13 ホルト町

翌日、私は初めて朝の配給に並んだ。覇気のない人が多い昼の配給とは違い、朝の配給はとても活気があった。ガヤガヤといろんな話し声が聞こえて、時折笑い声まで交じっている。朝と昼でこんなにも違うんだ、ととても驚いた。

朝の配給を受け取る人はほとんどが町で冒険者として日雇いの仕事を請け負っている人らしい。道理で体格のいい人や身ぎれいな人が多いはずだ。私も町で働くんなら身ぎれいにしないといけないね。

しかも、それだけじゃない。配給のスープの具が多いのだ! 私は昨日のお姉さんに聞いてみた。

「あの、どうしてスープの具が多いんですか?」

「これはね、みんなで働いたお金で食材を買っているからなのよ。配給品の野菜と干し肉だけじゃ物足りないもの」

なるほど、良いことを聞いた。そうだよね、配給品の量は飢えない程度の量しか貰えないんだから、働くためには食べ物がもっと必要なんだよね。私も朝の配給を受ける時はお金を預けるか、自分で食材を買うかしないといけない。

「そうだ、芋は昼ごはん用にポケットとかに入れておくといいわ。後でお腹が減るでしょう?」

「そうですね、そうします。本当に色々とありがとうございます。今度、穴ネズミとか魚とかお渡しします」

「ふふ、それなら配給に混ぜてもらった方が嬉しいわ」

「はい」

なんて良い人なんだ、私は感動して胸が熱くなった。私も困った人がいたら手を差し伸べることができる人になりたい、このお姉さんみたいになりたい。

私たちは配給を食べ、後片付けをする。みんな仕事があるからなのか、動きがテキパキとして速い。目標があると人ってこんなに変われるものなんだね、本当にすごい。

全ての片づけが終わると、今度はみんなで町まで移動をする。私はお姉さんに引っ付いて集落を後にした。

集落から町まで徒歩で一時間かかった。町は五メートルくらいの壁で囲まれていて、門を使って行き来している。門には難民たちが押し寄せて、門番たちが何かを確認しながら町の中へと入れていた。

私とお姉さんは少し離れたところからその光景をみている。

「あれは何をしているんですか?」

「証を確認して中に入れているの。証っていうのは住民証、ギルド証、商証とかあるわ。というのも、外部の人が町に入るには通行料っていうのが必要なの。この町は二千ルタを徴収しているわ。でも、証があればそれが免除されるの」

なんと、町に入るのに税を取るのか。ということは、何もない私が入るためには二千ルタが必要だということだよね。

「難民が入れるのはギルド証があるからね。だからギルド証さえ発行してもらえれば、自由に出入りできるはずよ」

「町に入ったらすぐにギルドに行って冒険者登録をする、これが重要ですね」

「そうよ。だからリルちゃんがやるべきことは、町に入るための通行料を稼ぐこと、と」

「と?」

「冒険者登録に必要な登録料一万ルタを稼ぐ事よ」

冒険者登録に一万ルタ!?

「普通の人なら苦もなく出せる金額だけど、難民には一つの壁なのよね」

「あ、あの……難民のみんな、ですか」

「えぇ、みんな町の外で通行料と登録料を稼いでいたわよ」

そ、そんな……町の外でどうやって稼げばいいの。だって稼ぐために町の中に入るのに、でもその前にお金を払う必要があって、働くためにもお金を払う必要があって……どうしたらいいのかな。

お姉さんから言われた言葉に私は驚きの連続だった。働く前の障害が大きくて軽く絶望する。もしかしたら、覇気のない昼の配給を受けている人はこのことに絶望した人たちだったりして。でも、難民の半数はこの壁を越えて冒険者登録をして働いているんだよね。

ん、ちょっと待って。難民の半数が冒険者登録をしていて、働きに出ているんだよね。中には子供もいるはずなんだよね。だったら、頑張れば私でもできるってことじゃない。

先ほどまで絶望した顔つきが緩んでいくのが分かる。そんな私の顔をみてお姉さんは柔らかく笑った。

「ふふ、リルちゃんも分かったのね」

「はい。半数もこの壁を越えて中で働いているんですよね。だったら、私だって頑張ればこの壁を越えることができそうです」

「そうよ、頑張れば越えられる壁なのよ。安心したわ、ここで諦めるとか言い出さなくて」

考えを止めるくらいに驚いたけど、そうじゃなくて本当に良かった。そうだよね、動き出したばかりなのに簡単に諦めることなんてできないよね。

「町に入れない難民のための商人が町の外にいるの。ほら、門から離れた場所を見て」

「あ、誰かが屋根の下に座ってますね」

「あの人が難民のために商売をしてくれるのよ。だけど、正規の値段よりは安く買われちゃうけどね」

なるほど、町の外に商人がいれば町の中に入らなくても物を売れてお金が手に入る。安く買われるのは残念だけど、難民相手に取引してくれることだけでもありがたいからそれくらいは仕方ないだろう。

「商売のことについてはあの人が説明してくれるわ」

「はい、ありがとうございます」

「私も一緒に行きたいけど、今日は働きにでなくちゃいけないからごめんなさいね。リルちゃん一人で行けるかしら」

「大丈夫です。私のために時間をとってくれて本当に助かりました」

「ううん、いいのよ。じゃ、頑張ってね」

そういうとお姉さんは町の門まで歩いて行った。最後の最後まで優しくていい人だったなぁ、今度何か差し入れしないと気が済まないほどに感謝の気持ちが溢れかえっている。私はお姉さんの姿が見えなくなるまで見送った。

よし、ここからは私一人でやらなくちゃいけないよね。ここまで来たんだから、しっかりと話を聞いてお金を稼ぐ手段を手に入れよう!