こういうのって綺麗に採れると気持ちいいよね、気分も上々だ。この調子で沢山の食料が見つかればいいな。
そうやって森の中を進みながらキノコを採取していった。
◇
あれからキノコを二回見つけてようやく川まで辿り着いた。川の周りは大小の石が転がっておりとても歩きにくい。このまま川の水を汲もうと考えた時、あることに気がつく。
「あっ、しまった」
水桶の中にキノコを置いていることを忘れていた。このままでは一番重要な水を汲めなくなってしまう。あー、考えもなしに採ってしまった。
このキノコを捨てる選択はなく、どうにかして持って行かなくてはいけない。腕を組んで考えていると、はっと思い付いた。そうだ、肩掛けの籠を作ってしまおう。
私は来た道を戻り森のそばまで近づいた。周囲を見渡していると、必要となるものを見つけた、蔦だ。水桶を置き、蔦を手繰り寄せて引き抜く。それを何度か繰り返すと数本の長い蔦が手に入った。
「よし、編み込もう」
その場に座り込み、蔦を掛け合わせて編み込んでいく。蔦を掛け合わせるとくるりと巻き込み、また違う蔦を掛け合わせてくるりと巻き込んでいく。正しいやり方は分からないが、とにかくキノコが持ち運べる形を整えていく。
せっせと編み込んでいくと次第に形ができてくる。ちょっと不格好だし、編み込みがあまくて穴が大きな部分もあった。それでもキノコが落ちるほどの穴ではない。確認しつつ籠の形を目指していく。
そうして採ってきた蔦を全て使い切り、即席の籠ができた。
「ふぅ、これでどうかな」
最後に肩掛けの蔦を繋げてっと……完成だ。私の頭くらいの大きさで格子状の籠ができた。初めの所は穴が大きくなっているけど、問題なさそうだ。初めて作った割には上手にできたんじゃないかな、やったね。
早速水桶に入っていたキノコを籠の中に移し替えていく。全部納めて持ち上げて揺らしてみる、全然落ちてこない、成功だ。また嬉しくなって顔がニヤけてくる。何かが上手くいくと気持ちがいいね。
私はその籠を肩にかけて後ろに回す。すると、籠が腰に当たる。いい感じの長さになったと思う。とりあえず、このまま使ってみてだめだったらもう少し加工しておくのがいいかな。
よし、これで水を汲むことができる。再び石がゴロゴロある場所を転ばないように慎重に歩いていく。川に近くなると石の形が小さく揃ってきて大分歩きやすくなった。
川に靴のまま入り、水桶を傾けて水を入れて持ち上げる。うーん、そこそこ重い。うんしょうんしょ、と川から上がり一度石の上に置く。見た感じ四、五リットル入ってそうだ。
これを三十分かけて持っていくのは結構な重労働。できるだけ零さずに持っていくにはさらに神経を使いそうだ。水汲みって大変な仕事だったんだ……いや、だからこそやるべきよ。こんなところでめげてなんかいられない、生活がかかっているのよ。
「ふぅー、よし行きますか」
両手で掴むと持ち上げる。こんなところでへこたれてられない。信用を獲得して、今度こそ生活向上を目指すんだから。
◇
あれから一時間が経った。結局三十分では広場まで辿り着けなかった。
「はぁー、やっとついた」
水汲みの仕事は辛い。重たいものを長時間持って歩くのがこんなに大変なことだったなんて、甘かったわ。水が零れないように神経を集中するのも疲れた。大人ばかりこの仕事をしていた理由が分かった。
一息つくと広場の端に歩いていく。そこには簡単な屋根のついたかまどと水瓶が置いてある。いつもこの場所で配給のスープを作ったり、芋を茹でたりしているの。
水瓶の蓋を開けると力を振り絞って水桶を持ち上げ、零さないようにゆっくりと水を中に入れていく。うぅ、腕が辛い……でもあともう少しだ。しばらくすると水桶に入っていた水を全部入れることができた。
「ふぅ、あとは採ってきたキノコね」
水瓶の蓋を閉め、水桶を一旦置いてすぐ目の前にある食料倉庫まで歩いていく。そこには見張りのおばあさんが座っており、ボーっと宙を見上げていた。私が近づくとはっと我に返りこちらに顔を向けた。その表情は警戒するかのように少し険しくなっている。
「何か用かね」
「あの、これ採って来たんで明日使ってください」
腰に回していた籠を取って目の前に差し出す。
「あー、分かった。ご苦労さん」
素っ気ない態度でさっさと籠の中からキノコを取り出す。そうして食料倉庫の扉を開けて中に入って行く。
両親が集落の仕事を手伝っていない影響は思ったより深刻だ。集落内では情報が広まっているのだろう、これほどに人当たりが冷たくなってしまっている。
現実を目の前にして心細くて胸が締め付けられた。でも、こんなところで負けるもんか。
ギリギリのところで前世を思い出して良かったのかもしれない。力を振り絞るように手を握り締めると、水瓶の近くに置いた水桶に近づいていく。水汲みはあと一回だ、しっかりと仕事をやりきろう。
私は再び川へ向かって歩き出した。