂げてくれたエピクくんは、誰にでも誇れる一人前の冒険者ですよ」

 そんなこと言われると涙が出てくるんだが……!

 ヒトから認められたことなんてめっにないので……!

「だから先のクビ宣言もギズドーンが勝手に言っていたことで、理事会も承認していなければエピクくんの冒険者記録もしっかり残っています。何の手続きもなしに復帰可能ですよ」

「その、申し出はうれしいんですが僕は今薬師協会さんの専属になっていて、一人の判断では……」

「薬師協会には既に話を通してあります。エピクくんの判断に任せるということですよ」

「いつの間に!?

「新婚協会長が新妻とイチャイチャして使い物にならなくなる前にです」

 そんな段階で!?

 とはいえメドゥーサ様と薬師協会長さんは出会ったこと自体随分前の熟年夫婦なんだけどな!

 しかしイチャつきぶりは新婚カップルのごとし!

 娘のスェルが顔をしかめるレベル!

「そもそもギルドを抜きにして冒険者と直接契約を結ぶのは仁義破りだと、あちらもわかっていますからね。ギズドーンの目に余る身勝手への緊急措置であるのはわかりますが、元凶が除かれたからには通常形態に戻さねば自分たちが不義理だとわかっているんですよ」

「多くの個人や組織が安全を守るため、貴重な素材を得るために冒険者を必要としている。それら依頼者たちを平等にさばききるためにやはり冒険者ギルドは必要なの」

 リザベータさんが補足して言う。

 そうか。

 すると僕はもう薬師協会さんで直接仕事は請け負えないってことか。

 ……。

 なんか寂しい。

「薬師協会さんへの恩義を気にしているなら、あちらのクエストを率先して受けてあげればいいんですよ。クエスト内容をいじれば指名依頼、依頼主への直接納品なんてこともできますし」

「癒着が疑われて手放しでお勧めできないけれどね」

 そんな方法があるのか!?

 よぅし、そういうことならギルドに戻っても薬草採取たくさん頑張るぞ!!

「いえ、エピクくんには薬草採取以外も頑張ってほしいんですが……!?

「ええッ!?

「エピクくんの実力は大いに知れ渡りましたからね。スキルの応用法も覚えてモンスター素材も持ち帰れるようになったんでしょう? エピクくんには是非ともギルド主戦力として森の奥へ入り、B級A級相当の素材を持ち帰ってほしいんです!!

 ふんぬッ、と気合たっぷりに言われてもどうしていいか困る。

 ギルドに復帰できたとしても僕、依然として最低辺のF級でしょう? そんな小者が大暴れして差し障りは……!?

「はい、ということでエピクくんの等級を上げることにしました」

「等級を上げる」

「ギルド復帰と共にエピクくんはD級冒険者です。私の権限ではここまでしか上げることができなくて申し訳ないですが」

 いや、それでも充分望外のことですよ!?

 冒険者となってから早数年。

 その間昇格なんて機会すらなかったというのに。それがいきなりEを飛び越えてD級に!?

「本当はA級ぐらいポーンと差し上げたかったんだけど。所詮ギルドマスター代行じゃこれが精いっぱいで……」

「それでも代行ごときの独断でD級昇格はかなりちゃしたわね。あとで査問なんか受けても知らないわよ」

「知ったことではありません。今の立場に未練ありませんので」

 きっぱり言い切るヘリシナさんカッコいい……!

「まあ私から見てもエピクくんはA級ぐらいが妥当だと思うけど……。ユニークスキル持ちだからね!」

 メドゥーサ様いわく、僕のスキルがユニークを超えた『神威』と呼ばれるものなんだってことは黙っておこう。

 話を複雑にするだけだ。

「理事会からなんか言われたら私も弁護に回ってあげるわよ。A級冒険者の証言はなかなか効き目があるから」

「その時が来たら頼りにさせていただきます。ですが今もリザベータさんに頼みたいことは山積みですので」

「お、やっと私の方にも話が振られるのか?」

 ここまでリザベータさん、何故いるのかわかんない状態だったしなあ。

「リザベータさんにはA級冒険者の手腕でギルド立て直しの助力をお願いいたしたく。差し当たってはけきった冒険者たちの再教育ですね」

 それは元々この街のギルドに所属していた冒険者たちのこと?

 僕がモンスターを『消滅』させまくったお陰で、そのおこぼれしか相手にせずすっかりぬるま湯に浸りきっている。

 今じゃD級相当のモンスターが出ただけで瞬殺確定。

 全体的にこんなじゃギルドの運営自体が立ち行かない。

「そこでリザベータさんには指導役に就いていただきたいのです。A級にまでのし上がった経験と実績で、エピクくん以外の腑抜けた冒険者たちを一から鍛え直してください」

「予想通りのご要望でいいけどさあ。でもこのギルドのヘッポコぶりって正直予想以上よ? 自分の無能さを隠すため狩り場に火を放つなんてさあ、根性たたき直す以前の問題なんじゃない?」

 リザベータさんが話しているのは魔の森に火を放った事件のこと。

 たしかにあれは街をも危険に巻き込みかねない狂気の所業で、もはや『心を入れ替えやり直します』なんて文句も通じないだろう。

「ご心配なく。あの事件に関わった冒険者は無論追及し、冒険者資格を剥奪してあります。いやー、さすがに犯罪に関わればサクサク進みますねー。街側の協力も得られますし」

「じゃあ最悪な連中はけてるってわけね。でもそれはそれでヤバくない? 手に余るチンピラ同然の連中がまとめて失職したら治安の悪化につながるわよ」

「そう思って次の働き口はキッチリ紹介してあります。私をギズドーンなんかと一緒にしないでください。辞めさせて終わりなんて詰めの甘いことはしませんよ」

「……ちなみにどんな仕事紹介したの?」

「鉱山夫です。危険で自由も拘束されますがヘタすりゃE級冒険者辺りよりよっぽど稼げますから。紹介された人も喜んでいると思います」

「紹介という名の強制招集じゃないでしょうね……!?

 ……と、とにかく治安が悪くなることはなさそうなので、よかった。