六章 二人の思い出 その2



 まゆが高校生になり、いじめはなくなった。

 代わりに段々女らしくなってくると、痴漢だとかストーカーの被害に遭うことが増えた。

 就職して忙しくなったのもあり、思春期のまゆが子供の頃のように涼に露骨に依存しなくなったから、少しずつ距離ができてきていた。

 それでもまゆが遅くなる日は送迎もしたし、一人暮らしをするつもりだったのに、まゆが危なっかしくて家を出れずにいた。

 遊ぶ女もいないことはなかったが、誰とも長続きはせず、本気になることもなかった。


 そんなある日、珍しくまゆから仕事中に電話が来た。ちょうど一年前のことだ。

「もしもし、どうしたの」

「なんか、体調が悪くて動けないの」

 どうやら、熱があるのに、試験期間だからと無理して学校に行ったら途中で動けなくなったらしい。

「すぐに行くけど、辛かったら救急車呼んで」

 言われた場所まで迎えに行くと、学校の近くの公園のベンチでうずくまっていた。

「まゆちゃん、大丈夫?」

「うん。お兄ちゃん、仕事なのにごめんね」

「いいんだよ。ちゃんと頼れて偉かったね」

 忙しい両親に代わり、車を出して病院に連れていくと風邪だという。

 特に熱以外症状はないが、本人は熱に浮かされて、うとうとしていた。

 まゆの母親は娘に冷たく病気だと言っても、看病の一つもしてやらない。

 だから自分が会社を休むことにした。

 三日ほど熱が下がらず、ほとんど寝て過ごしていた。

「お兄ちゃん、手……」

「ここにいるよ」

「抱っこして」

 熱で幼児返りしているようだ。さすがに思春期を過ぎてから、触れ合うようなことはしていない。

 まゆは愛情に飢えているようなところがあり、幼い頃は特に義兄の涼に依存し甘えていたが、最近では年齢に応じた距離を取りつつあるが、熱の影響だろう。

「よしよし、まゆちゃん」

 希望通り、一緒にベッドに入り抱っこしてやる。

 抱きしめた体は相変わらず小さく細いが、昔と違うのは胸や腰が女らしい曲線を描き、甘ったるい香りがするところだ。

 まゆが女らしくなるにつれ、かわいい妹を不埒な目で見るようになっていた。

 だが、さすがに手を出すわけにはいかないので自重していた。

 いずれどうにかしたいという気持ちはあるが、初心で純粋なまゆだからこそ、慎重になる。

 そこらへんにいる女に手を出すのとは、わけが違う。

 小さい頃から知ってるまゆがどんどんきれいになっていくのを見て、かつてなく心を揺さぶられている。

 ほとんど動揺していると言ってもいい。

 今まで付き合ったのは、後腐れなさそうな年上のあっさりした女ばかりだった。それでも別れ際になると、涼に執着を見せるから、面倒くさくて嫌になる。

 女が涼に夢中になるのは、涼が女に夢中にならないからだと知っている。手に入らないから欲しくなる。

 ただそれだけだった。

 だが、まゆは違う。

 自分が長年大事に守ってきた存在だ。おいそれと手を出せるはずはない。

 幼児の頃はペット感覚でかわいがっていたが、年頃になると意識せざるをえなくなった。

 まゆが実家を出るまでは、兄としての立場を崩さない──。

 そんな決意が、まゆの体温を感じて揺らぐ。

「うーん」

 うなされたまゆの寝巻が乱れ胸元が、はだけて谷間がちらりと見える。

「もっとぎゅっとして」

 怖い夢でも見ているらしい。ぎゅっと抱きしめるとやわらかな胸がつぶれる。

 強く抱きしめてやると、寝ぼけたまゆが、涼のシャツの隙間に手を入れ体に直に触れてきた。

 熱のせいか、うなされたようにうわ言を言い始めた。

「どこも行かないで」

「わかったよ。そばにいるから」

「嘘つき。あの女の人のとこに行くんでしょう」

 その頃、涼には不特定多数の女がいたから、誰を指してるのかわからなかったが、なにかの拍子に知ったのかもしれない。

 嫉妬でもしているのか。そんな素振りを見せたことはないから驚く。

「女なんかいないよ、まゆちゃんのそばにいるよ」

 小さい頃のように、背中を撫でてあやしていると、さらにきつく抱きついてきたまゆと唇が触れあった。

 体中に電気が走ったような衝撃が走る。

「はぁ……」

 こっちの気も知らず、安心しきった顔で眠っているまゆが憎くなる。

 大切だからこそ手を出していないのに、それがどれほどきついことかなんて全く知らないでいる。

 何度か頬や唇にキスをし、涼は体を離した。

「うどん作ったよ。まだ辛い?」

「どこも痛くないんだけど、頭だけぼーっとしちゃって」

 起きてきたまゆに、うどんを食べさせ、医者に処方された薬を飲ませる。普段からどんくさいが、熱だと余計心配になる。

 食後、テレビを見ながら、まゆはうとうとしてまた眠ってしまった。

「こんなところで寝たら悪化するよ」

 抱き起こそうとすると、寝間着がぐっしょり濡れていた。ため息をついて、新しいものを持ってくる。

「とりあえず着替えして。一回お風呂で汗流したほうがいいよ。風邪ぶり返すから」

「ん……」

「起きないなら、着替え僕がやるけどいい?」

 声をかけるが、朦朧として返事がない。涼は蒸しタオルを用意し、まゆの体を拭くことにした。

 寝間着を脱がせ、熱めのタオルで拭いていく。

 昔とは違う膨らんだ胸元や、薄い陰毛の生えたところに目がいく。

 身体を拭いていくと、寝ているまゆの吐息が乱れる。

「……気持ちいいの?」

 返事はないが、丁寧に首筋から二の腕や指先まで拭いてやると、穏やかな吐息が少しずつ荒くなるのがわかった。

「ふっ。あ」

 膨らんだ胸の下から徐々に中心を拭くと声が上がる。だが、起きてはいない。

「もしかして、寝たふりしてるのかな」

 そんなはずはないが、ここまでされて寝ているのはどうかと思う。

 あまりの無防備さに心配を通り越して憤りを感じる。

 胸の先は尖りきって、食べられるのを待っている果実のようだ。ほぐすように拭いてやる。

 臍や脇の下も丁寧に拭いてやると、まゆが夢の中でも感じているのがわかった。

「あッ、はぁ。ん」

 まだ男は知らないはずだが、感度は良さそうだった。

 思い切って両足を開いて、秘部を見ると、割れ目がぱっくりと開いて濡れている。

「ここも拭くよ」

 入口近くの敏感な突起をタオルでこすると、腰を揺らして喘ぎ声が上がる。

「──ごめん、もう我慢できない」

 涼は欲望のままに、まゆの体に覆いかぶさり唇を重ねた。

 首から胸元、敏感な乳首。拭いたばかりの体が涼の唾液でぬかるんでいく。

「まゆちゃん、おっぱい吸うよ」

 手でぎゅっと胸の膨らみを揉み、乳首を舌で押し潰すようにしてから、ぱくりと口に入れた。

 まゆは赤くなって明らかに感じているが、まだ目を閉じたまま、完全に目を覚ますことはない。

「はぁ……もう少し寝ててね」

 起きたら二人の関係は終わるかもしれないが、我慢の限界だった。

 起こさない程度に弱く乳輪のまわりを食む。口に含むと、中心が芯をもって立ち上がる。

 いつのまにか女らしくなった身体を愛でる悦びを噛みしめ、滑らかな肌に触れていく。

 もともときれいな女の子だったが、最近色気まで出てきた。

 保護者のような愛情より男として欲する気持ちのほうが強くなりつつある。

 まゆのすべてが見たい。

 涼は、まゆの両足を開いた。薄い和毛とピンクの花びらが目に入る。慎ましく閉じてはいるが、隙間にうっすら愛液が垂れていた。

「寝てるのに感じたのかな」

 顔を埋め、秘裂についた雫を舌でぺろりと舐める。熟しきっていない果実のような香りがする。

 何度か舌を上下すると、花びらが開いて中が見えた。そこはまだ小さくて男を受け入れるには幼い。

 中に舌を入れると、まゆが太ももを閉じようとした。

「はっ、ぁん」

 寝ているのにしっかり反応している。舌先で花びらをなぞると、ひくひくと動く。

 上にある突起も赤く腫れていた。

 口に含んでしごくと身体がびくんと跳ねる。

 まゆを味わいながら、ベルトを緩めて剛直を自らの手で上下する。

 さすがに寝ているまゆ相手に、最後までするわけにはいかない。

 そういうことは、しっかり意識がある時に記憶に焼き付けたい。

「寝ててもイくのかな」

 クリトリスを舌先で刺激したり唇で挟んだり、吸引したりする。割れ目がどんどん濡れてくるから、音を立てて吸っていると、まゆが目を覚ました。

「え、なに? えっ?」

 とろんとした目で、まゆがこちらを見ていた。

「なんでもないよ」

「ひあっ。なに、してるの」

「夢じゃないかな。熱で変な夢を見てるってことにしよう」

 足の間が尋常じゃなく濡れているのを見て、嬉しくなる。思った以上に感じやすいようだ。

 そこに舌を這わせて、愛しいまゆの恥ずかしいところを間近で見る。穴の中に硬くした舌を差し込んで出し入れしながら、クリトリスを指で刺激してやる。

「お、お兄ちゃ、え」

「まゆちゃんが悪いんだよ。えっちな体で抱きついてくるから。男はまゆちゃんのここを狙ってるから気を付けて」

「ひあっ。おかしい、こんなのっ」

「んー、すっごい溢れてる」

 無視して胸を揉みながら、口淫を続けると、まゆが果てた気配があった。

 半分夢で半分起きているような曖昧な状態だ。

「夢だよ、きっと」

 自分でしごいて、まゆの胸に白濁を撒き散らす。

 絶頂したせいかまゆは意識がまた朦朧としている。

 まゆの身体を再び拭いて、新しい寝間着を着せるとベッドへと移した。


「おはよう」

 翌朝、涼を見るとまゆは気まずそうな顔をした。

「どうした?」

「昨日の夜、私ここで寝ちゃった?」

「いや。夕飯食べたら自分の部屋で寝てたよ。どうかした?」

「ううん……熱のせいで変な夢見て……」

 もじもじとまゆは、下を向く。

 思えば、この日からまゆは涼を「お兄ちゃん」と呼ばなくなった。

「熱が出るといつもは見ないような夢を見るからね。病み上がりだから、今日もゆっくり休むんだよ」

「うん……」

 まゆは、なにか言いたげだったが、なにも言わなかった。昨夜のことは夢か現実かわかりかねているようだった。


 その日、一人暮らしするマンションを探し、すぐに引っ越しを決めた。

 このまま同居していれば、歯止めが効かなくなる日が来るのはわかっていたからだ。

 いずれまゆは自分のものにするつもりだった。

 そのためには兄ではなく、男として見てもらう必要がある。

 だから一度離れることにした。

 好物は最後まで残しておくタイプだ。

 二人の間にもたらされた変化にまゆが気づくには、もう少し時間がかかることになる。