25 服屋に行こう

パン屋を後にした私はレトムさんに教えてもらった古着屋さんを目指した。一本向こうの通りにあるって言ってたけど、どこかなぁ。キョロキョロと辺りを見渡すと、服が描かれた看板を見つけることができた。

きっとここだよね。今度はお客としてお店に入るだけなのに緊張する。私の中で難民という負い目がまだ残っているからかな。オドオドしていたらもっと不審がられるし、堂々と行こう、堂々と。

扉に手をかけて、引いて開ける。すると、ドアに括りつけてあったベルがカランカランと鳴り響く。

「いらっしゃい」

店の奥から女性の声がした。陳列された服が一杯で姿が見えないが、奥の方にいるようだ。

「服を買いに来ました」

見た目で判断される前に先制しようと思った。そう、私は服を買いに来た客。そのまま突っ立っていると、奥にいた女性がイスから立ち上がる音がした。すると、ようやく陳列された服の向こう側から頭が出て来て顔が見える。

「どんな服を探しているの?」

よし、不審がられてないよね。

「一着は綺麗なブラウスとスカートです。あと三着分はシャツとズボンが欲しいです。あ、店に出ても大丈夫な程度の品質でお願いします」

「そう、分かったわ。自分で見てみてもいいし、私が選んでもいいし。どっちにする?」

「もしよければ見繕ってもらってもいいですか」

「分かったわ、任せて」

そういった店員は陳列された服を見始めた。本当に色んな服があって目移りしちゃいそう。私が見たら余計なものまで買いそうだから、店員に頼んで正解だったかな。一着くらいはちょっと贅沢しちゃったけど、いいよね。

「そういえば、お店で働くって言ってたけど、どこで働く予定なの?」

「一本向こうの通りのパン屋さんです。そのご主人からここの話を聞いてやってきました」

「あら、そうなの。ふふ、今度高いパンでも買っていこうかしら」

店員は笑顔になりながら、服を探していく。すると良いものを見つけたのか、一着のブラウスを手にする。

「ちょっと後ろを向いてくれないかしら」

「はい」

「腕も上げて平行にしてね」

「はい」

店員の言われた通りにすると、背中にブラウスが当てられる。これはサイズを測っているんだよね。

「うん、これがピッタリね。ブラウス一着はこれで決まりだわ」

「見せてもらってもいいですか?」

「えぇ、もちろんよ」

長袖のブラウスを受け取ると隅々まで見ていく。古着とは思えないほどの綺麗さで、ほつれも汚れもない。

「きっとそのブラウスはいい商会のお嬢様が着ていたものね。たぶんサイズが合わなくなったから売られたんだと思うわ。でも、子供ものでこういったものは中々売れないのよね。売れないから三百ルタ値引きしてあげるわ、三千七百ルタにしましょう」

やった値引きしてくれた。そうだよね、いつまでも売れない物を残しておいても仕方ないよね。えへへ、得したなぁ。

「スカートは……この青いスカートなんかいいんじゃない。もう一度後ろ向いてみて」

「はい、こうですか?」

「そうそう……うん、これもピッタリね。青いスカートでいい?」

「はい、大丈夫です」

膝くらいの丈のある青いスカートも綺麗な状態だ。これも商会のお嬢様が着ていた物なのだろうか?

「これは四千二百ルタね。今日は沢山買ってくれるっていうから二百ルタ、オマケで値引きしてあげるわ。これも残していても仕方ないしね」

「ありがとうございます」

やった、また値引きだ。ここを紹介してもらえて本当に良かったなぁ。少しでもお金を貯めたいからありがたいよね。

「シャツとズボンなら沢山あるから。ちょっと待っててね、まとめて見繕うから」

店員さんはブラウスとスカートを私に預けると、大量に重ねてある服から探し出す。一着ずつ真剣な目で見てくれて、なんだか嬉しい気分。

あらためてブラウスとスカートを見ると、上品さのあるものに見えた。やっぱりお金持ちの服は綺麗で丈夫だし、見た目もいいね。早くこれを着て仕事をしてみたいな。

たしか三日に一日の休みだから、三日分の洗濯物は溜めておいてお休みの一日で洗濯をするのがいいね。そのお休みで集落のお手伝いをすれば大丈夫そうだ。

「お待たせ、シャツとズボン三枚ずつ見繕ったわよ。こっちのカウンターに来てね」

「はい、ありがとうございます」

呼ばれて行くと、カウンターにはそれぞれの服が広げられていた。シャツは七分丈で薄いベージュ色が二着と薄い黄緑色が一着。ズボンは全部長ズボンで紺色、赤茶色、濃い灰色だ。しかもシャツの袖には可愛らしい刺繍もされている、可愛いなぁ。

「シャツは全部で六千百ルタ、ズボンは全部で六千四百ルタ。で、どうかしら」

「はい、大丈夫です。あ、ハンガーとか売っていただけますか?」

「いいよ、木製で一本二百ルタね。全部で千六百ルタよ」

思ったより服が安く済んで良かったな。ハンガーも買って、他には……。

「あ、すいません。洗濯干し紐なんかもありますか?」

「あー、あるよ。一本三百ルタだけど、沢山買ってもらったお礼にそのままあげるわ」

「えっ、値引きをしてもらってさらにですか!? でも、申し訳が……」

「だったら、また服を買いに来てよ。そのための初来店客へのサービスだから」

わー、なんていい店なんだ。値引きとオマケをしてもらっちゃったよ。こんなことされたらまた来ちゃうよ。

店員さんは大きな紙袋を持って中に折り畳んだ服を入れ始めた。私が持っていた服を手渡すと丁寧に折り畳み、中へ入れてくれる。その後店の奥に行って戻ってくるとハンガーと洗濯干し紐を持ってきて、中へと入れてくれた。

「じゃあ、合計で二万二千ルタよ」

「はい、銀貨と小銀貨でいいですか」

「いいわよ。お金には変わりないからね」

私は硬貨袋から銀貨と小銀貨を出して、カウンターに並べた。店員はそれをしっかりと数えて全部受け取る。

「はい、確かに。ありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとうございました」

お互いにお辞儀をして買い物は終了した。えへへ、ようやく手に入れた新しい服嬉しいな。今日はこのまま帰って、洗濯干し紐を設置しよう。家の中だったら無理だから外に設置しないとね。

あ、そうだ! カルーに新しい職場に替わったこと言わないとね。明日、ゴミ回収で会うからその時に言おうかな。