5 穴ネズミを狩る

今日はお手伝いがお休みの日。何もしないで日がな一日をボーッと……とは過ごせない! 最近自分が置かれている状況が分かってきて、少しでも良くするために働くべきだと思うようになった。

信用が大事。両親のせいで我が家族に信用がないのを知り、その状況がどれだけ危険だったのか分かった。両親がダメなら私がやるしかない、今は我慢して少しでも私が信用を勝ち取ろうと思う。

信用を勝ち取るために何をすればいいか、それはお手伝いだ。だが、ずっと水汲みだけではダメだと思う。確かに水汲みの仕事は大変だし、手伝えば喜ばれることなのは間違いない。けど、もう一歩進んだお手伝いがしたい。

食料集め、しかも肉の調達だ。森には鹿や猪、鳥やウサギなどの食料となる動物がいる。でも、私は力のない十才の子供だから鹿や猪の大物は仕留められない。経験もないので鳥の仕留め方は分からない。

残ったのはウサギだけど、狩ろうと思えば狩れると思う。だけど、ウサギを狩るよりも喜ばれる動物がいる。それが穴ネズミだ。

穴ネズミは名前の通り、木などの下に穴を掘って暮らしているネズミ。体長は三十センチ~四十センチで、発達した前歯と土を掘るための爪が生えている。繁殖力が強く一度の出産で七匹~十匹を産んで、子供は半年も経たずに成体になるみたい。

嗅覚が優れていて、穴を掘りながら地中にある食べ物を探し出せるほどだ。雑食性で木の実から虫まで様々食べるのだが、この生態のせいで難民から嫌われる。この穴ネズミ、食料倉庫の食べ物を狙っているのだ。

隙を見て食料倉庫の傍から穴を掘って侵入したり、倉庫の隙間を歯でかじって穴を広げて侵入したりしている。見張りの目が緩む夜とかに狙われると本当に厄介で、見かけたら即退治対象になっているくらいだ。

被害が多ければ穴を探して駆除するのだが、今は食料倉庫の周辺に見かけたら退治するか追い払うだけで終わってしまっている。自ら苦労をして穴ネズミを駆除しようとするやる気のある難民はほとんどいないのが現状だ。

これがウサギよりも穴ネズミのほうが狩ると喜ばれる理由。あと、走り回って逃げるウサギよりも比較的退治しやすい。非力で体力がない子供の私が今できる最大の肉の調達方法だ。

捕まえるやり方は至ってシンプル。穴に餌のついた棒を差し込み、餌に枝ごと穴ネズミが食いつく。食いついたら棒を引き上げて、頭が出てきたところを石オノで叩いて気絶させる。

これから穴ネズミを捕まえて狩る道具を作ろうと思う。

「まずは石オノから作ろう」

森から太めの枝を調達しておく。あとは枝に石をはめる穴を開けないといけないんだけど、鉄の道具が必要だ。鎌を借りた倉庫に行くと、今度は以前とは違うおじさんが見張り役をしていた。

「あの、枝に穴を開けたいので、道具を借りてもいいですか?」

「あぁ、穴? あー……待ってろ」

まだ信用が足りないのか不機嫌な顔をされた。それでも貸してくれるのか面倒くさそうに倉庫の中に入って行く。しばらく待っていると、倉庫の中から持ってきたものは小さな鉄の道具だった。

「ほらよ。ナイフは貸せないが、おまえにはこんぐらいがお似合いだ」

そう言って手渡してきたのは先端が平べったい刃になっている道具、のみだ。正直に言って尖ったナイフとか借りれたら良かったんだけど、仕方ないよね。ちょっとがっかりしつつ、私は深々とお辞儀をしてその場を去る。仕方がない、のみで枝に穴を開けることにしよう。それから小さなのみを使って一日がかりで穴を開けた。

次は石の部分。川に行き、穴に入りそうな長めで少し平べったい石を探していく。探し始めて一時間で丁度いい石を見つけることができたが、穴より少し大きかった。

そこで石と石を擦り合わせて穴に合うように削る作業を始める。これが結構重労働で、子供の力では中々削れずに大変だった。結局この作業に二日かかり、道具作りは四日目に突入する。

最後に枝に開けた穴に石をはめ込む。これも結構重労働で、何度も叩いて押し込んでいく。ピッタリとはまった石は木を叩いても抜けることはなく満足のいく石オノが完成した、嬉しい。

「今度は餌の棒を作ろう」

作り方は簡単。木に登って細い枝を掴んで飛び降りて折る。枝についた葉っぱと小枝を採って、穴に入った時に引っ掛かるところを無くす。後は枝の先端を裂いて、裂いた間にその辺で採ってきたミミズを挟み込む、これで完成。

石オノ作製に四日もかかってしまった。いや、大事な道具作りだから時間がかかっても仕方ないよね。これでようやく穴ネズミの狩りができる。信用獲得、頑張るぞ!

私は石オノを持って食料倉庫の近くから穴ネズミの穴を探し始めた。木の根元を探して、草むらをかき分けて探す。そう簡単には見つからないか、と思っていたら八か所目で穴を見つけた。

早速地面に座り込み、餌の棒を穴の中に入れる。ゆっくり入れていき、棒の端が出入口からギリギリでるところで入れるのを止めた。後は匂いに釣られて穴ネズミが枝ごと食いつくのを待つだけだ。

ジーっと枝を見つめていると、枝が激しく動き始めて奥に引っ込もうとした。だが、そうはさせない!

「よしっ」

両手で枝を掴むと引っ張る。奥の方で穴ネズミが抵抗しているのか結構重い負荷がかかる。負けじと踏ん張って、枝を手繰り寄せていく。

ずるずると枝が外に出されていく。穴を覗くとすぐそこまで穴ネズミが上がってきたのが見えた。穴ネズミはこちらに気づいても餌のついた枝を離そうとはしない。

グイグイと枝を引っ張り、穴ネズミの頭が外に出たところで枝を地面に置いて足で踏み止める。そうして地面に置いた石オノを手にして、穴ネズミの頭目がけて力一杯振り下ろした。

「キュィッ」

ドスッと鈍い音と共に穴ネズミは短い悲鳴を上げて地面に突っ伏した。うつ伏せのまま動かない穴ネズミ。だが、油断は禁物だ。私はもう一発穴ネズミの頭に石オノを振り下ろす。今度は鳴き声は聞こえず、鈍い音だけが聞こえた。

「もう大丈夫かな」

石オノで突いてみてもピクリともしない。いや、足だけがピクピクと痙攣するように動いていた。そこでようやく穴ネズミの手を掴み外へと引きずり出す。

仰向けに転がった穴ネズミはプクプクに太り、肉付きがとても良かった。これだったら食べられるところが多くて喜ばれそうだ。私は嬉しくなってにっこりと笑う。

「さて、あと何匹いるかな」

再び餌の棒を奥まで入れてみる。ジーッと待っていると棒が激しく揺れだした。先ほどと同じように枝を掴んで引っ張り上げていく。穴ネズミの頭が外へ出ると枝を踏み、石オノを二回振り下ろす。それで完了だ。

二体の穴ネズミを並べて置いておくと、どちらも同じような体形をしていた。ここの巣穴は当たりだ。

結局その巣穴では三匹の穴ネズミを捕獲することができた。意気揚々と女衆のところへ持っていくと、少しだけ褒められた。認めてくれたみたいでとても嬉しい。翌日のスープには穴ネズミの肉が入っていて、私のスープには大きな塊が入っていた。

よし、今度は魚に挑戦しよう!