9 十一才になりました

お手伝いを始めて四か月が経ち、十一才になりました。お手伝いの内容は一週間で水汲み二回、穴ネズミの捕獲一回、魚の捕獲一回、あとは気づいた時に細々としたお手伝いをした。

お陰様で冷たい目線は緩くなったみたい。完全にはなくなっていないのは、両親のせい。女衆の話では両親が手伝わなくなって半年経ったようだ。

私が色々と手伝っているせいか、女衆の方々からいろんな話を聞く。そろそろ集落会議にかけたらどう、かと。でも、まだ早いんじゃないか、とも。今後どうなるかは分からないけど、あの両親が改心するのか疑問だ。

そうそう、食料調達以外でもやったことがあるの。それは敷布団、掛け布団の作製。

もちろん布はないから全部葉っぱと枯草だけで作った。手のひらくらいの葉っぱに枝で小さな穴をあけて、その穴に細長い草を通してもう一枚の葉っぱを重ねて繋げる。それを何十枚、何百枚と繋げれば葉っぱのシーツが完成。

そのシーツを二枚作り、その間に枯草を敷き詰めて、最後にシーツの端を同じように穴をあけて細長い草で繋ぎ合わせる。細長い草を結ぶ時が一番大変だった。沢山結ばなきゃいけないし、力が強すぎたら千切れちゃうし。

暇をみて時間をかけて作製したお陰で、敷布団と掛け布団が完成したの! でもね、完成した途端に両親に奪われてしまった。くっ、悔しい……こうなることは予測できたのに、悔しい。今では両方とも二人の掛け布団になっている。

仕方なくもう一度作り直すことにした。悔しいから今度はもっといいものを作ろう! と、思ったんだけどもっと良いものを作ったらまた奪われそうだからやめた。同じように作り、今度こそ自分のための敷布団と掛け布団にした。

布団を作ったおかげで服に土や草がつくことがなくなって、以前より体を綺麗に保つことができるようになる。毎朝服についた草を取るのが地味に大変だったんだよね。

綺麗と言えば私は二日に一回は水浴びをしている。石鹸とかはないけど、丁寧に水で洗い落とせば汚れだって取れた。でも、髪の毛に艶がないのは物足りなく思っちゃう。どこかに髪に合う油の採れる実とか都合よくなってないかなー……ないよね、グスン。

そういえば水浴びの合間に服の洗濯もしているんだ。難民だけど、服は二着持っているの。ずっと着の身着の儘だったら大変だからこれには助かっている。ルーティンとして水浴びしたら着ているものを洗って、新しい服に着替えて洗った着替えを干す。これを繰り返している。

いずれ町に行くことになるんだから、少しでも身ぎれいにしたほうがいいしね。難民っていうだけで印象は悪いと思う。だから、少しでも印象を良くするための努力はしておこうと思った。

水浴びの時に枯草を丸めてそれでゴシゴシ擦ると、垢も取れて肌が綺麗になっていった。こういう小さな努力をしていると、女衆からは好きな人ができたと思われてからかわれている。そういうつもりじゃないのにな。

前世の記憶を思い出した時は今の境遇に絶望したけど、今では思い出して良かったと思っている。もし、あのままだったら難民集落を追い出されていたかもしれない。いいきっかけだったなぁ、と思う。

こんな場所で前世の記憶とか役に立たないとか思っていたけど、案外役に立つ知識を持っていて助かった。暇つぶしに見たテレビや動画の知識ばかりだけど、お陰で追い出されずにいられたね。

まだまだ信用は足りないけど、このままの生活を続けていけばみんなと普通の会話ができるようになるかな。その為にも今日の穴ネズミ捕獲は頑張らないとね。

「よし、今日の目標は六匹だ」

石オノとミミズのついた長い枝を持って穴ネズミの穴を探していく。木の根元も見て、草むらの中を見て。

ちなみに一度捕獲した穴は目印をつけてある。入口の横に枝を突き刺しておけば一目瞭然だ、分かりやすい。だから、探す時はその枝がないか確認もしている。

「あっ、あった」

草むらを探しているとぽっかりと開いた穴を見つけることができた。その穴はいつもみる穴に比べて少し大きくなっている。出入口付近の土も沢山削れていて、この中に沢山の穴ネズミがいる気配がした。

「これは沢山いそうだね」

ウキウキしながら石オノと大きな籠を地面に置いて枝を中に入れていく。出入口ギリギリまで枝を差し込むとしばらく待つ。すると、枝が動き奥の方に引っ張られ始めた。

そこをすかさず掴み枝を手繰り寄せる。穴ネズミは枝に食いついたまま出入口まで頭を出した。枝を地面に置いて足で踏んで止めると、石オノを手にして振り上げて思いっきり振りおろす。

「キュィッ」

短い悲鳴を上げて穴ネズミが気絶した。そこにもう一撃食らわせると、穴ネズミはピクピクしながら脱力する。まずは一匹目だ。

私は休むことなく穴ネズミを釣っては叩いて、釣っては叩いてを繰り返した。どうやらこの穴には沢山の大人の穴ネズミが棲んでいたようで、やってもやっても次々と食いついてきた。

結局この穴からは合計七匹の穴ネズミを捕獲することができた、大猟だ。並べて観察してみると、二匹の大きな穴ネズミと五匹のそれよりも少しだけ小さな穴ネズミだった。どうやら家族で一つの穴に暮らしていたらしい。

「明日のスープのお肉は少し大きいといいな」

予定よりも一匹多くて嬉しい。嬉しいと顔のニヤニヤが止まらなくなる、ふふふ。持ってきた籠に穴ネズミを入れていくが全部入らなかった。二匹ほど手に持っていくことになる。

片手に穴ネズミと石オノ、もう片手に穴ネズミと棒を持ち、よいしょと立ち上がった。嬉しい重みで少しだけ足元がふらつく。私はフラフラとした足取りで広場まで歩いて行った。

広場に行くと女衆が昼のスープを作っている最中だった。

「こんにちは、穴ネズミ捕獲してきました」

「あぁ、ありがとね。そこら辺に置いておいておくれ、後で解体するからさ」

「はーい」

女性に言われた通りその辺に置いておき、戻っていく。

「何か手伝うことありますか?」

「いや、今日はないよ。それよりもそろそろ出来上がるから、自分の器でも持ってきな」

お言葉に甘えて自分の椀を持ってこようとした、その時だ。ちらっと見た鍋の中がいつもとは違う。野菜が多めに入っているように見えたのだ。

「あれ。今日のスープ、野菜多くないですか?」

「ほら、これから配給が届くからね。残りものを全部いれたのさ。今回はちょっと配分ミスっちまったようね」

話を聞いてあぁーっと理解した。そうか、今日は待ちに待った配給日だ。