14 町外での商売と薬草摘み

お姉さんと別れた私は門の近くで商売をしているおばあさんのところまでやってきた。柱と屋根だけの建屋の下で様々な道具を広げてその場に座っている。私が近づくと顔を上げて話しかけてきた。

「買うのかい、売るのかい」

「あの、初めてで」

「そうかい、説明が必要なのかい」

うんうん、と頷くおばあさん。悪い感じがしなくて、ホッとした。

「あんた一人かい? 親御さんはどうしたんだい」

「私一人です」

「ふーん、子供一人でくるのは珍しいねぇ。まぁ、深くは追及しないさ」

簡単な確認をされて正直に答えても態度は変わらなかった。良かった、子供一人だから適当な感じにならなくて。

「私はここで難民相手に商売をするようにお役人からお願いされている。だから、お前さんがたを冷遇はしないし客として対応させてもらう。ただし、買う商品は二割増し、売る商品は二割減とさせてもらうよ。私も生活があるからね、それぐらいの旨味がないとやっていけないのさ」

お姉さんが言ってた通りだ。多少の損はあるけれど、私たちと対等に商売してくれることの方が大事だ。でも、役人さんがこの商人を置いてくれるように手配してくれていたなんて知らなかった。領主さまの指示なのかな、本当にありがたいよね。

「さて、実際買い取る物の話をしようか。買い取る物は獣の肉や薬草だよ。獣の肉は鹿、猪、鳥、ウサギ、穴ネズミ。この周辺に生息している獣の肉だったらなんでもいいよ」

「解体する道具がないので、そのまま持ってきても買い取ってくれますか?」

「もちろん、構わないよ。私がお前さんにオススメするのはウサギと穴ネズミの肉だね。その中でもウサギの肉は穴ネズミの肉より高めに買い取るから、捕獲できるんならウサギのほうがいいよ」

穴ネズミよりもウサギがオススメか、頑張ってウサギを捕った方が良さそうだね。よし、捕獲方法を考えないと。

「薬草は二種類ある。傷口に直接使うためのギタール草、鎮痛の効果があって飲み薬になるアッタイ草だよ。ほら、これが見本さね」

そう言ったおばあさんは並べてある薬草を見せてくれた。ギタール草は細長い葉っぱの形をしていて先っぽがギザギザしている形をしている。アッタイ草は丸い形の葉っぱで先っぽが尖っている形をしていた。

「ギタール草は一つ九十ルタ、アッタイ草は一つ八十ルタで買い取るよ。そうそう、ウサギは一羽二百六十ルタ、穴ネズミは百九十ルタで買い取ろう。獣は大きさによっては多少値段が前後するから、大きいのを捕るんだよ」

沢山探してお金を稼ぐか、頑張って捕まえてお金を稼ぐか……うーん、どっちが早くお金を稼げるんだろう。

「そうだ、あんたお金の数え方は知っているかい?」

「数え方ってなんですか?」

「知らないようだね。これから必要となる知識だ、教えてやるよ」

物心ついた時から難民だったからお金を見たことが無い。そういえば硬貨の種類も値段も全然分からないんだった。ここで教えてもらうのがいいよね、優しい人で本当に良かった。

「お金にはいくつか種類があって、その種類によって金額が違うんだよ。お金の種類は小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨、大金貨がある」

「沢山あるんですね」

「沢山あるけど、実際使うとなったら限られてくるもんさ。いいかい、一枚の小銅貨で一ルタ、銅貨は十ルタ、小銀貨は百ルタ、銀貨は千ルタ、小金貨は一万ルタ、金貨は十万ルタ、大金貨は百万ルタ。これさえ覚えていれば後はお金の勘定を間違えない限り大丈夫さ」

全部で七種類あった。金貨なんて私には縁のない硬貨みたいだ。でも、そのうち貰えるような仕事ができるのかなぁ。

私はお金のことをしっかりと頭の中に叩き込んだ。そんな私を見ておばあさんが頷きながら少しだけ笑ってくれる。

「良さそうだね。後はお前さんの頑張り次第だよ」

「はい。色々教えてくれてありがとうございました」

「いいんだよ。早く難民から脱却できるといいね、頑張んな」

「はい! すぐに行動しようと思います」

私はおばあさんに深々とお辞儀をしてその場を立ち去った。早くお金を貯めて、町の中に入って冒険者登録をするよ。

おばあさんと別れた後、私はすぐに薬草を探し始めた。木の根元を確認したり、茂みの中をかき分けたりしながらあちこちと動き回る。

探している間にも穴ネズミの穴を見つけてしまう。手元に道具がないのがとても悔やまれた。今は町からの帰り道だから仕方ないけど、損した気分になってちょっと落ち着かない。

そのせいで集中力が落ちたのか、探し方が雑になってきていた。

「ダメダメ! 集中して薬草を探さなくっちゃ」

ペチペチと頬を叩いて仕切り直す。見逃さないように丁寧に探し続けると、草むらの中からギタール草の束が出てきた。やった、初薬草だよ。

私はその辺に落ちていた枝を手に持つと、薬草の根元を掘り起こすように地面を削り始める。おばあさんの所で見た薬草はしっかりと根までついていたのを、私は見ていた。多分、そのまま千切らないで根本までしっかりと掘り起こすのがいいと感じた。

慎重に掘っていくとギタール草の根が出てきた。そこからまた少し掘っていき、今度は優しく引き抜く。スポッとギタール草を抜くことができた。うん、上手に根までしっかりと採取できたみたい。

今度は隣にあったもう一株のギタール草にも手をつける。慎重に枝で根を掘り起こして、薬草を傷つけないように丁寧にやって。しっかりと根が出てくるまで掘ると、優しく引き抜く。うん、もう一株もしっかり抜けた。

上手く抜けた二つのギタール草を見て私の顔が緩む。これで百八十ルタになる。目標の一万二千ルタに一歩近づいたことになった。

まだまだ先は長いけど、時間がある時にコツコツやっていけばきっとあっという間に目標に辿り着くよね。よし、気合入れてもう少し探そう。

ギタール草と枝を手に持ちながら、他に薬草が無いか探し始める。キョロキョロと辺りを見渡して、ふっと振り向いた先に見覚えのある草を見た。駆け足で近寄ってしゃがんでみると、そこにはアッタイ草が生えていた。

やった! この調子で沢山見つけていくよ。