決戦の時は来た。

 大気が脈動し、かいじゃヨルムンガルドの封印が破られる寸前、シズルたちはホムラの指示のもとで一ヵ所に集められる。

「いいかシズル。お前たちは封印が解けると同時に、一気にあそこまで駆け抜けろ」

「はい」

 世界蛇ヨルムンガルドを倒せるのは神の力を持った者──すなわちシズルのみ。

 そんな彼をサポートするべく、大精霊の力を持ったルキナとイリスがそばにつく。

 今回の決戦では、この三人を無事に世界蛇ヨルムンガルドのもとへと送り届けることこそが重要となる。

 そして、そんな彼らを送り届けるため、五千を超える兵士たちがシズルたちの前に集まっていた。

「テメェらや俺らは、こいつらがあの化け物を倒すまでの間の露払いだ! いいな!」

「「「おおお!!」」」

 ホムラの呼びかけに応える兵士たちのたけびによって大地が揺れる。その魂のほうこうはとても力強く、頼もしいものだ。

「すごいね」

「はい……」

「うん……」

 シズルたちと違い、彼らは普通の人間だ。

 この場にいる兵士たちはこの場が己の死地であることを理解しながら、それでも生まれた故郷を、家族を守るために残り続けた。

 その心の強さに、シズルたちは思わず気持ちが高揚する。

「失敗はできないな」

 今回の作戦の成否はどうあがいても自分の肩にかかっている。

 シズルは自分だけではない、この故郷の命すべてを背負っていると思うと、そのプレッシャーに押しつぶされそうだ。

 だが──。

「大丈夫です」

 そんな弱気になった自分を隣で支えてくれる人がいる。

『シズルは、私が守るよ』

 やさしい風で守ろうとしてくれる人がいる。

「うん……そうだね」

 かつては守られる側だった。だが今の二人は強く成長し、こうして自分を守る側になっている。

 それはなんと、心強いことだろうか。

 二人の気持ちを受け取ったシズルは、大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐く。それですべての恐怖はなくなった。

「よし、行こうか二人とも!」

「はい!」

『うん!』

 同時に、巨大になった闇の球体にひびが入る。

 最初はほんの少しの亀裂。

 しかしそれは徐々に大きくなっていき、天を割るほどのまがまがしい魔力をあふれさせながら、すさまじいごうおんとともに破壊され──。

「……あれが」

 シズルがこの世界に生まれたときに現れた黒龍ディグゼリア。

 ドラゴン、と呼ぶ以外にないような存在だった。

 漫画やゲームの世界でしかお目にかかれないほど大きく、恐ろしく、人の手になど負えるはずのない化け物だと思ったものだ。

 だがしかし、今目の前に現れたそれと比べると──そんな黒龍が生まれたてのひなと言われてもおかしくない。

 闇の球体から生まれた存在は、それほど巨大な蛇だった。

「でっけぇなぁおい! だがこちとら最初からそんなもん想定済みなんだよ! 行くぞ、テメェらァァァァァ!! 俺に続きやがれェェェ!!

「「「おおおぉぉぉぉぉ!!」」」

 一気に駆け出すホムラたちに、世界蛇ヨルムンガルドは地をうアリ程度の認識を持っているのか、ゆらりと揺れた身体からなにかが落ちる。

 それが蛇のうろこだということに気づいた者はほとんどいない。

 なぜならその鱗が地面に落ちた瞬間、ドロリと地面が黒く溶け、そこから影の魔物が生み出されていったから。

 鱗はまるで雨のようにどんどんと空から降り注ぎ、その度に魔物たちは増えていく。

 その魔物たちの視線は、フォルブレイズ軍をにらんでいた。

「へ、情報通りじゃねえか! 今更そんなもんでひるむと思うなよオラァァァ!」

 世界蛇ヨルムンガルドの身体の大きさから考えれば、ほぼ無限に溢れ出てくるであろう影の魔物の群れ。

 それに対してホムラはたったひと振り、巨大な炎の翼と化した剣を振るう。

 激しい炎は美しく、影の魔物を燃やし尽くしながら道を作る。

 その道を追うように、新緑色の竜巻が一気に魔物たちを吹き飛ばした。

 火柱と疾風が作った道の上には影は入れない。

「行きやがれ勇敢なるフォルブレイズの戦士ども! 俺たちの前に出てきたこと、後悔させてやれぇぇぇ!」

「「「おおおおお!!」」」

 作り上げたその道をさらに広げるべく、フォルブレイズ軍の兵士たちが突撃する。

 もはやシズルたちの進むべき道の先に、影の魔物が入り込むすきはどこにもなかった。

「これで道ができたぜ! 行けシズル!」

「っ──! 行きます!」

 雷龍化ヴリトラ・フォームとなったシズルは、自身の背に黄金色の翼を広げる。

 そうして傍にいたルキナとイリスの二人を抱きかかえると、その出来上がった道を一気に駆け抜けていった。

『ヴォォォォ

 はるか天空でこちらを見下ろしてくるヨルムンガルドの口が大きく開いた。

 あまりの魔力の高まりに空がきしみ、大地が悲鳴を上げる。

 上空に集まる魔力の奔流は、これまで見てきたどんな敵よりも激しい憎悪に塗り潰されていて──。

「──っ、ヤバイ!?

 ヨルムンガルドから放たれるのは、無色のせんこう

 たった一撃で万の軍すら壊滅させてしまいかねない威力を秘めているそれを──。

『風よ、みんなを守って!』

 突如生み出された風のシールドが閃光を押しとどめる。

 激しい破壊音と、城壁すら軋ませる暴風の嵐が辺り一帯を覆い尽くした。

 だが不思議と、大地で戦っているフォルブレイズの兵士たちにはなんの影響も与えていない。

 風に愛された少女が今、その優しさですべてを守っていたから。

『く、ぅ、ぅぅぅ!』

「イリス!?

『大、丈夫……私がみんなを守るから、だからシズルはまだ力を温存しておいて!』

 閃光の威力が上がる。まるで何千年も昔に己を封印した憎き敵を見つけたのだと、憎悪を増幅させていくようだ。

 だがそれでも、優しき風の守りはわずかなの光さえも通さない。

『はぁ、はぁ、はぁ……』

「すごいです……」

「へぇ、やるじゃない」

 力尽きたのか、それともこれ以上はらちが明かないと思ったのか、ヨルムンガルドが攻撃をやめる。

 イリスの執念が、この大魔獣に勝ったのだ。

「今だ!」

 雷龍化ヴリトラ・フォームのシズルは二人を抱きしめる力をさらに強くすると、一気に前へと進む。

 まだ距離があるとはいえ、凄まじい速度で後ろの兵士たちを引き離し、空へ空へと飛び上がった。

 世界蛇ヨルムンガルドが再び閃光を放つ。

「予備動作さえわかってれば!」

 すでにシズルたちの背後には兵士も街もない。

 守るべきものがなければ無理に破壊光線を受ける必要もなく、今のシズルなら大きくかいすることで十分かわすことができる。

「っ──!?

 背後で火山が噴火したような、激しい轟音が響きわたった。

 ほとんどノータイムで放たれる馬鹿げた威力の攻撃にぞっとするが、それを見るために背を向ける必要はない。

 ただ、それだけの攻撃を一人で受け止めた、この小さな少女を心の中で賞賛する。

「シズル様、次が来ます!」

 ルキナの声に、シズルはさらにスピードを上げた。

 近づかれることを嫌うように、次々と放たれる光線を躱しながらチャンスをうかがうと、不意にヨルムンガルドの動きが止まる。

「なんだ?」

 近づける、と思うよりも危険と思う気持ちの方が強く、様子を窺ってしまう。

 その瞬間、凄まじい魔力がヨルムンガルドに集まっていき──。

「これは、ヤバイ!?

 シズルがそう思ってその場から離脱しようとするより早く、憎き敵を滅ぼそうと閃光をぎ払うように放ってきた。

 直線的な動きではないそれは躱すことは難しく──。

「ルージュ! お願い!」

「わかってるわよ」

 目の前が一瞬だけ暗くなったかと思うと、シズルたちは先ほどいた位置からだいぶ離れた場所にいた。

「これは、ルージュ?」

ほうけてる暇なんてないでしょ! さっさと動く!」

「う、うん!」

 影から影へ、満月でないため長距離転移はできないが、それでも闇はルージュのためにある。

 彼女の魔術によってヨルムンガルドの真下に移動したシズルは、そのまま一気に急上昇し、その正面までやってきた。

「ようやくここまで来た」

 超巨大生物の前に立つと、そのぜんぼうが全く見えない。

 だが、世界中すべてのおんねんを身にまとっているような禍々しさはすぐにわかった。

「……」

『……』

 シズルたちは数千年の時を超えて復活した大魔獣とたいし、その強大な力を感じることになる。

 神々でさえ封印することでしか対処できなかった圧倒的な存在感。

 ヨルムンガルドを見た瞬間、シズルの心臓が激しく音を立て始めた。

 それはきっと、シズルではなく自身の力の大本になる、雷神様が宿敵を前にしたときの高揚だろう。

 ただ、ヨルムンガルドは憎しみの塊のように存在しているが、どこか物静かな様子でじっとシズルたちを見つめてくる。

「シズル様……?」

「大丈夫」

 吸い込まれそうなほど純粋な瞳。

 まるで世界を破壊するためだけに生まれてきた兵器のようなたたずまい。

 シズルはずっと、勘違いをしていた。

 この世界蛇ヨルムンガルドは『悪』なのだと思い込んでいたのだ。

 だがこうして対峙してみてわかる。

 これは『世界を壊すためだけに生まれた』存在であり、善とか悪とか、そういったものとは無縁なのだ。

『シズル、どうしたの?』

 急に動きを止めたシズルに、ルキナとイリスが不思議そうな顔をする。

 だが今はただ、この蛇をまっすぐ見ていたかった。

 そうして『ヨルムンガルドを滅ぼすために生まれた』存在である自分とこの世界蛇を重ね合わせる。

 ヨルムンガルドもまた、シズルを自身の宿敵だと理解しているのか、ただじっとその瞳を合わせるだけだ。

「……違うよね」

 なんとなく、シズルはヨルムンガルドに語りかける。

 自分たちがこの世界に生まれたのは、そんな理由のためだけじゃないはずだ。

 見ていてわかった。

 この蛇には知性があるし、ただ破壊をとするだけの化け物ではない。

 だがそれでも──。

「シズル様! 次が来ます!」

 ヨルムンガルドは一瞬すべてを諦めたような表情を浮かべると、巨大な口を広げて魔力をかき集める。

 その力は今までとは比べ物にならないほど大きい。

『これは……私の力でも守りきれない!?

「ちぃ──アンタ、なにぼさっとしてんのよ!?

 イリス、そしてルージュが焦ったように声を上げる。

「シズル様……?」

「大丈夫……だって俺の……俺たちの力は世界最強だから!」

 シズルが天に叫んだ瞬間、辺り一帯に激しい落雷が発生する。

 それはまるで、天空の支配者を歓迎する豪雨のように激しく、神が怒り世界を滅ぼそうとしているがごとく。

『ヴォォォォォォォォォ!!

 世界蛇ヨルムンガルドの咆哮とともに凄まじい閃光が迫る。

 王都ですら一撃で吹き飛ばしてしまいそうなその破壊光線を前にして、シズルは両手を前に突き出した。

「そうだよね……ヴリトラァァァァ!」

「もちろんだとも! 我こそは破壊をつかさどる雷神トールの子にして世界最強の雷龍精霊ヴリトラ! たとえどれほどの破壊の力であっても、そのすべてを打ち砕く!」

 叫びに呼応するように現れたのは、小さな黄金色の龍。

 シズルと同じように両手を前に突き出したまま、凄まじいエネルギーを持った雷を解き放つ。

 そして、白の閃光と黄金の雷がぶつかり合った。

「「おおおぉぉぉぉぉぉぉ」」

『ヴォォォォォォォォォ!!

 世界をらう力と、すべてを破壊する力。

 その二つがきっこうし、お互いを喰らい壊そうと絡み合い、そしてお互いの力に耐えられなくなった光は世界を包み込みながらも消滅する。

『ヴォォォォォォォォ!!

 世界蛇ヨルムンガルドが力強く叫ぶ。

 再び魔力を集め、今度こそすべてを破壊しようとしているのだろう。

 だが──。

「悪いけど、これ以上好き勝手はさせないわ。我が名はルージュ! すべてを見通す戦神オーディンの子にして世界の闇を司る大精霊!」

 世界を喰らう者の前に闇の女王が立ちふさがる。

 かつてただ面白いからと、それだけで世界のすべてを敵に回し続けた大精霊は、空に浮かぶ欠けた月を見上げながら薄く笑う。

「だけど今はそんな肩書どうでもいい。今の私は世界でただ一人の友人がつないだ未来を見守るだけ。そのために、アンタは邪魔なのよ世界蛇……だからここで大人しく消えなさい! 貪り食う闇色の紐グレイプニル!」

 彼女がまるでオーケストラの指揮者のように指を振るうと、八本の闇色をした細い紐が世界蛇ヨルムンガルドに迫る。

『っ──!? ヴォォォォォォォォ!』

 細く簡単に千切れそうなそれは、複雑に絡み合いながらもヨルムンガルドの動きを拘束していく。

 うっとうしいと暴れる巨体が徐々に小さく押し込まれ、いらちの声を上げ始めた。

 だがそれでも闇の紐は切れることなくヨルムンガルドの動きを止め──。

「ほら、この私がお膳立てをしてあげたんだから、しっかり決めなさいよ」

「うん。ヴリトラ!」

「おうとも!」

 暴れるヨルムンガルドを見ながらシズルが己の相棒に声をかけると、凄まじい力が溢れ始める。

「ぐ、ぐぐぐ……」

 それを無理やり制御しようとするのだから、シズルの体内では雷が暴れるがごとくになり、激しい激痛が襲いかかってきた。

 かつてのフォルセティア大森林での戦いのときとは比べ物にならない激しさに、思わず歯を食いしばり身体に力が入る。

 雷の大精霊ヴリトラの力をすべて受け継ぎ、あのときよりもずっと強く成長した『未来の自分』でさえ抑えきれないほどの力の奔流。

 ──足りない。この程度じゃ、まだあいつを討ち滅ぼせない!!

 すでに限界をはるかに超えている力をさらに引き出そうと、シズルは両手を天に上げようとして──。

『我が名はイリス……平和を愛する優しき風神フォルセティの子である風の大精霊ディアドラの娘』

「……ぁ?」

『私の故郷を、家族、未来を守ってくれたシズル・フォルブレイズにすべてをささげます。だからお母さん、力を貸して……』

 ──もちろん。

『「すべてを守る優しき風の籠手ヤルングレイプ」』

 二人の声が空に響いた瞬間、優しい風がシズルの身体を守るように辺りを流れる。

「イリス……」

「私が守るから。お母さんと一緒に、シズルの前に立ちはだかるすべての痛みは全部吹き飛ばすよ」

 シズルの左側に立ったイリスはそう言うと、微笑ほほえみながらその小さな手でシズルの身体を支える。

 たったそれだけで、これまで感じていた苦痛のすべてが吹き飛んでしまった。

「これなら……」

 限界だと思っていた。これ以上の力は引き出せないと思っていた。

 だがこの風に包まれた瞬間、今とは比べ物にならないほどの高みを目指せるのだと確信した。

「ハアァァァァァ!」

 極限まで高められた魔力の雷。それは際限を知らないかのように大きくなっていき、天すら突き抜く巨大な光の柱となる。

 イリスに守られた今のシズルなら、無限に力を出せると、そう確信して──。

「っ──!?

 だがそれは生み出すことができるだけ。圧倒的な力の奔流はコントロールを失い、限界などないように膨れ上がっていく。

 このままいけばヨルムンガルドを倒すだけの力も出せるだろう。だがしかし、それと同時に辺り一帯をすべて吹き飛ばしてしまいかねない。

「シズルよ! 集中しろ!」

「わかってる! わかってる、けど……!?

 シズルの力に誘われるように空から連続して落ちる雷が激しさを増していく。

 人知を超えた魔力が空を覆い、超巨大な魔法陣となってヨルムンガルドの真上に広がっていた。

 あとは解き放つだけなのだが──。

『ヴォォォォォォォォォ!!

 自身すら消し飛ばしかねない力を前にヨルムンガルドがこれまで以上に力強く暴れだす。

「くっ! この……! いつまでももたないわよ!」

 ルージュが必死に抑えつけるが、このままでは時間の問題だろう。

 それでも早くやれと言わないのは、ルージュも今の状況を正確に理解できているから。

 今、シズルは選択を迫られていた。

 一つはこのまま魔力を解き放つこと。

 ただしこれをすれば、シズルやイリスたちはともかく、地上で戦っているホムラたちフォルブレイズ軍はすべて吹き飛んでしまう。

 それどころかその激しい雷は広大な大地すら吹き飛ばし、どこまで被害が出るかわかったものではなかった。

 一か八か、全力で解き放ったのちに制御ができれば全員無事だろうが、それをするにはあまりにも分の悪い賭けだ。

「そんな賭け、できるはずが……」

「シズル様……貴方あなたおもい、私にも背負わせてください」

 そっと、ルキナがイリスとは反対側の隣に来て、シズルの身体を支えるように抱きつく。

「私は『過去』にこの世界に絶望していました。そんな私の未来を貴方が希望の光に変えてくれたのです」

 彼女の身体が薄い闇色に光る。それはルージュとは違うルキナ本人の魔力で、とても優しく温かいものだった。

「シズル様のおかげで私は前を向けました。貴方の雷が、その心が暗く先の見えない道を明るく照らしてくれた」

「ルキナ、それは何度も言うけど君がずっと頑張ってきたからだよ」

 そう言うとルキナは首を横に振る。

「私一人だったらいつまでも、この『今』にたどり着けませんでした。私は、貴方との『未来』を一緒に歩みたい。だから……一緒にこの世界を守りましょう」

「うん」

「『未来を切り開く雷を守る闇の力帯メギンギョルズ』」

 瞬間、光り輝く雷の柱を覆うように、柔らかい闇色の帯が伸びていく。

 それは今ヨルムンガルドを拘束している『貪り食う闇色の紐グレイプニル』とは真逆。

 激しく暴れる雷のエネルギーを優しく包み込み、混ざり合い、そして力を増しながらも制御が可能となった。

「ありがとうルキナ、イリス……」

「はい」

『うん』

 シズルを支えてくれる二人に軽く微笑み、そして正面で暴れる世界蛇ヨルムンガルドをまっすぐ見つめる。

 世界を喰らい尽くす怪物は、世界中から集めた憎悪を身に纏いながらも、その瞳だけは純粋に透き通っていた。

「ヨルムンガルド──神々の作った世界を喰らう者」

 シズルはどうしてもこの存在と自分を重ね合わせてしまう。

 世界を喰らうために生み出された存在と、それを滅ぼすために生み出された存在。

「まあでも、同情はしないよ」

 シズルが天に向かって伸ばし続けた雷の柱は、キラキラと霧散していく。

 それは風に乗ってヨルムンガルドの周囲を舞い、幻想的な世界を作り出していた。


 かつてこの世界には神々が地上を支配していた時代があった。