密かに画策するヒヨコ

「今日の訓練は終了だ」

「「「お疲れさまでした!」」」

訓練が終わると、騎士さん達が各々解散していく。

私が話せるようになったことで意思の疎通がしやすくなり、訓練の幅もさらに広がった。騎士さん達の実力が上がっているのも感じるし、もう勇者達なんか楽勝で倒せるんじゃないかな。

そういえば、最近勇者達大人しいな。魔界騎士団のみんなも出動せず、こうして毎日訓練をしてるだけだし。なんでだろ。後で魔王に聞いてみよ。

「ヒヨコ、お疲れ」

「だんちょーさん! おつかれさま!」

「これからどこか行くのか?」

「うん! ちょっとおさんぽにいってくる!」

「元気だな」

まだ散歩する元気があるのか……と、団長さんは苦笑する。

そんな団長さんに手を振り、シュヴァルツを伴って私は散歩に出かけた。


「ぴ……」

「ヒヨコ、お疲れだな」

お散歩から帰ってきて、机の上にべちゃっと潰れた私を魔王は手のひらの上に乗せた。

「随分魔力が減ってるな。散歩ついでに四天王とでも戦ってきたのか? ……いや、それは世話係が止めるか」

「ぴ……」

寝ころんだままコクリと頷く。

「……ふむ、じゃあお疲れのヒヨコには我がマッサージをしてやろう」

そう言って魔王は指先で私の背中を揉み始めた。ついでに魔力を流し込んで補給をしてくれる。

ぴぃ~、ごくらく。

気持ちよさそうに全身の力を抜いた私に魔王は気をよくしたようで、さらに揉み解してくれる。今の私はただの脱力ひよこだ。

「そうだまおう、ヒヨコききたいことあるよ」

「なんだ」

「さいきんゆうしゃはなにしてるの? だんちょうさんたちひまそうだけど」

昼間に疑問に思ったことを魔王に聞いてみる。

「結構今更な質問だな。勇者は今までと変わらず我らと戦っているぞ」

「そうなの? でもだんちょうさんたち、ひまそうだよ?」

「それはそうだろう。聖女のいない勇者パーティーなど、騎士団長がわざわざ出向いて相手をするまでもない」

おお……ヒヨコ、とっても評価されてる……。

「というか、まかい魔界じんかい人界はどうしてたたかってるの?」

これこそ本当に今さらな質問だけど、せっかくの機会なので聞いてみた。

私の生まれる前から魔界と人界は戦ってたし、私は神殿から強制的に派遣されてたから戦うようになった理由は知らないんだよね。

「ふむ、少し長い話になるが大丈夫か?」

「いーよ!」

途中で寝ないようにがんばろう。

「ヒヨコの疑問に端的に答えるとすれば、我らが人界に侵攻しているのは、奪われたものを取り返したいだけだからだ」

「うばわれた……?」

そんな話、聞いたことない。

「ヒヨコは聞いたことないだろう。都合の悪いことは国民には隠すものだからな。我らが奪われたのは、我らが神の核だ。それを聖神に奪われた」

!?

核っていうのは神様の力の源だ。それがなければ神様は力を行使できない。

「でも、なんでかくをうばったの? いっこもってればじゅうぶんじゃない?」

「普通はそうなんだがな。聖神にとって一つでは十分じゃなくなる事態が発生したんだ。何か分かるか?」

「ん~?」

わかんない。

お手上げというように、私はばんざいをして仰向けにコロンと寝転がった。別に眠かったからじゃないよ。

「──聖神が、人間の男に恋をしたんだ」

「ぴ?」

こい……恋? 急にふわふわした単語が出てきたからヒヨコびっくりしちゃったよ。

「にんげんにこいをしたら、どうしてかくがひつようになるの?」

「聖神は愚かなことに人間になろうとしたんだ。人間になるには、聖神だけの力ではどうしたって足りない。それに、人間の神が空席になるから次代の神を作る必要があったんだ」

「へ~」

「まあ、当然のように我らが神、デュセルバート様は反対した」

邪神の名前ってでゅせるばーと様っていうんだ。

あ、違うところに気を取られちゃった。

「愚かな聖神はさらなる愚行を犯した。デュセルバート様を騙し、核を奪ったのだ。核を失ったデュセルバート様は僅かな意識だけを残し休眠についた。それで、我ら魔族は核を取り戻すために人界に攻め入るようになったんだ。核は人界の中心、神殿にあるはずだからな」

魔王はさらに語りを続けた。

「我らから核を守るため、聖神の力の一部を分け与えられたのが勇者だ。つまり勇者は聖神の便利な駒というわけだ」

「なんと」

新事実ばっかりでヒヨコの頭はパンクしそうだよ。

……ん? あれ? でも、勇者って、これまで何回か代替わりしてるよね……?

「まおー、せいじんがこいしたおとこのひとって……」

「ああ、もう寿命で死んでる。が、また聖神がやらかしてくれた」

「……まだなんかしたの?」

ほんとに神様なのかな。今までほんの少しでもそんな神様を信仰してたのが恥ずかしいよ。明日この話をシュヴァルツにもしてあげよ。この気持ちを共有したい。

「男は確かに寿命で死んだ。だが、こともあろうに聖神はデュセルバート様の核を使ってその男を生き返らせようとしたのだ」

「そんなことできるの?」

「できない。聖神は男に無理矢理核を取り込ませたが、死んで魂を失った男の体をそのままに保つだけになった」

「わお……」

聖神って、なんかズレてるね。とんでもない世間知らずの香りがプンプンするよ。

「そのおとこのひとがしんじゃうまえに、さっさとにんげんになっちゃえばよかったのに」

「次代の神がいなければ人間になることはできない。だが、新たな神を数年やそこらの短い期間で創ることなど、もちろんできはしない。神を創り出してから、その神が世界を管理できるほどに成長するまで少なくとも百年はかかるしな」

「それもそっか」

新しい神様がほいほい生まれてきちゃうと、それはそれで問題かもね。ありがたみもないし。

「まあそんな感じで、デュセルバート様の核は男の体と共に人界の神殿に保管されてるから、俺達はそれを返してほしいだけなんだ」

「そうだったんだ」

これ、一方的に人間……というか聖神が悪いよね? 神託があったら人間は従っちゃうし。

──ふぅ、初めて知る新事実が多すぎてヒヨコの頭はパンクしそうだよ。

もう人界の神の方が邪神で、魔界の神が聖神なんじゃないかな? というレベルで聖神がやらかしてた。それはもう、擁護できないレベルで。擁護する気もないけど。

そんなこんなで、ヒヨコは久々にいろんなことを考えた。

どうやら、ヒヨコは脳味噌まで子ども返りしちゃってたらしい。頭にいろんな知識を一気に詰め込んだ結果、次の日に知恵熱を出した。

「ぴゅぃ……」

籠の中に仰向けに横たわる。

あつい……。

そして、魔王はといえば、私の入った籠を持ってあたふたとしていた。

「子ども……ひよこが熱を出したらどうすればいいんだ? 医者を呼べばよいのか? 死なぬか? あ、ヒヨコにはフェニックスの加護があったな」

とってもあたふたしてる。いつもの魔王とは大違いだ。

魔王の呼び出しに応えてゼビスさんとシュヴァルツがやってきた。

「──知恵熱……ヒヨコは本当に赤ちゃんだったんですね」

「知恵熱を出すひよこって初めて見ました」

魔王とは打って変わって二人は冷静だった。そうだよね、ゼビスさんは孫もいるし。シュヴァルツだって神官時代に子どもと触れ合う機会はそこそこあっただろうし。

自分よりも慌てている人がいると、逆に冷静になるあの現象かもしれないけど。

「知恵熱っぽいですから、安静にして寝かせておくのが一番でしょうね。無理矢理熱を下げても知恵熱では意味ないですし」

「すぐに元気になるから大丈夫ですよ」

「そうか」

魔王はホッと胸をなでおろした。

籠を持ったままお仕事に行こうとした魔王だけど、それはゼビスさんに止められて諦めていた。後ろ髪を引かれつつも仕事に向かう魔王を見送り、私は振っていた右翼を下ろした。

魔王は仕事に行ったけど、シュヴァルツはいつも通り、私の面倒をみるためにこの場に残ってくれた。

「寝られますか?」

「ん~」

あんまり眠くない。というか、まだ寝る気分じゃない。

「眠くなさそうですね」

「うん」

シュヴァルツが私の頭を撫でる。

「わ、本当にいつもより熱いですね。にしても、ヒヨコは何でこんな熱なんか出しちゃったんですか?」

シュヴァルツは純粋に疑問に思ったようだ。

喉も痛くないし、眠くもないので魔王に聞いたことをシュヴァルツに話してあげた。

「……」

衝撃の事実に言葉も出ないシュヴァルツ。

「だいじょうぶ? おねつでちゃった?」

「いえ、私は大人なのでお熱は出しません」

熱は出さないまでもショックは大きそうだ。シュヴァルツってば一応聖神の信者代表である神官だったわけだし。

「シュヴァルツもきょうはおやすみにする?」

「いえ、大丈夫ですよ。そんな恋に浮かされた自己中女みたいなやつを今まで信仰していたのかと思うと、気が遠くなっただけですから」

「けっこういうね」

確かにショックは受けてそうだけど吹っ切れてそうでなにより。シュヴァルツも立派な魔界人だね!

「でも、ヒヨコはこの話は初めて聞いたんですか?」

「ぴ? あ、うん」

「へぇ、まあまだ赤ちゃんですもんね」

そういえばシュヴァルツには私が元聖女ってことは内緒にしてたんだった。危ない危ない。うっかりあんな神なんか信じるんじゃなかったとか言っちゃいそうになったよ。せっかくお城で働いてるみんなにも協力してもらって、私が元聖女ってことはシュヴァルツには秘密にしてるのに。

これ以上お話ししてたら何かしらボロが出ちゃいそうだ。

「アー、ヒヨコナンカ、ネムクナッテキタカモー」

「何で棒読みなんですか」

そう言いつつも、シュヴァルツは私が寝やすいように支度を整えてくれた。できる子だね。

ふわふわの腹毛の上にシュヴァルツが毛布を掛けてくれる。

「おやすみなさい」

「ぴ~」

ほんとは全然眠くなかったのに、すらっとした人差し指でお腹をポンポンされたら睡魔は全力ダッシュでやってきた。そんなに急がなくてもいいのに……。

そして、すぴょすぴょと何時間か寝ているうちに、熱はすっかり下がっていた。


「──ヒヨコ、元気になってよかった」

「ぴ」

お昼休憩で帰ってきた魔王に熱が下がったことを伝えると、熱烈なハグをいただいた。心配してくれてたんだね。

「ヒヨコはげんき元気になったので、にっか日課のおさんぽ散歩にいきたいとおもいます」

「ダメだ」

「ぴ!?

お散歩に行こうと思ったら、魔王に即行で却下された。

なんで?

このやり取りを横で聞いていたシュヴァルツは「バカだなぁこのひよこ」って顔してるし。解せないよ!

「病み上がりなんだから大人しくしろ。今日は城から出るのは禁止だ。騎士団の訓練に参加することも禁ずる」

「……はぁい」

私はしぶしぶ返事をする。しょうがない、保護者がそう言うんだから。お散歩行くと結構疲れちゃうしね。

「じゃあヒヨコ、きょうはなにをすればいいの? おへやでシュヴァルツとくみて組手?」

「やめてください脳筋ひよこ。私を殺す気ですか」

「大人しく寝るって選択肢はないのか……」

今度は二人から同時に呆れた眼差しを向けられた。

「寝てなくてもいいから、今日は大人しく部屋でできることをしていろ」

「う~ん、そんなのあるかなぁ」

ヒヨコ、あうとどあ派なんだけど。

困った、このままだと午後まるまる暇になっちゃう。

何をするか考えていると、シュヴァルツがいいことを思いついた、というようにポンと手を叩いた。

「──あ、そうだ、お茶を淹れる練習なんてどうですか?」

「おちゃ?」

「はい、魔王様にひよこ用の家をもらった時、お茶会に招待してくれるって話をしたでしょう? そのお茶を淹れる練習をしたらどうですか? ついでにお菓子も食べちゃいましょう」

「れんしゅう! する!」

なんて名案! こんないい案がシュヴァルツから出るとは思わなかったよ!

「ん? なんだか今バカにされた気が……」

「きのせいだよ」

ヒヨコ、別にバカにしてない。

「かえってきたらおいしいおちゃいれてあげる!」と言って魔王を午後の仕事に送り出し、私達は早速作業に取り掛かった。

ヒヨコは魔王にもらったひよこサイズのキッチンで、シュヴァルツは魔王の部屋に併設されている人サイズのキッチンでそれぞれお茶を淹れる。

ふむふむ、ちゃんとカップをあっためておかないといけないんだね。

魔王がくれた私専用のキッチンは、ひよこの手でも作業しやすいように細々とした工夫がされている。気遣いがさすがすぎるね。それで足りないところは魔法で補うだけだ。

お湯を沸かしながらお茶の淹れ方が書いてある本を読んでいると、ガッシャーン!! と大きな音が響き渡った。

「……シュヴァルツ?」

「すみません。手が滑りました」

そういえばシュヴァルツは不器用さんだったね。

「シュヴァルツのぶんも、ヒヨコがいれてあげるね」

「あ、ありがとうございます」

「いえいえ」

物は大事にしなきゃだもん。この辺にある茶器高そうだし。


そして、ちょっとしたハプニングはあったものの、どうにか無事にお茶を淹れることができた。

「シュヴァルツ、おちゃはいったよ」

「ありがとうございます。お茶請けに手作りクッキーも持ってきましたよ」

「だれのてづくり?」

「もちろん料理長の」

「だよね」

一安心だ。シュヴァルツの手作りのお菓子とか、正直何が入ってるか分かんないし、本人の怪我が心配だからあんまりやらないでほしい。

料理長のクッキーはとってもおいしくて、紅茶との相性も抜群だった。お茶会の時も料理長に作ってもらおう。

それから何度かお茶を淹れ、ようやく納得のいく味に仕上げることができた。

ヒヨコは天才かもしれない。


「さっそくおちゃかいお茶会をひらこうとおもいます」

「いいですね。いつにしますか?」

「そのまえにしょうたいじょう招待状をかいて、みんなのつごうのいいときをきこうとおもう」

「おお、意外ですね。招待状なんて知ってたんですか」

「もちろんだよ!」

自分で出したことはないけど。

「しょうたいじょうのかみちょーだい?」

「すぐに用意しますね。内容は自分で書きますか? 私の代筆もできますけど」

「シュヴァルツ、もじかけるの?」

「ヒヨコの中で私はどれだけ低スペックなんですか。文字くらいかけますよ。インク瓶はよく倒しますけど」

「だよね」

シュヴァルツがインク瓶を倒してる様子が容易に思い浮かぶ。しかも中身がたっぷりある時に限って倒しそうだ。

「でもヒヨコが招待状を書いた方がみなさん喜びそうですね。まずは自分で挑戦してみますか?」

「うん」

こう見えても私は一回フェニックスにお手紙を書いたことがあるのだ。招待状だって書けるはず。だって私はできるひよこだもの。

そして、シュヴァルツが持ってきてくれた招待状用の紙に向き合う。

「ぴ!」

ふんぬと気合を入れるために一鳴きした。そして黒いインクが入った瓶にジャボッと片足を突っ込む。

え゛

「ぴ!」

シュヴァルツから変な声が出たのも気にせず、紙にインクの付いた足を走らせる。

──よし、一枚目終わりだ。

「シュヴァルツふうとうにいれて~」

「……分かりました。えっと、これは誰宛てですか?」

「まおーだよ」

見れば分かるのにどうして聞くんだろう、と私は首を傾げる。

「……なるほど」

「なるほど?」

「いえ、なんでもありません」

微妙な顔をしたシュヴァルツは大人しく招待状を封筒に入れてくれた。

そして封をしようとする──

「なにそれ!」

「シーリングスタンプですよ」

シュヴァルツが赤い蝋を溶かし始めたのが気になって、ズイっと近付いた。

「これを紙に垂らして、その上から模様の入ったスタンプを押すんですよ」

「へ~、そうやってたんだぁ」

聖女時代に何回かもらったことはあったけど、こうやって封をしてるとは知らなかった。

私の呟きにシュヴァルツが反応する。

「ヒヨコは、シーリングスタンプを使った招待状か何かをもらったことがあるんですか?」

「え!? ううん、みたことがあるだけだよ!!

「そうですか」

よしよし、勢いで誤魔化せたようだ。

「うん! ねえそれ、ヒヨコもやってみたい!」

かっこいいし、とってもおしゃれだ。何よりぽんってやるのが楽しそう。

「危ないからダメです。火も使いますし、そのふわふわの羽に蝋が付きそうなので」

「ぷぅ!」

頬を膨らませて不服さをアピールする。

「そんなかわいい顔してもダメです。ほら、さっさと次の招待状を書いてください」

「は~い」

しょうがない。人型になれた時にやらせてもらおう。シーリングスタンプはその時までのお楽しみだ。

聞き分けのいいヒヨコはその後、黙々と足を動かし、招待状を完成させた。

◇◆◇

陛下にヒヨコが書いた招待状を手渡す。そしてその中身を確認すると、陛下は首を傾げた。

「これは……なんて書いてあるんだ?」

「ヒヨコに確認したところ、『いっしゅうかんごにおちゃかいをひらくから、よていがなかったらきてください』と書いたそうです」

「そなた有能だな。どうせ他の者も読めないだろうから、招待状を渡すついでに内容を伝えてきてくれぬか? 折角招待状まで書いたのに誰も来ないのではヒヨコが可哀想だからな」

「承知しました」

陛下に言われずとも、はなからそのつもりだった。ひよこの足文字なんて誰が読めるんだって話ですからね。

にしても、魔王陛下は本当にヒヨコをかわいがっているようですね。あんなに恐ろしかった魔王が、もはやただの親バカに見えます。

人界にいた頃に抱いていた魔王のイメージと実物との温度差で風邪をひきそうだ。

◇◆◇

そして、ついにお茶会当日になった。

天気は快晴だし、招待していたみんなも来てくれてヒヨコは嬉しい! ぴっぴぴっぴと小躍りしちゃう。

お茶会はお庭で開くことにしたので、雨が降らなくて本当によかった。

私の淹れたお茶をゆっくりと味わっている魔王は、もちろん一番乗りで来てくれた。さすが保護者様。

魔王の他にも団長さんや三つ子、ゼビスさんとオルビスさんに料理長のおじちゃんまで勢揃いだ。よくみんなのスケジュール合ったよね。

仲の悪いゼビスさんとオルビスさんを同じ席に呼ぶのはどうなのかと思ったけど、今日は二人とも喧嘩するのは我慢してくれるらしい、その代わり離れて座ってるけど。

この二人にはいつか仲直りしてほしいなぁ。

「ヒヨコ、そなたも食べろ」

「ぴっ」

私が全然食べてないと思ったのか、魔王が私の口にクッキーを放り込んだ。サクサクしておいしい。

なんと、今回は料理長のおじちゃんがひよこサイズの小っちゃいクッキーを作ってくれたのだ。人間サイズのクッキーだと嘴に入りきらなくてボロボロこぼしちゃうからね。

「ヒヨコ、このお茶おいしいです」

「えへへ、ありがとうゼビスさん」

ゼビスさんの言葉を皮切りに、他のみんなも口々に私のことを褒めてくれた。


そして、第一回ヒヨコのお茶会は無事に幕を閉じた。

みんな「ヒヨコがこんなことまでできるようになるなんて……」って感動してたけど、ヒヨコってばちょっと前まで立派に人間やってたからね? 最近、みんなヒヨコのことを生まれたてって勘違いしてない? って思うことがよくある。このかわいすぎるひよこフォルムが原因だとは思うんだけどね。

でも、ただ紅茶をふるまっただけでみんながあんなに喜んでくれるとは思わなかった。心なしかみんな、お茶会の前よりも元気になってた気もするし──

「!」

そこで、ぴこん! とアイデアが舞い降りてくる。

ヒヨコってば、いいこと思いついた!