「あの、今までありがとうございました。こちらで働かせていただいて、自分自身の成長につなげることができました」
「そうか、そう言ってもらえて良かった」
「最後は二人でお店に立てて、とても楽しかったです。出来ることならもっと一緒に働いてみたかったです」
「私も同じよ。リルちゃんのお邪魔になっちゃいけないからって一緒に働かなかったことがとても残念だったわ」
私の気持ちを二人に伝えた。二人は笑顔でそれを受けて、嬉しい言葉を返してくれた。
「これがクエスト完了の用紙だ。冒険者ギルドに必ず出すんだぞ」
「はい、分かりました」
用紙を受け取って、二人から少し距離を取る。手をギュッと掴んで、深々とお辞儀をした。
「こちらで働かせていただき、ありがとうございました!」
「こちらこそ、ありがとう」
「リルちゃん、私からもありがとう」
これでパン屋の売り子の仕事は終わった。楽しく充実した日々は私の胸の中に温かい記憶となって残る。もう少し働きたかったけど、贅沢は言えない。
だって、私には次の目標があるんだから。
◇
夕日で染まる大通りを駆け出していく。一直線に目指した先は冒険者ギルド。
中に入ると、受付の列に並ぶ。人数が少ないのですぐに自分の番となった。
「次の方どうぞ」
「入金とクエスト完了の用紙です、お願いします」
受付のお姉さんに冒険者証と小金貨と用紙を渡すとにこりと笑って「少々お待ちください」と後ろを向いた。私はドキドキしながら待つ。
しばらくするとお姉さんが振り向いてきた。
「まずはお預け金の確認からお願いします」
お姉さんが鑑定の水晶に冒険者証をかざすと金額が出てくる、百二十四万五千ルタだ。以前に予想していた金額になっていて安心した。
「次にクエスト完了の報告です。今回Fランクのクエストを半年間受けていただき、ありがとうございました。長い期間携わってくださったので、ランクアップが可能となり、この度リル様はEランクに昇格することになりました」
やった、ランクアップだ。これで受けられるクエストが増えるってことだよね。
「依頼は今から見ていきますか?」
「いえ、明日また来ますのでその時に見せてもらいます」
「分かりました。明日お待ちしておりますね、冒険者証をお返しいたします」
冒険者証を返してもらい、お辞儀をして冒険者ギルドを出て行った。
暗くなる前に集落に戻らないといけない。足早に大通りを進んでいく。だけど、はやる気持ちを抑えきれずについつい早歩きになって、駆け出してしまう。
「やった、Eランク、Eランクだよっ」
嬉しくて嬉しくて顔がニヤケるのが止められない。ランクもアップして、お金も貯まって、心も成長できた。次の目標に向かって進めることが嬉しすぎる。
楽しかった日々がなくなったのは悲しいけど、後ろばかり見ていられない。ようやく前に進める力を手に入れたんだ、前に進まなくてどうする。ようやく外の冒険に出かけるために必要なものが揃ったんだ。
「明日から外の冒険に行く準備ができる!」
まだまだ準備の段階だけど、それでも嬉しくて駆け出しちゃう。明日が楽しみだ!