リーシェル公国での調査を終え、二日かけてオズワルド王国に帰還した。

 それから数日がったある日。

「王都の中にこんなに広い空き地があったんですね」

「ここはもともと王国の土地だったんだ」

 俺は王都のはずれにマイホーム用のまとまった土地を購入した。

 旧国王セルベールが奴隷市場などというくだらない施設を建設しようと確保していた場所だったらしい。

 結局、財政状況が悪く任期中に実現することはなかったようだが。

 と、それはともかく。

「じゃ、始めるか」

 俺はアイテムスロットからマイホーム用の資材を取り出した。

 木材や石、金属など資材は多岐にわたる。

「大工さんなしで一人で作るなんて……いくらユーキでもできるの?」

 アイナが心配そうに見つめてくる。

「無理だったら頼めばいいんだ。自分でできるなら早いし理想のものができる。まずはやってみないとな」

 何の根拠もなく言っているわけではない。

 自力でミニチュアサイズのものは作れた。

 なら、新たに覚えた『創造魔法』と『大地の力』。この二つを組み合わせれば人が住む大きさの建築物でもなんとかなるんじゃないかと思ったのだ。

 まずは、『大地の力』を使用し、一帯の魔力と俺の魔力を結合させる。こうすることで使える魔力の量を増幅させる。

 そして『創造魔法』を使うことで俺の自力での発想を超える高効率な建築方法と魔力コントロールで資材を部品に変えていく。

 並行して基礎工事も行い、準備が整ったところで出来上がった部品を基礎の上に組み立てる。

 魔力量が足りるかどうかだが──ギリギリ足りたようだ。

「はあ……はあ……」

 さすがに負担が大きく、息が切れてしまう。

 とはいえ、まだ終わっていない。

 俺は魔力ポーションを飲んで魔力を回復させると、次に取りかかった。

「あとは……パワーストーンだ」

 アイテムロットからS級の魔石を取り出す。

 まがまがしく輝く魔石に創造魔法をかけることで、より性能の高いパワーストーンの生成を試みた。

 結果は──

「よし、成功だ」

 パワーストーンは禍々しさはそのままにゲームのエフェクトがかかったようなバチバチと明るいオーラを放っている。

 もはやS級などの枠組みで語れない代物であろうことは間違いない。

 完成したパワーストーンは後で床下の収納スペースに置いておくとしよう。

「す、すごいです……こんなに一瞬で……!」

「本当に一人で作っちゃった……」

「ユーキ君またやっちゃったね……」

「この前のミニチュアそっくり……こんな精密に……すごい」

 頑張ったあってアレリア、アイナ、ミーシャ、アリスの四人も感心してくれているようだった。

 前回作ったミニチュアを単純に大きくしただけなので、イメージとまったくそんしょくないはずだ。

 中に入ると、新築特有の素材の匂いが少し鼻についた。

 一部屋ずつ確認してがないことを確認する。

 アイテムスロットから用意しておいた家具を配置し、冷蔵庫に食材を詰めて引っ越し完了。

 全てが終わり、俺はほっとあんした。

「ユーキ、お疲れ様でした。これからみんなで夕食を準備するのでゆっくりしていてくださいね」

 アレリアたち四人はいつの間にかエプロン姿に着替えていた。

 俺は新築のマイホームにソワソワしながらソファーでゴロゴロして準備ができるのを待つことにした。

 それから二時間後。

 良い香りが漂ってきたのでダイニングに行くと、テーブルに美味おいしそうな夕食が並べられていた。

 唐揚げ、チキンステーキ、フライドチキン、鶏肉と野菜のコンソメスープ……とバラエティ豊かなメニューの品々。

「すごい種類だな。大変だっただろ?」

「う~ん、四人で分担したからそんなにかな?」

 アイナがそう答えると、他の三人もうんうんとうなずいていた。

 俺に苦労を見せまいとしていることはわかった。

 それなりの期間一緒に過ごしていれば伝わってくるのだ。

 とはいえ、ツッコミを入れるのは野暮ってものだろう。

 俺たちはさっそく席につき、夕食を楽しんだ。

「……うまいっ」

 味付けや焼き加減、揚げ加減など基本的な料理の上手うまさはもちろんだが、全体的に肉料理が多くスタミナが回復した気がする。

「おいしい! おかわり~!」

「オレも~」

 スイとアースの二体もいつも以上に食欲旺盛だった。

 そういえば、本来のサイズは俺の何倍も大きいはずだが、それにしては食べる量少ないよな。どうなってるんだ?

 まあ、今度暇な時にでも聞けばいいか。

 そんなこんなで楽しい食事の時間を過ごしたのだった。

 食後のだんらん時間。

 まだ寝るには早い時間だが、みんな眠そうにしていた。

 そんな状況だったため、いつものように絶え間なく誰かに話しかけられることもなかった。

 みんなと同じ空間にいながら一人でいるような感覚。

 リーシェル公国で初日に出会ったアルフレッドの言葉がボウっとした俺の脳裏によみがえる。

『相手から好かれてて、てめえも好きなんだろうが! しかも譲れねえ理由も浅いときた。故郷がなんだ? 故郷抜け出してんじゃねえか。ならどこに迷う要素があるんだ? 男なら全員受け入れてやれよっ!』

 はっきりとした指摘。

 フラフラと結論を先延ばしにしてきた俺には、心に響くメッセージだった。

 そろそろ、俺も覚悟を決めないといけないのかもな……。

 今この時以外もふとしたときに思い出していた。

 だから、頭の中で考えていたことが言葉に出てしまったのかもしれない。

 あるいは、今の幸せを手放したくないと思ったからなのかもしれない。

「アレリア、アイナ、ミーシャ。結婚しよう」


 彼女たちと並んで生きていくという決意とともに、俺の賢者ライフはまた一歩前進するのだった……。