番外編



 まゆは行きたかった大学に無事合格し、4月から女子大生になった。涼とはほぼ同棲生活をしているが、ここ一か月ほど仕事で渡米していた。

 講義の合間に、学食で新しくできた友達とお茶をしていた。

「彼氏がさー、会うたびにしたがるんだけど、演技するのめんどくさくて」

「わかるー、感じてる振りしないと終わらないしね」

「AVみたいに激しくしたら女は感じると思ってるみたい。どうにかならないかな」

「やだよねー、かといって指導したら傷つくだろうし」

「ほんとほんと。どっかに漫画みたいなイケメンで優しくて気持ちよくしてくれる人いないかなー」

 唐突な友人たちの赤裸々トークに赤面してしまう。

 涼以外の男性がどんなセックスをするかなんて知らないが、色々な人がいるようだ。

「そ、そうなんだ」

「まゆは、彼氏作らないんだっけ?」

「作らないっていうか……」

「いつまでも理想高くしてると、あっという間に青春終わっちゃうよ! あの色っぽいお兄さんだっけ? あんな人と一緒に暮らしてたら、基準がおかしくなるのはわかるけどさ」

 涼との関係はうまくいっていたが、なまじ家族なだけに、本当に結婚するまでは周囲に秘密にすることにした。

 ──世間的にはちょっと変な関係だし。

 涼はこっそり結婚しても苗字も変わらないからと言われたが、両親のことを考えると自分も経済的に自立してからがいいと思った。

 毎晩愛し合っても、飽きることなく、むしろ慣れるほどに快感は深まっていた。

 心も体も満たされてはいたが、海外出張で離れ離れで寂しい日々だった。

 涼は、明後日帰るはずだ。

「ねー、まゆ。今日の夜暇?」

「うん」

「植松先輩がさー、たまには飲み会にまゆに来てほしいって。気があるんじゃない?」

「いやいや、全然話したことないし」

「だから話したいんでしょーが!」

 友達にばしんと肩を叩かれて、鈍いんだからと叱られた。

 惰性で入ったテニスサークルもさほど熱心に参加しているわけではなく、飲み会もたまにしか行かなかった。

「まゆってさー、もさっとしてるけど、男ウケいいよね。男どもがなんかエロい雰囲気って噂してるよ」

「もさ? えろい?」

 どちらも誉め言葉ではなく、ぐさっと胸に刺さる。

「あはは。なんか真面目そうなのに、オーラがエロいって」

「もう、ひどい!」

 親友の失礼な言葉に苦笑しつつ、もしそんな変なオーラが出ているとしたら、毎夜涼に変態行為をされているせいではないだろうか。

「たまにだから行こうかな、飲み会」

 ちょうど、涼は出張している。

 特に束縛するようなことも今はないが、遅くなると迎えに来るので気は使う。

 結局、行くことにした。

 学生向けの安い居酒屋でどんちゃん騒ぎが始まった。

 どうにも同年代の男女が多数集まる場のノリみたいなものがわからず、ただ座っているだけになってしまう。

 みんなでわいわいしていると、あっという間に時間が過ぎた。

「あっ、もうこんな時間」

 終電が近くなり、帰ることにした。

「俺、送ってくよ」

 植松先輩が声をかけてきた。

「え、大丈夫です」

「どこ住んでるの?」

「豊洲のマンションです」

「まゆちゃんち、お金持ちなの? そんなとこ住むなんて」

「あ、いえ。兄のところに下宿しているだけです」

「お兄さんの部屋? うちも妹いるけど、一緒に住むなんて仲がいいんだね」

「あ、ハイ」

 仲がいいどころではないが、そんなことは言えない。

「送っていただいて、ありがとうございました!」

 その夜、植松先輩から、連絡が来た。

「今日はまゆちゃんと話せて楽しかったよ。また飲み会来てね」

「こちらこそありがとうございます」

「いきなりだけどさ、明日みんなで映画行くんだけど一緒にどう? 一人来れなくなって前売り券が余ったんだ」

 ちょうど見たかった映画だった。

 ──みんなで行くならいいかな。

 翌日、約束の場所へ行くと、植松先輩しかいなかった。

「あれ? みんなは?」

「なんかみんな風邪引いたらしくて」

「えっ、風邪流行ってるんですかね」

 変だなと思いつつ、映画を見て、途中感動して泣いていると、突然手を握られた。

 びっくりして、横を見ると画面を見たまま動かない。

 何事もなかったかのように、映画館を出るとカラオケに誘われた。

 なんだか嫌な予感がしたが、強引に誘われ結局ついていってしまった。

「わっ、な、なにするんですか」

「好きなんだ! 初対面からもう気になって気になって」

 部屋に入るなり、いきなりキスされた。

 口をこじ開けられ、無遠慮に舌で掻き回される。

 服の上から、胸を揉みしだかれ、抵抗してもそのまま押さえつけられてしまう。

 よく考えたら密室だった。いつも涼に叱られるが、ちゃんと考えるべきだった。

 告白した瞬間にこれは明らかにおかしい。涼にもっとおかしなことをされてきたので、感覚がおかしくなっているのかもしれない。

「や! やめてください」

「彼氏いないんでしょ?」

 涼とのことは、人に言えないでいた。

 親も大学に通うための下宿だと思っていたし、義兄妹で肉体関係があるなんて、なんだか不道徳だから秘密にしている。

 だからまゆは彼氏がいるとは言っていない。

 けれど結局のところ涼に、精神的にも肉体的にも依存しきっている。

 涼が家を空けるとなんともいえない寂しさがあり、こんなふうに頼りきりの自分が嫌でもある。

「好きな人でもいるの?」

「──はい」

「彼氏いないって聞いたよ?」

「なんていったらいいか」

「まさか、不倫? セフレとか?」

「ち、ちがいます」

 でも公にできない関係ではある。

 涼は、言ってしまえばいいというが、まゆは母になんと言われるか怖かった。

「ねぇ、もしいい加減なやつが好きならさ、俺奪ってもいいかな」

 意味不明なことを言われ、いよいよこいつはおかしいと気づく。

 下着の中に手を入れようとしてきた。いきなりそんなことをするなんて信じられない。

 ガシガシと刺激され痛みだけが走る。最低だ。

「い! いや!」

 渾身の力で拒絶すると、先輩も驚いてやめた。

「ご、ごめん」

「私帰ります!」

 ──涼くんのキスと全然違う。

 涼ならまず、雰囲気で気分をよくさせてから、おでこや頬にくちづけて、だんだん唇に近づいてくる。

 キスだけで蕩けそうなくらい気持ちよくしてくれる。

 実際キスだけで達してしまったことすらある。

 思えば最初こそ強引だったが、気持ちを確かめあったあとは、涼はまゆを傷つけるようなことはしなかった。

 先輩を置いて、急いで帰宅する。一人部屋で、涼を裏切るようなことをしてしまったことを後悔していた。



 涼が出張先から帰宅した。

「まゆちゃん、会いたかった」

 出張から帰るなり、玄関先で抱きしめられる。嬉しくて抱き返すが、キスされそうになった時に先輩のことを思い出して、思わず顔をそむけた。

 そのわずかな動きを涼は見逃さない。

「どうしたの」

「なんでもない……んっ」

 抱きしめると、頬やおでこにキスしながら、どれだけまゆと離れて寂しかったか、甘く語るのだった。

「まゆちゃんは寂しくなかったの」

「寂しかった……」

 骨がきしむほど抱きしめられて、愛情を深く感じ、なおさら先輩と会っていたことを申し訳なく思う。

「好き……」

「僕も好きだよ。いい子にしてた?」

「…………う、うん」

 すぐにでもベッドに連れ込まれそうになる。

「あっ、お風呂まだだから」

「一緒に入ろう」

 浴室に連れ込まれ、互いに泡だらけの体を擦り付けていると、欲望に火がつく。

「涼くん、硬いの当たる……」

「しょうがないでしょ、一か月ぶりなんだから。まゆちゃんの動画見て我慢したけど、本物がいい」

 出張前、涼はしばらく会えないからと行為を撮影した。

 嫌だと言っても、涼に強く言われると、すぐに抵抗できなくなる。

 玩具を挿入され、潮まで噴いているところを撮影されて泣いてしまった。

「あの時挿れたディルド、気に入った? ちっちゃすぎる?」

「いや。ああいうのは嫌い。涼くんのがいい」

「かわいいこと言うね」

 体を互いに洗いっこしていると、足の間がぬるついてくる。

「はー、いない間まゆちゃんもしたかった?」

 涼はいつも以上に興奮した様子で、まゆの首筋に痕がつくほど口づける。

「やぁ、みんなに見られちゃう」

「見えないとこならいい?」

 谷間の間に痛みを感じて、見ると赤くなっている。そのままあちこちにマーキングしながら、涼の舌があちこち這いずりまわる。

 久しぶりの感覚に、体が激しく疼いた。

 胸のまわりを吸われると、中心がものほしげにぴんと硬く尖る。

「はぁ……久しぶりだからゆっくり味わいたい」

「んっん。涼くん食べちゃやだ」

 まゆの肉を食らうように貪る。

 他の男は知らないが、涼は逞しい体に合った性欲の持ち主だった。

 それに、やっぱり普通ではないことを要求してくる。

 変なことだと思いつつ、そうした行為から得られる快感から逃れられずにいた。

 涼の倒錯した欲望をまゆの体は受け入れ馴染んでしまっている。

 涼の体は硬くてごつごつしていて、まゆと同じ人間とは思えない。

 逞しい体に組みしかれて、巧みに快楽を与えられると、もうこの人から逃げられないと思ってしまう。

 なにより、涼のそれは大きくて硬くて、とてつもない快楽をくれる。

 久しぶりに目にするそれを見て、ごくりと息を飲んだ。

「これ? 欲しいの?」

「……そ、そんな」

「触って」

 大きすぎてまゆの手にはとても収まらない。触れると血管が浮き出るほどに膨張して脈打っている。

 まゆは、浴室の床に膝をついて、自ら咥えた。

「どうしたの? 自分からするなんて」

 先輩とあんなことをしてしまった罪悪感もあり、いつもより熱心に咥え込んで奉仕した。

 やり方は知っているがあまり自分からしたことはない。

 今日は久しぶりのせいか、気分が高まっているのかもしれなかった。

「ん、おっきぃ」

「まゆちゃんの小さなお口には全部入らないね」

 そう言いながらも涼は腰をぐっと押して、口の奥までいれこんだ。

「んっんっ」

 口をすぼめて、上下すると涼が恍惚としている。

「うれしいよ、まゆちゃん」

「んー、ん」

 全部はとても入らないので、根本は手を使う。

 先端から先走りがこぼれてくるので、穴に舌を絡めると、涼の体がぴくりとした。

「どうしたの、まゆちゃん。今日おかしいよ」

 サークルの先輩に、いやらしいことをされそうになったなんて言えない。

 ごまかすように、口と手を動かすと、頭を押さえつけ涼が腰を振る。

 苦しくてえづきそうにはなるが、頑張って奉仕する。

 息が荒くなり、終わりが近いことを知る。

「あっ」

 まゆの口から引き抜くと同時に顔に熱い液体が迸った。

「ごめんね。洗ってあげるから」

 涼に洗い流してもらい、二人でバスタブに浸かる。涼の上に抱き合う形で乗り、唇を合わせる。

 一か月も離れるのは初めてだったから、やっぱり帰ってきてくれて嬉しい。

「離れてた分、甘えていいよ」

「うん……」

 先ほど出したばかりだというのに、お尻に硬くなったものが当たる。

 唇を貪り合い、温かい湯の中で抱き合っていると、すぐにでも欲しくなる。

 抱き合う角度がずれた拍子に、入り口に剛直が当たる。お尻を少しずらすと、先端が少し入ってしまう。

「あ……」

「ここじゃ、ゴムつけれないよ」

 引き抜こうとすると、ひどく感じてしまい、声が漏れる。

「んっ」

 動いた拍子に逆に奥まで入ってしまった。

「まゆちゃん、ほんとにいけない子だね」

「ちが……」

「まぁ、デキちゃっても養えるからいいよ」

「んっんっ」

 一度射精して、涼しい顔をしている涼と違ってまゆには余裕はない。

 我慢できずに、腰を揺らして、久しぶりの感触を味わってしまう。

 これではまるで自分が涼の体を使って、勝手に気持ち良くなっているみたいだ。

 湯の中でリラックスしているせいもあり、腰が止まらない。

「こっちの穴も撫でてみよっか」

 涼が後ろの窄まりをそっと撫でた。絶対に触れられたくないだけに、ほんの少し指がかするだけで変な声が出てしまう。

「あ゛っ。やっ、そこだけはイヤ」

「軽く触るだけだから。こっちまで開発したらまゆちゃん多分おかしくなっちゃうもんね」

 そう言いながら、優しく触れられると、腰を一層動かしてしまった。

「我慢しないで」

「は……、も、抜く、から……」

 耳元で囁かれ、腰を自分から動かすと、すぐに果ててしまう。

 ぐったりとしたまゆを浴槽に立たせると、涼が後ろから一気に貫いた。

「や、今イったばっかだから、うっ」

「だからいいんだよ」

 壁に手をついて、必死に耐えるが、崩れ落ちそうになってしまう。

 力が入らないまゆの腰を掴んで、涼が容赦なく奥まで突いた。

「あ……、ら、め、また来ちゃう……」

「かわいい。もっと気持ち良くなって」

 一か月しなかったぶん、互いに我慢がきかなくなっている。

 後ろから首筋を噛みつくように、吸われながら抜き差しされる。

「甘噛み気持ちいい?」

「いい、もっとして」

 少し痛いくらいされると、より感じる。そうしている間にも、ピストンが早まって絶頂が近いのがわかる。

 もはや理性を失っているのはまゆのほうだった。

「あ、涼くん。中に欲しい」

「出されるの大好きだもんね」

「んー。好き。あ……出てる。涼くんのあったかい」

 後ろを向いて、吐精中の涼と口づけを交わす。

 そのまま二人で全裸でベッドへ向かった。

 唐突に、まゆをうつぶせに寝かせると、タオルで後ろ手に縛った。

 涼が倒錯したことをするのは初めてではないが、顔つきがいつもと違う。

 戸惑っていると、低い声で詰問された。

「で、まゆちゃん。何隠してるの」

「え?」

「なんかあったんでしょ? 恥ずかしがり屋なのに自分からあんなに咥えるなんて、やましいことがあるとしか思えない」

 洞察力の鋭さというか、野生の勘みたいなものに、ぞっとした。

 やっぱり涼は普通でない。

「な、なんにもない」

「まゆちゃん嘘つく時、右斜め上見る癖あるよね。もういいよ、体に聞くから」

 出張に持っていったトランクからアイマスクを出すと、まゆにつけた。

 目も見えないし、手を縛られて動けない。

 ベッドでうつぶせにされた。

「あ、お土産。見えないだろうけど。マッサージオイル。今塗ってあげるからね」

「ひゃんっ」

 恐ろしい状況で冷たいオイルをつけられ、鳥肌がたった。

「な、なんで」

「なんでかこっちが聞きたいな」

 うつぶせの状態で、背中にゆっくりとオイルが塗られる。

 ごつごつした温かい手は、気持ちいい。

 脇腹から、脇下まで行ったり来たりする。普通のマッサージにも思えるが、涼の手だとどこを触られても感じてしまう。

 もどかしい触り方をされるほど、あとの快感が深くなるとわかっていても我慢しがたい。

 お尻の肉を持ち上げるように揉まれると、内側がぎゅっと縮こまる。

「正直に言わないと、今までしたことないことしちゃうけどいい?」

 その言葉に震え上がる。今までだって散々あらゆることをしてきたのに、まだ引き出しがあるというのか。どこまで変態なのか。

「白状するまで、お仕置きは続くよ」

 もう全身とろとろで、すぐにでも欲しいのに酷なことを言う。

 実際言いなりにならなければ、まゆがその気になっても決してしてくれない。

 以前まゆが欲しがって辛そうにしているのが、精神的に気持ちいいとか恐ろしいことを言っていた。

 太ももや胸の周りといった際どいところを撫でてくるのに、ちゃんと触れることはしない。

「サークルの先輩に映画に誘われて……」

「誘われて?」

「好きって言われた」

 キスされたり体を触られたりしたことは言えない。

「で? なんて答えたの」

「お付き合いはできませんて」

「なんで?」

「涼くんがいるし……」

 そう言うと満足したのか抱き寄せられて、よしよしと撫でられる。

 この手が好きだった。

 好きという言葉では足りない。身も心も依存しきっている。危険なほどに。

「なんか怪しいけど、とりあえず信じようかな」

「怪しくないよ……」

「僕が好き?」

「好き……」

「僕にどうされるのが好き?」

「抱っことちゅーされるのが好き……縛られるのは嫌」

「ほんとに? 甘いだけのセックスじゃもう物足りないんでしょ?」

「普通のが好き……」

「普通って?」

 嘘ではないが、涼の趣味に付き合わされて、色々な快楽を知ってしまっただけだ。

「いちゃいちゃするのがいい……」

「ちゃんと言って? 抱き合ってるだけでいいの?」

 ぴしゃりと言われ、うつぶせのままビクリとする。

「りょ、涼くんに気持ちよくしてもらうのが好き」

「どこを?」

「全身……」

「もちろんしてあげるけど、ここでしょ? 最後は」

 まゆの敏感な突起を人差し指でくりくりといじる。

「ここ、どうしてほしい?」

「……舌で転がして、いっぱい舐めて吸ってほしいの」

 言葉にするとより興奮してしまい、花びらの奥から蜜が垂れてきた。

「ふふ。奥は?」

「硬いのでいっぱい突いてほしい……」

「すぐに奥も感じるようになっちゃったもんね。才能あるよ」

 そんな才能を誉められても嬉しくない。

「今日は久しぶりだからゆっくり楽しもう。お楽しみは最後ね」

 全身にゆっくりとオイルを塗りたくられ、涼の指が肌をなぞるたびに、切ない吐息がこぼれる。

「ふぁっ、くすぐったい。んっ」

「くすぐったいとこは、全部性感帯なんだよ」

 涼には、どこをどうしたら気持ちいいか今までさんざん喋らされたから、全部知られている。

 背中や、脇腹といった部分に触れられると特にまゆは弱い。

 背中をマッサージされているだけなのに、時々声を漏らしてしまう。

 腰やお尻までゆっくりと触れられると、淫らな気分が高まってくる。

「あ、ひっ……やぁ、涼くん」

 涼の手が脇の下に伸びてくると、まゆは身を捩らせて喘いだ。

 やめてほしくても、手を縛られているし、抵抗したら涼は容赦しなくなる。

 目隠しされていると、体の感覚が研ぎ澄まされて、感じやすくなるようだ。

「やさーしく撫でてるだけだよ」

 涼はまゆが段々高ぶっていくのを見るのが好きだった。

 自分の性戯でまゆが、快楽に溺れていくのを見ると嬉しそうにする。

 大きくてごつごつした手は、それだけでも男らしくて、触れられていると意識してしまう。

 すっかり涼に仕込まれた体は、貪欲になるばかりだが、却って焦らされることが増えた。

 自分からおねだりしないと、してあげないと言われて、毎晩卑猥な言葉を言わされている。

 口でのやり方を教え込まれて、涼に奉仕しているだけで、欲しくてたまらなくなり、泣いてねだったこともある。

 他の人を知らないから「体の相性がいいんだよ」という涼の言葉が本当かわからないが、あのまま植松先輩に身を任せたところで、気持ちいいとは思えなかった。

 だが同時に普通の恋愛への興味もあり、爽やかなデートや、恋愛への憧れもある。

 涼との肉欲に満ちた関係とは違う、世間の男女交際はどんなものなのかと思う。

「また余計なこと考えてる?」

「考えてない……」

 マッサージ自体は、ごく普通のものなのに、相手が涼なせいで性的な行為のように感じる。

 オイルの香りも官能を刺激するものだった。

「ひゃっん」

 段々全身の感度が上がってきて、弱いところに指が触れるだけで、体がのけぞるほどに感じてしまう。

「全身ピンクになってきてるよ」

「りょ、くんもういい」

「なんで? 気持ちいいでしょ?」

 気持ちいいけど物足りなくて辛いからやめてほしい。

 涼は相手が気持ちよくなってるのを見て満足するタイプらしいが、時々度を越している。

 30分以上あちこちマッサージされておかしくなりそうだった。脇腹から胸の横を撫でて、時々乳輪の近くまで指が近づくが、触れそうで触れない。

 そういうと、ようやくタオルの戒めを解くと、今度は仰向けにされた。

 胸も感じるが、涼の言うとおり、全身どこを触れられても、気持ちよくて、そして物足りない。

 すっかり体が蕩けて仕上がった頃、ようやくキスしてくれた。

 舌と舌を絡めあうと、頭の中まで溶けてしまいそうだった。

「ふぁぁ、」

 やっぱり涼のキスがいい。

 植松先輩のは、乱暴に口の中を掻き回されるだけで全然よくなかった。

「なに考えてる?」

「久しぶりだから嬉しいなって」

「そう? 最近大学入って浮わついてるから、普通の恋愛にも憧れたりしてそう。少女漫画のヒーローみたいな爽やかな男なんていないからね」

 さくっと釘を刺されてヒヤっとする。

 確かに、元カレの和也も植松先輩も二人きりになるとギラギラして怖かった。

 少女漫画のようなキラキラした王子様タイプの男の子は、二次元にしかいないのかもしれない。

 涼は涼で、変なところがあるが自分を大切にしてくれているのはわかる。

「やっぱり涼くんがいい」

 ぎゅっと抱きついて甘える。

 逆三角形の筋肉質な体は、何度見ても直視できないほど男らしさに満ちていた。

「触って」

 まゆの手を取り、胸板に手をやる。

 筋肉で盛り上がった胸は、硬くて触れるだけで体温が上がる。

 ──なんだかんだずっと守ってくれてるよね。

 いびつな略奪で始まった肉体関係だったが、今や心も満たされて幸せだった。

 少々いき過ぎな時もあるが、まゆだけを愛し求めてくれる。

 裸で抱き合いながら、お互いの体をまさぐり合う。

 涼が最近ますます大きくなってしまった胸を確認するように下から揺さぶった。

「おっきくなった?」

 毎晩交わっているのも関係しているのかもしれない。

「自分じゃわかんない」

「感度も上がってない?」

「ひゃっ」

 胸の谷間に顔を埋めると、裾野からじわじわと舌で愛撫された。

 いつものことだが、なかなか中心にたどりついてくれない。まゆが足をもじもじさせていると、足の間に涼が入り込む。

 乳輪の周りを舌でつつかれるたびに、花びらから蜜がこぼれる。

「焦らされるの嫌い」

「そういう時はどうするの?」

「舐めて、吸って」

 最近ではまゆの方から頼むまで延々と焦らされるが、こういうことを、言わされるたびに心まで堕ちていく気がする。

「ふ、ふぁっ」

 希望通り、きつく吸ってもらうが、それでもまだ満たされない。

 このまま一気に貫いてくれても構わないほど体の準備はできているが、そうはしないのが涼だった。

 胸の中心を吸いながら空いた手で体を撫でることも忘れない。

 もう心も体ととろとろに溶けてしまいそうなくらい気持ちよくなってしまっている。

 待ちきれなくて思わず、涼の剛直を握りしめ、上下に擦る。

 ──早く欲しい……。

 すでに熱くなり、脈打つそれに触れているだけで、挿ってきた時の期待が高まってしまう。

「欲しいの?」

「うん」

 涙目で懇願する。

「早く……」

 まゆの願いを無視して、入ってきたのは指だった。

 ゆっくりと内壁を撫でるように、進入してきた指をきつく締めあげてしまう。

「ここが、気持ちよくなるとザラザラしたり、きゅって締まるのなんでかわかる?」

「わ、わかんないよ」

「男を気持ちよくして、子種を搾り取るためだよ。まゆちゃんの体は、男を悦くするのに適してる」

 発想が変態すぎてついていけない。

「ここ、誰のもの?」

 ぐちゃぐちゃと出し入れしながら、問われる。

「涼くんの……」

「よく言えました」

 褒美とばかりに、剛直を押し当てられた。

 先端だけを出し入れされて、もどかしさと切なさで、喘いだ。

「気持ちいいの?」

「ん。もっと奥まで挿れて」

「幸せ?」

「幸せだよ」

 甘い言葉を囁きあいながら、ゆっくりと高まっていく。互いのぬるついた粘膜をこすり合っていると、これ以上ない気持ちよさで、おかしくなりそうだった。

「あ、そこ。もっとして」

「まゆちゃん、気持ち良くなったあと、すぐ寝ちゃうからまだ駄目」

「あぁ……。は……、やだ。欲しい」

 お預けされて、余計に欲しくなり、自ら腰を動かす。状態をのけぞらせると、そのまま、乳首をきゅっと吸われて、達しそうになると涼が動くのをやめる。

「あ、ひどい」

「まゆちゃんの我慢してる顔好きなんだよね。足もっと開いて」

 まゆの太ももを思い切り広げると、そこを凝視しながら、激しく穿った。

 繋がっている部分から、互いの体液が交じり合い淫らな音がする。

 涼がまゆの腰を掴んで、激しくずんずんと突き上げ始めた。

「……っ。いいね、今日もすごい」

「あぁ……。激し……気持ちいい」

 絶妙な速度で、まゆの体内を抉りながら、涼も高まっていく。涼の背に必死にしがみついて、腰をびくつかせながら、その激しさに耐えた。

 これ以上ないほど、内部が縮まる。もうわけがわからないほど気持ちよくなっている。

「好きだよ」

 ちゅっとキスして、互いの体を求め合う。もう互いの境界もわからないほどどろどろに溶けているような気がした。

「あ、イっちゃう。あ……ぁ、ああ」

「ん。いっぱい出すよ」

 腰をのけぞらせながら絶頂したまゆの中に涼も白濁をまき散らした。

 何度しても、この瞬間は死んでしまってもよいと思うほどだ。

 きつく抱き合いながら、絶望的な快楽を分かち合う。

「離れないで。ずっと」

「うん。そばにいるよ。どろどろに甘やかして気持ちよくして僕なしで生きていけなくしてあげる」

 涼が長い吐精を終え、まゆに覆い被さった。

 濃厚な口づけを交わしながら、二人は繋がったまま眠りに堕ちていった。

 翌日、結局先輩にキスされたことを白状したまゆには、激しいお仕置きが待っていたのだった。

                〈了〉