23 三か月の成果

文字と数字と記号の勉強を始めて三か月が経った。朝から昼過ぎまで仕事をして、カルーと一緒に遅い昼ごはんを食べて、その後少しだけカルーとおしゃべりを楽しむ。その後が勉強タイムだ。

まず町から集落まで戻るのに一時間はかかるので、その時間を読む勉強時間として充てた。両手で紙を持ちながら、文字をなぞって意味を口ずさむ。その繰り返しをして、少しずつ頭の中にインプットをした。

次に家に帰ってからは外で文字などを書く勉強だ。夜暗くなるまで枝を手に持って、紙を見ながら地面に書く。書いたらまた意味を口ずさんで、何度も頭の中にインプットしていった。

後、小腹が空くので百ルタで買った小さな硬いパンを夜ご飯にして食べている。両親に見つからないように買ってくるのが大変だったけど、今まで一度も取られたことがない。こっちに執着しなくて本当に良かったよ。

最初は一文字を書くのが大変だったけど、文字が書けると楽しくなってきた。次に単語を書き、単語が書けるようになると今度は文章を書いた。最後は毎日日記を地面に書いて練習をしていたなぁ。

そんなお陰でスラスラと文章が読めたり書けたりするくらいには上達した。これでどれだけ仕事が増えるのか分からない。ゴミ回収もいい仕事なんだけど、一日置きしかないのが残念なんだよね。

今後外の仕事を受けるためには、服や装備品を買わなくちゃいけない。そのための資金を貯めないといけないから、安定して稼げる仕事を見つけなくちゃいけないんだよね。

カルーも今はゴミ回収の仕事を受けているけど、本当は違う仕事もやりたいと言っていたなぁ。やっぱり一日置きの仕事だと足りないんだと思う。カルーは孤児院で過ごすか、孤児院以外で暮らすかまだ迷っているようだけど。カルーも私もそろそろ違う仕事を見つける段階に入ったんだ。

だから、スキルアップした私は今日は違う仕事を探しにやって来た。今日はゴミ回収がない日。いつもは違う仕事を受けたり、集落の手伝いをしたり、薬草を採取したりしていたけどね。

列に並んで待っていると、私の番が来た。

「冒険者証です」

「お預かりします。Fランクですね、今日の仕事は」

「すいません。今日は仕事の前に聞いてほしい話があるのですが、いいですか?」

「はい、どのようなことでしょうか」

いつもとは違うやり取りなのに、受付のお姉さんは顔色一つ変えないで対応してくれる。

「今まで文字や数字、記号の勉強をしていたのですが文章を読み書きできるほどまで上達しました。なので、読み書きが必要な仕事も受けたいと思っています」

「そうなのですね、おめでとうございます。文章の読み書き……そうだわ、計算はどうでしょうか?」

「計算もできます」

「分かりました。ギルド員が直接その能力を見定めてから仕事を紹介したいと思いますので、しばらく待合席でお待ちいただいてもいいでしょうか?」

そっか、話だけだとどれだけできるのか分からないものね。テストみたいなことをしてどれだけの能力があるのか見定めてから、仕事を割り振ってもらえそうだ。

私は待合席に行き、座って待つ。ボーっとしながら待っていると、カウンターの奥から一人の男性が近づいてきた。

「リル様ですね」

「はい」

「お時間を取らせてしまい申し訳ありません。これより二つのテストを行いたいと思います。まず一つ目は聞き取った文章を書くテストになります。ここでは文章をどれだけ速く、正確に書けるか見定めさせていただきます」

まずは聞き取りテストか、本格的に見定めてくれるんだね。それはそれで助かった。これを速く正確に書ければ、私の仕事の幅も広がるってことだよね。頑張らないと。

目の前に一枚の紙と一本のペンが置かれた。私はペンを手に持って、一度深呼吸をして心を整えた。うん、いつでも来い。

その様子を見ていた男性は「はじめます」と一言言い、手に持った紙に書かれてある文章を読み始めた。私はそれを聞きながら、できるだけ丁寧に正確にだけど速く書き留めていく。

話を聞いていると、その内容はギルドの規定だった。難しい言葉もあって書くのが大変だけど、なんとか書き切ることができた。

「はい、以上となります。……書けましたでしょうか」

「はい、書けました」

「すごい速筆ですね、なるほど。では、次のテストに移ります」

読み終わるとほぼ同時に書き切れたのがすごかったらしい。ふふふ、これでいい仕事に一歩近づけたことになるかな。

「次は文章を読んで計算問題を二問解いてください。あとは普通の計算問題を十問解いてください。その間に私は今書き上げた文章の答え合わせをしていますね」

「はい、分かりました」

次は読解力と計算能力を見るテストだね。どれどれ、うんこれならいけそう。今回も丁寧に正確にだけど速く終わらせるよ。

文章をよく読み、計算式を書き、答えを導き出す。うん、小学生並みの内容だから簡単に解くことができた。

次の十問の計算式も四則算だから簡単に答えが分かる。桁が増えただけの計算なんて簡単で、スラスラ解く事ができた。

「あの、終わりました」

「えっ、ちょっとお待ちください」

少し控えめに話しかけると男性は紙から勢い良く顔を上げて驚いた。私の前に置いてあった紙を手に取って内容を確認する。

「本当ですね。ちょっと答え合わせをしてきますので、ここでお待ちください」

「はい」

少し慌てた様子で男性はカウンターの奥まで行ってしまった。かなり驚いていたみたいだけど、実力出しただけだしいいよね。少しでもいい仕事と出会うためだ、どうかよろしくお願いします。

一人で席に座りながら、行き来する冒険者を眺めていく。どんな服があるか、どんな装備があるか今のうちにチェックしておかないとね。んー、私はどんな装備がいいんだろう。

冒険者の装備について考えていると、また同じ男性が近寄ってきた。

「お待たせしました。お話はカウンターでさせていただきますので、あそこのカウンターまでお越しください」

男性が指し示したところは列のない受付のお姉さんのところだった。私は言われた通りにそのお姉さんのところへと移動する。

「リル様、お待たせしました。テストの結果ですが、全問正解でした。非常に高い読み書きと計算の能力があることが確認されました。この情報は今後も共有したほうがいいと考えましたので、冒険者証に情報を載せておきました」

おお、これはいい傾向だと思う。今後は冒険者証の確認だけで、この能力があるってどんなギルド員にも分かるってことだよね。よし、新しい仕事が受けられるといいな。

「リル様の年齢を踏まえて、今すぐご案内できる仕事が一件ありましたので、こちらをご覧ください」

そう言い終わると一枚の紙を差し出してくれた。それを受け取り内容を確認する。どれどれ……パン屋の売り子?