「どうかされましたの? デズモンドさま」
「いいや、愛する妻に、ようやく私の整えてきた領地を見てもらえたと、嬉しくなってな」
「デズモンドさま……」
しかしシャーロットは、すぐに申し訳なさそうにした。彼女の言いたいことは分かる。何せ彼女は、この領地にやって来てからというもの、一度も、こうして俺の領地を見て回りなどしなかったのだから。やむなく出かけるときも馬車の中で、窓から外を見るなど、しようハズもない。
俺はソッと彼女の手を引いて、手の甲に口づけてやった。
「はぅう……」彼女の顔は真っ赤になっていた。
――ウン、可愛い可愛い。
「私も君を放っておいたのがいけなかったのだ。気に病む必要はない。しかし、こうして手を握って外に出てきてしまったからには、私の領地を隅々まで案内しよう」
そうして軽く耳元に唇を近づけてやった。
「君が私に、その
――しまったッ! 何故俺はこんなところで噛むのだろうかッ! く、ぅうううう……、もっとビシッと決められるようになりたいぃ……。
とは思っても、シャーロットは顔を赤らめて、目元も口元も緩ませていた。これはこれでドッキリならぬドスケベ大成功なのだけど、しかし、流石にここで発情されるのはよろしくない。何せ、
「奧さま、自重なさってください。外でされてはならない
「ハッ、そ、そのような貌はしておりませんわっ」
慌てて取り繕う奧さまだったが、キャスリン、良い仕事だ。――そう、俺たち――ではなく、シャーロットにはメイドが付いてきていたのであった。
それもそうなのだ。いくら魔法が使えて、自分で自分の身を守れても、俺たちは貴族であって、領主と領主夫人。護衛兼、お世話係の人間がついていなくては、むしろおかしいのである。
だから、普段は
『貴族の男子たる者、この領内で起こる危険ごとき、自ら対処できて然るべきですなぁ』
とランドルフのお爺ちゃんは、俺を護衛するどころか別の護衛をつけることも許してはくれなかったのだ。――
――素敵だと思います。
「もちろん、旦那さまも自重してくださいませ」
と、内心でサムズアップを送っていれば、キャスリンは俺の方にも、涼やかな美貌の細い眼を向け、
が、
「先ほども奧さまのお胸を凝視しておられて、そのことも自重すべき点であると、私は愚考する次第でございます」
「「ふぇっ?」」と俺はビクついて、シャーロットは、今度は牝ではなく乙女の貌で赤くなり、慌てて自身のお胸を押さえておられた。
むにょんっ
と、魅惑的に形を変えて。
そんなん見せられて自重できるワケないやんけーッ!
と、叫びたくなるのを
「し、仕方がありませんわよ、キャスリン……」と、この最愛の奧さまは、
「だ、だって、……デ、デズモンドさまは、お、お胸がお好きなようですから……」
「ふぁッ!?」――待ってッ! 待って待って待ってッ! 我が
キャスリンはほぼ無表情に近い
――きっとクセになってたよ?
それでもキャスリンは無言で、細めの目つきで、
「デズモンドさまはお胸がお好きなのですか?」
――っぐッ!
「否定はしない」言外にそれ以上追及するなと眼で言ったが――、このメイド、あえて空気を読まない。
「奧さまのお胸がお好きなのでしょうか。それとも、お胸自体がお好きなのでしょうか? たとえば、私の胸は奧さまとは比べるのも
「そ、それは……」息もつかせぬメイドの口撃に、俺は助けを求めてシャーロットへと視線を送った。きっと彼女なら、
『キャスリン、デズモンドさまが困っているではないですか、デズモンドさまはわたくしのお胸に興味がある。それで充分ですわ』って……、
「わたくしも知りたいですわ」
《シャーロットはキャスリンの援護に回った。シャーロットの口撃。キャスリンは力を溜めている》
「デズモンドさまは、わ、わたくしのお胸を、それはそれはもう夢中でお触りになり、お、お吸いになられますわ」
言いながら顔を赤らめているシャーロットは、いつも通りに可愛らしいなんてぇもんじゃあなかったが、初春の日、陽にして、気淑く風そよぐ青空の下、口にして良い言葉じゃあないんだぞぉ!?
そして、奧さまはさらに踏み込んでくるのであった。
「それは、お胸が好きだからなのでしょうか、それとも、わたくしが好きだからなのでしょうか、或いは、大きなお胸が好きなのでしょうか。もしかすると、小さなお胸がお好きであったり……
――教えてくださいませんか、デズモンドさま」
2
え、何?
これって、なんてクイズ番組? しかも、正答の可否が俺の生死に直結しそう……。
俺は覚悟を決め、ゴクリと唾を呑み、滅茶苦茶眼を泳がせ、掌にも項にもジットリと冷たい汗をかき、拳を握ったり開いたり、グーパーグーパーして深呼吸をし、そして再び眼を泳がせながら(自分でも往生際が悪いっては思ってはいるのだ)、
「シャーロットのおっぱいだから……」
「嘘ですわっ!」
ビックぅ――んッ!
とした。
思わずいっしょに
「デズモンドさまは嘘を仰っていますわ! なんとなくわかりますもの。わたくしのことなど気にせず、ご自身の欲望を
と、ぷんすこ頬を膨らませておられることだったろうか――ってか、救いと言うか、俺、果報者だな?
加えて、
「そ、その……、わたくしのことを想ってくださるのは嬉しいのですが……」なんて言って頬を桜色に染めて肩を竦めながらモジモジされれば、惚れ直すどころではないのである。
――萌え殺される。この二十九歳児に。
「デズモンドさまがご自身の想いを押し殺されることはありませんわ。もしも、わたくしのお胸が大きすぎるて困る、わたくし自身よりもお胸の方が好きなどと言われれば、確かに悲しくはなりましょうが、わたくし、受け入れますわ。だって、デズモンドさまは、デズモンドさまなのですから」
心配そうな、しかし、『それでも信じていますわ』といった風情で、オズオズとしてエメラルドの上目を寄越してくる彼女は可愛らしいといったらない。胸がきゅぅん、としてしまったし、あまりの愛されっぷりに、心臓が血潮の代わりに血糖を送り出しはじめたのかと錯覚もしてしまったし(それだったら恋の病ではなく糖尿病になってしまう)、この娘は一生大事にしようとも思った。
そしてそれと同時に、この娘、裏切ったらヤバいことになるんじゃねぇのか(裏切る気など毛頭ないのだけれども)、とも思ってしまうチキンな俺なのではあった。
「それで、デズモンドさま、お答えは?」
おいコラメイドぉおッ!
「デズモンドさま、どうですの?」
と、メイドに揃って、奧さままでもいっしょに尋ねてこられる。
――おっぱいについて!
俺は内心汗ダラダラで、しかしもはや言い逃れの出来ないこの状況に――、
「シャーロットが、好きです。お胸は、好きです。大きなお胸、好きです。それでも、小さなお胸も、好きです。お胸に、貴賤はありません」
「まあ」
と奧さまは可愛らしく、眼も口もまぁるくされていた。
俺の方が、「まあ」だよ……。
その奧さまは頬に手を当てられて、初々しく頬を染めた「令嬢の構え」。そこには、軽蔑の色など
おっぱいが、
とでも答えれば、多分にウィットに富んだ答えになっていたかも知れなかったが、残念ながら俺は、自分がどこまでおっぱいが好きなのかわからなかったし、それは天秤の左右に並べられるものではないと思ったから、そう答えることにしたのだった。
だが、ちゃんと正直に答えたはずであるというのに、この胸の感覚はなんなのであろうか。胸の裡を曝け出した爽快感も無きにしも非ずではあったが、その際に、何か決して
俺は自身の、男の平らな胸へと、まるで心臓を捧げるかのように左手を当て、青い空を見上げ、その頬には一筋の魂の雫が滑り落ち……、
「そうですか、それでしたら、お触りになりますか?」
ふひゅんっ
と、俺の魂の雫は引っ込んだ。
「え……?」――メイド? メイドがナンデ?
マジで? 触っていいのなら是非触らせてもらいたいけれど……、
「デズモンドさま、触りたそうですわね」
シャロットッ!?(
「そ、そんなことは……」
しどろもどろだ!
「ですから、そのようにご自身の欲望を押し殺さないでくださいませ」と、彼女は諭すように言い出した。
「デズモンドさまは貴族であり、しかも領主なのですわ。もっと、したいことをなされば良いのです。確かに、キャスリンはわたくしのメイドではありますが、デズモンドさまが触りたいと
うぇえええいッ!?
と、妙な声が出そうになるのはかろうじて抑え込んで、
「…………コホン」貴族であり領主である威儀を最低限でも正した。
「シャーロットよ、私はそのように権力を楯に取って言うことを聞かせようとは思わない。キャスリンの気持ちというものがあるのだし、それに私が他の女性の胸を揉むことで君がどう思うか……」
「「構いません(わ)」」
「――――」この奧さまとメイド、息がピッタリだ。流石は幼いころから共にいるだけはあった。容姿は似ていなくとも、その息の合い具合はまるで仲の良い姉妹のよう。いやちょっとは容姿も似ている?
だがしかし、その息の合った様子で、二人して旦那さまに迫るとはなんたることか。しかも二人揃って妹分の胸を揉んでみてはどうか、などとは……、
俺、こんなとき、どんな顔をすればいいのか分からないの。
たぶんだけど、キャスリンは奧さまのあられもないご様子を何度も覗き見て――午前中のハッスルはやっぱり彼女が止めに来るまで続いてしまっていたのである。見られることに俺たちが少しずつでも慣れてきてしまっていることも問題ではあるけれど――キャスリンも俺たちの痴態に、性愛術で感じるとはどのようなことか、気になって仕方がなくなっているのだろう。
俺だって、いくら彼女のおっぱいがシャーロットと比べるレベルでもないほどに小振りであるとしても、おっぱいに貴賤はないと言ったからには、その小振りっぱいを思う存分にネットリじっとりと玩び、
もちろんシャーロットは愛している。そして彼女こそが一番だ。しかし、それでも男というものは心と
俺、ドウスレバイイノ?
しかし、シャーロットは、本当に何も思わないのだろうか?
「デズモンドさまがキャスリンのお胸をお揉みになって、わたくしが何を思うのですの?」
今だって、曇りなきエメラルドの
シャーロットは性欲を覚えてきているようではあるが、性的魅力によって、男が別の女性になびいてしまうかも知れないことを、理解も、意識もしていないらしい。いやいや、シャーロットから別の女性になびくなんてことはないけれどもな?――ウン。
この世界にはエロス、性欲はないとはいえ、もちろん所有欲、独占欲や嫉妬等々は存在するのである。それが、目覚めた性欲とは結びつかないのだろうか?
……うーん、わからない。もしも希望的観測で、
『やったー、おっぱい揉み揉みー』
などとヤらかして、シャーロットを悲しませることにはなりたくはないし、それにこの仲の良い姉妹のような二人の仲を、
それ以前に、俺とシャーロットの関係がこじれて、再び【
「奧さま」
とキャスリンが口を挟んでくれた。
「旦那さまは恐らく、私の胸を揉まれるご様子を奧さまが見られることで、奧さまが不快に思われないのか、嫉妬されないのか、と思われているのではないのでしょうか」
おお、流石はデキるメイドだ。それにデキない俺は便乗させていただく。
「その通りだ。私はシャーロットを傷つけたくない」
「デズモンドさまぁ……♥」
うむうむ、感激して潤んだ妻の瞳はいいものだ。
「大丈夫ですわ、デズモンドさまがしたいことをなされているのに、それを悪く思ったりなどいたしませんの」
おおお、なんという……むしろ夫の方が罪悪感に押し潰されそうになってしまうほどのシャーロットの良妻っぷり。――ウン、本当に。そのキラキラとしたエメラルドの瞳、眩し過ぎた。罪悪感が
「本当に? もしも旦那さまが私の胸をお揉みになられ、そこに夢中になってしまう様子をご覧になれば? 先ほどの旦那さまのお言葉からすれば、私の胸も、旦那さまは夢中でお揉みになられるのではないかと、愚考いたします」
このメイド、追い込み方がハンパねェ……。何がハンパねェかって、俺の方を向きながら言うところだ! ホラ、シャーロットがエメラルドの瞳を宙に彷徨わせ、その状況を、おそらくは如実に思い描かれ――、
チラリ
と悲しそうな眼で……、
「そ、それでも、デズモンドさまはわたくしを愛しておられますか?」
「もちろんだ!」
「ひゃわっ」
思わず力いっぱいになってしまった。だけどこの力いっぱい具合は、むしろ滅茶苦茶疑わしくはなかろうか。それに、俺が夢中で揉むことは彼女の中でも確定らしかった。嫌な信頼感だ。
シャーロットの驚きの声は、何度だってループ再生したいくらいに、そしてそうすれば確実に中毒を起こすだろうくらいには可愛らしいものだったけれども……。
――ホラ、見ろよ、メイドのあの細い目つきを。
普段と何も変わらないのに、滅茶苦茶疑惑の
そして、このほぼほぼ無表情メイドの涼やかな美貌を、快楽に歪ませてやりたいと思わない男はいないのだと思うが如何に。
「それでは、それも含めて試しにお揉みになっていただいては如何でしょうか」
ホラ、こいつ、こんなことを言ってもやっぱり表情変わんないんだぜ?
もはやシュールを通り過ぎてホラーだよ。――だが、
「キャスリンはそこまで私に胸を揉んでもらいたいのか?」
くくく、お返しだ。
「はい」
と答えれば淫乱扱いして
「!?」
そしてメイドは顔色をいっさい変えず、
「以前奧さまにお揉みいただいたときには何も感じませんでした。しかし午前中に、旦那さまに下着を見ていただいた際には、少々むず痒いような気持ちがございました。それならば、旦那さまにお揉みいただければ、感じるとは如何なるものか、性愛術とは如何なるものか、それが少しでも味わえるのでは、と思った次第でございます。
どうか、旦那さま、私の胸をお揉みになってはくださいませんか。私が感じるかどうか、お試しいただきたいのです。もしも、下賤なメイドの胸など揉むことは出来ないということであれば、私は大人しく引き下がらせていただきます」
ペコリ
と、頭を下げられた。
「――――」なんだよこの追い込み方はッ!? 揉まないとチキンであるどころか鬼畜みたいじゃないかッ! 綺麗な女性に胸を揉んでくれって言われている滅茶苦茶美味しい状況の筈なのに、どうしてこんなにも嬉しくない気持ちを抱かなくてはならないのか!
おっぱいを揉む時はね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか――なんというかぁあッ!
しかもチラリとシャーロットを見れば、
『お願いですわ、揉んであげてくださいませ。それに、信じておりますわ。他の女性の
と言わんばかりの視線をお寄越し遊ばせにならせられラレらっしゃっしゃぁあッ!
――イカン、最後の方は顎が出てしまった。COOL、COOLになるんだ、俺。貴族たる者、いついかなるときも優雅たれ。だが、何故おっぱいを揉むという嬉し恥ずかしな行為が踏み絵的行為、拷問に近いものに早変わりしてしまっているのか。
だがしかし、それならば俺にはもはや選択肢なる物は存在しないワケであって……、
「わかった。揉ませていただこう。シャーロットも、安心するといい。私は、たとえ夢中になってキャスリンの胸を揉もうが、私が一番愛しているのはシャーロットなのだから」
握られた手を、指と指を絡めた恋人結びに握り直して、信じてくれとばかりに力を籠めた。
「デズモンドさま……」
良かった、『嘘ですわ!』って言われなかった。
頼もしげに握り返してきた妻の華奢な指の力を感じれば、キャスリンは俺の手の届くところで、メイド服を押し上げる小振りな胸を張って、俺に差し出してきていた。
だからな? ホント、なんなんだよこの状況……、空はこんなにも青くて、春の陽気は心地良い風と
俺は観念して、メイドの胸へと手を伸ばした――。
3
ふにゅんっ
もみもみ……
「…………」
「…………」
「――――(ぎゅっ)」
もみもみ……
――どうしよう。
俺、おっぱい揉んでる筈なんだけど……。このメイド、全然反応しやがらねェ……信じられるか? これで揉まれてるんだぜ?
おっぱいを揉まれている筈なのになんら感じることなく(羞恥も、嫌悪も、快楽も、随喜も)、ほぼほぼ無表情の顔のままでおっぱいをふにふにと揉まれ続ける。触れられれば(おっぱいに限らず)、何らかの反応を示そうものなのに、野外でおっぱいを揉む俺を、細い目つきで
――あれ? 俺が触れば転生チートが発現して性感が
初春の青空、心地よい風に、ジワリと溢れ出した俺の嫌な汗でヒヤリとさせられてしまう。しかも、ギュッと奧さまに握られたままの反対の手こそ汗ばんできて……。
「えっと……、感じるか?」
「…………少し? でしょうか」
「…………(もみもみもむもむ)」
「――――(ぎゅっ)」とシャーロットが手を握りしめる。
おっぱいを揉むのって、こんなにも緊張感のあることだったっけ……? 確かに、この手で揉んでいる感触はおっぱいだ(それがおっぱいじゃないワケがないのだけど)。この大きさでパッドを詰めていることもなく、メイド服と、その下のブラの下には生身の乳房が存在している。そんな感触なのだけど……、
「「…………」」
「――――(ぎゅっ)」とシャーロットが手を握り続ける。
こ、これ、何時まで続くんだよ……、こんな緊張感で揉み続けたら、いくらおっぱい好きでも、おっぱい嫌いになっちゃうかもしれないぞッ? デキるのであれば、生で揉んで、乳首を責めたり、舐めたり吸ったりしてあらゆることを試してやりたい。だがここが野外であれば、そんなこと、ヤれる筈もないのである。それならいっそ帰ってから……、
嬉し恥ずかし、メイドのおっぱいを揉んでいる筈なのに、時よ止まれ、おっぱいは素晴らしい、と言うどころか、時よ終われ、おっぱいにトラウマを持たせないでおくれ、とすら思ってしまうのだ。
「「………………(もみもみ)」」
「――――(ぎゅぎゅうっ)」
「「……………………」」
――誰かッ! 誰か俺をこの沈黙から助けてくださいッ!
と、そんな俺の祈りは天へと通じたらしかった。
「あ、デズモンドさま」
「うぉおっ?」
と、
向こうから、いかにも農婦といった風情の女性がやってきていた。
今の、見られてた? 見られていても暇を持て余した(?)お貴族さまの
と、俺が内心のチキンハートをビクビクバクバクとさせていれば、そのまま彼女は、貴族であり領主であって、そして守り神のように思っている筈の俺の
――ちょっとホッとした。そして慌てて領主の威厳を整えた。
だからメイドが、
と一つ肩で息をするのを、俺は見逃してしまったのであった。
しっかし、こちらに近づいて来る領民の彼女にはなんら臆した様子はない。だがそれも当然の話ではあるのだ。普段から独りで領地を出歩き、視察し(散歩じゃない、視察だって言ったら視察なんだから!)、フレンドリーに(ただし最低限の威厳は保っている――
「今日採れたイチゴ、食べますか?」
「ああ、ありがとう」
パシィっ、
と、投げつけられたイチゴを見事キャッチした。
貴族で領主の俺に対して、見事なまでの不敬具合だったが、オーバースローで、まるで迫害するかのように、或いはトマト祭りのように、思いっきりぶつけてくるわけでもないので、器の大きな領主であるデズモンドさまとしては、なんら咎めることなどないのである。これでも彼女たちは敬意を以て一線は画していたし、日々の交流の賜物として俺も嬉しくはあるからな。
「もうそんな時期か。また今年もマイアのイチゴが食べれるとは、領主をしている甲斐もあるというものだ」
そう言うと、彼女はニカッと破顔した。日に焼けて、健康そのものの農婦の顔だ。気持ちが良く、精悍と言ってすら良い。亜麻色の髪を三つ編みに結び、とび色の瞳が太陽の光を良く吸う。俺とそう変わらない歳で、日頃力仕事をしている所為か肩幅も大きく、そして以前に見せてもらったところによれば、その長袖シャツの下には逞しい二の腕が秘められている。
とても――立派でした。
ノッシノッシとズボンの大股で歩き、その胸も尻も豊満だ。胸の大きさだけでいえばシャーロットといい勝負なのだが、彼女と比べれば、この華奢な肢体で魅惑の果実を維持している我が妻は、まさしくファンタジー。魔法を使える貴族の面目躍如といったところに違いない。
マイアは小脇にイチゴの入った籠を抱えていた。
彼女が一足先に投げつけてきたものと同様、太陽の光を浴びて艶々と光沢を放つ大振りのイチゴたちは、
「ん? 珍しいですね、デズモンドさまが誰かといっしょにいるなんて」
と彼女は俺のシャーロット、とキャスリンに目をやった。そうしてすぐにその瞳を真ん丸くして、キラキラと輝かせだす。元々
「うわぁ……すごい綺麗……お姫さまみたい。女中さんもいるし……デズモンドさまが貴族だったってこと、改めて思い出しました」
悪かったな、いつも独りで。そして、貴族に対して、領主に対して、不敬であるぞ。
――って、他の住人たちと話すときの彼女は、もっと
「デズモンドさま、イチゴ、食べに来られます? お茶も淹れますよ」
「ああ、伺おうか」
平民のお茶とは言っても侮るなかれ。これが十二分に美味い。というか、俺の屋敷の紅茶って、この辺りで作られているものだから、同じものなのだ。シャーロットも確か飲んでいたから、問題はない筈……。しかし、チラリと俺が視線を向けたシャーロットは、
――うぉおうッ!!
と、
先ほどまでの可愛らしい様子が嘘のように、冷たく
気高く、平民など、話すことも、仰ぎ見ることも畏れ多い由緒正しい貴族令嬢モード。
マイアを平民と見て取った彼女は、
『この平民、デズモンドさまに不敬ですわ。ですがデズモンドさまにはお咎めになる様子もなくて……。そもそも、デズモンドさまは貴族でありながらも、領民と親しく交流をもたれていたとキャスリンから報告は受けておりましたし……、それでは、わたくしが咎めれば、むしろデズモンドさまに咎められてしまうのはわたくしの方……、…………ハッ! いいえ、いいえ、それで罰を受けたいなどと、そんな、はしたなく、浅ましい……。ですが、デズモンドさまは淫乱なわたくしがお好きなご様子でして……』
――って!
待て待て待て待て! 俺、なんでそこまで彼女の雰囲気を読み取れてしまっているんだ? いやまあ確かに、シャーロットの方でも俺が思っていることを
「シャーロット」
「はい」
俺が呼べば、シャーロットは美しいビスクドールのような様子で俺に従ってくれた。貴族の女性なんて、子供を産む道具でしかないという、貴族社会の悪しき風習を思い起こさざるを得ないような、そんな従順さだった。
貴族の女性として躾けられてきたシャーロット。
そして、俺やキャスリンに見せる素のシャーロット。
どちらも彼女自身ではあったから、貴族としてあろうとするシャーロットを否定などはしない。それに、そんな貴族の女性を俺色に染め直していく愉悦のためにも貴族モードは残っていて欲しいのだけど……しかしそれでも、『ダムウィードの異端児』などと呼ばれ、このアルドラ領の領民たちと、立場としての身分の違いはあれど、同じ人間として親交を深める俺、デズモンド・ダムウィードの妻としては、平民を見下すようなことでは駄目だと思うのである。
俺はシャーロットの耳元へと唇を近づけ、沁み込ませるように囁いてやった。
「シャーロット、貴族としての威儀を正すのは良い。だが、それで平民を見下すことはいただけない。貴族としての教育がどういうものであるかは、三男であろうとも貴族の末席であった私も良く知っている。しかし私は思うのだ。貴族であるからには、むしろ平民たちに寛容であるべきだと」
シャーロットは静かに俺の言葉に耳を傾けていた。
しかし、これまでに貴族としての教育をこれでもかと施され、子供を産めないということで、こんな辺境の領主にすぎない俺なんかのところに嫁がされ、自分を否定されてしまった彼女なのだ。
『貴族でも、平民でも、同じ人間なのですよ』
などとご立派なことを言ったところで、彼女の心に届くはずがない。二重否定で帳消しになるなど、そんな馬鹿でお手軽な話は存在しないのだ。だからこそ俺は、彼女を否定せず諭した。
「貴族であるからこそ、平民に寛容であり、弱者へと手を差し出す。それこそが、貴族が貴族である、本当の所以なのではないのかな?」
自分でこう言うのは、とてもとても烏滸がましくって、恩着せがましくって、偽善者はなはだしくって好きではないのだが、
「私が、シャーロットに手を差し出さずにはいられなかったように」
ピクンっ、
と、彼女は反応していた。これなら彼女に刺さったようだ。が――、
「――いや」と俺は思い直した。何故ならば、
「そう言ってはシャーロットに失礼だな。シャーロットは弱い女性ではないし、私はシャーロットを助けたくて手を差し出したのではない。ただただ君が欲しかったからだ」
ひくひくっと、彼女の震えが伝わってきた。それには鼻の穴が膨らみそうになってはしまったのだが、
「たとえが悪かったな。平民を寛容し、弱者に手を差し出すのと、好きな女性が欲しいということは別のことだ。――悪い。どうも私は話が上手くない。だから上手くは言えないのだが、言いたいことは、貴族の威儀は保っていても、平民を蔑むような態度は改めて欲しいということだ」
――俺、結局元に戻ってんじゃねぇか。
うーん、ビシッと決まらない。真っ直ぐに要求を伝えても、今のシャーロットであれば言うことを聞いてくれるような気はしているのだけれども、無理矢理は嫌だ。シャーロットの納得がいくように、彼女を否定しないように搦めて納得させるつもりが、堂々巡りで結局要求そのものを伝えてんじゃねェか。
はぁ、俺、説得とか向いてないんだよなァ……、つくづく、腹芸の応酬ばかりの、貴族の社交界なんかと縁がなくって良かったと思うのだ。
――ま、シャーロットの説得は失敗だ。
そうしてチキンな俺は、彼女に嫌われないよう、取り繕うのである。
「私はそう思うが、シャーロットにはシャーロットの考えがあるだろう。だから、私の言葉は一つの意見として、――まあ、聞き流しておいてくれて構わない。済まないな。
このイチゴも、彼女の淹れてくれるお茶も美味しい。是非とも私は君と共に味わいたいと、常々思っていたのだが、君が嫌がるのであれば……」
キュッ、と、恋人結びのままであった指に、力が籠められた。ソッと、気恥ずかしげに潤んだエメラルドの瞳が俺を見上げてきた。そうして彼女は消え入りそうな小さな声で、
「狡いですわ、そのようなことを言われては、わたくし、断れないではないですか。どこまでも――お供をいたしますわ」
「シャーロット……」
俺と我が最愛の妻は見詰め合って――、
「――コホン」
おぉっとぉ! 危ないアブナイ。絶妙なメイドの咳ばらいがなければ、思わず抱きしめて唇を重ねているところだったぞぉ? おかげで領主としての面子も保たれた。
そして、彼女はまた握った手指に力を込め、口を開く。
「……すぐには無理かも知れませんが、デズモンドさまの仰ったように、平民の方々とも、関わってみようと思いますわ」
「シャーロット……」
そして彼女はちょっと悪戯っぽく、そして、艶っぽく微笑する。
「何せ、わたくしは〝普通ではない〟貴族のデズモンドさまの妻なのですわ。わたくしも、共に……」
ふふふ、その〝普通ではない〟の成分について問い
うむうむ、
「二人、仲良いんですね。もしかして、噂の奧さまですか? ずっと二人の世界に入ってしまわれて」
うぉうッ!?
と叫びそうになったのはかろうじて堪えた。マイアが横から微笑ましそうに見ている。領主の面子、領主の威厳。俺は精いっぱいの威儀を正して、
「ああそうだ。彼女が、私の愛する妻、シャーロットだ。シャーロット、こちらは、農婦のマイア。私たちの屋敷にも野菜や果物を
「マイアといいます。はじめまして、奧さま」
そう言う平民の彼女に、シャーロットは軽く会釈をしていた。
善し善し、良いぞ。滅茶苦茶な進歩じゃあないか。流石は俺の嫁(ガチ)。
って、しまった。男女の情愛にかまけるのは、軟弱者って言われるんだった。――ああ、いや? それは貴族の間だけだったな。平民の中では、軟弱者とは言われない。むしろ夫婦仲が良いとして好まれる――が、やはり情愛とは言っても、性的、エロスを含まないのがミソではあるのだが。
愛欲と性欲の境界なんて分かったもんじゃあないのだけれども、この世界で二十八年間暮らした上で、前世の記憶を思い出して照らし合わせられる俺にとっても、これは愛欲、これは性欲、などと明確には区別できないのだ。
しかし、シャーロットは確実に俺の影響で性欲が湧くようになっているけどな? おじさん、無垢な娘にイケナイことを教えまくってる感覚で、ムラムラ、ドキドキしっぱなしです。
と、絡め合ったままの指をにぎにぎとしてヤった。
「やっぱり!」とマイアが声を上げた。「デズモンドさま、良かったですね。デズモンドさまからも、奧さまからも、お互いにさっきからずっと手を握っていられていますし」
………………しまったッ! ずーっと握りっぱなしだったッ!
人前だというのに、あまりにも自然すぎて、忘れてしまっていた。
照れ隠しに齧ったイチゴが、やけに甘かった。そして甘酸っぱいっ! にしても、改めて指摘されたこの気恥ずかし過ぎる感覚はなんなのであろうか! しかも微笑ましげな、ってかマイア、ニヤニヤしてんじゃねーよ!
エロスはなくとも、
『あらあらまあまあ』
は、あるのである。
うぅう、恥ずかしい……。ホラ、シャーロットだって、態度は軟化させるとは言っても平民の前、人形みたいにおすまししているけれども、その頬はやはり薄っすらと赤らんでいるのである。
その可愛い様子に、俺は思わず
「旦那さま、それ以上顔を崩されるのは
流石、ヤるじゃないかキャスリン。
いくら俺がスウィート貴族マスクでも、伸ばしていい鼻の下の長さというものが存在するのである。その
「ええと、メイドさん――」と、マイアが言葉を詰まらせていると、
「キャスリンと申します。マイアさん、良しなに」慇懃に、優雅に。メイドのキャスリンはお辞儀をして
「ほぉお……」惚れ惚れするような仕草に、マイアが感嘆の声をあげる。
ふふふ、これが貴族の従者だよ、君ぃ。
俺の従者じゃないがな! ランドルフお爺ちゃんめぇ……。
だが、俺が優越感と噴飯に苛まれている暇などはないのではあった。
「キャスリンさん、大丈夫ですよ。デズモンドさまは普段からけっこう、表情に出る方ですから」
………………。
メイドよ、ほぼほぼ無表情な
キュッ、
と、シャーロットに絡めたままの指に力を籠められた。
『わたくしがおりますわ』
と。
――ウン、それはとてもとてもありがたいし、嬉しいものなのだけどな? 思わずそうしてしまうほどに、今も俺、顔に出てた?
マイアだって微笑ましく見てやがるし……、くぅう、威厳なんてそもそもなかったって言うのかよッ! ……くそぅ……。
「デズモンドさまは知っておられるでしょうが、それでは、お三人とも、私の家に案内します」
気恥ずかしくとも今更手を離すことも出来ず、俺はむしろ自分からも指を絡めてシャーロットとお手手を繋ぎながら、農婦の大きなお尻についていくことにするのであった。
4
「まさか奧さまがこんなに話の通じる方だったとは知りませんでした」
「わたくしこそ、マイアがそこまで精通していたとは、驚きですわ」
うふふ、あはは。
と、女性が談笑している中で男一人って、どうしてこうも辛いのだろうか。
マイアの家で、俺たちはおもてなしを受けていた。
小ぢんまりとしたリビングには必要最小限の物が置かれ、しかし、平民の、農家の夫婦が住んでいる家にしてはそこはかとなく洒落た調度である。それは、そうしたことに気を遣えるほどの余裕があるということだ。領主としては余裕のある領民の生活に満足である。
その中央のテーブルに、俺とシャーロットが隣り合って座り、その向かいにはマイア。そしてキャスリンは、
と、
まるで全自動お茶汲み装置のように――否、そんなチャチなモンじゃあない。そのあまりにも優雅でさりげない自然さは、まるでカップに勝手に紅茶が湧き出していくよう――シャーロットのカップへと紅茶を注いだ。そうしてマイアの方にも。
俺の分も、飲み干せばきっと注いではくれるだろう。
キャスリンは椅子をすすめられても、まるでこの家付きの妖精のようになって、メイドの務めを果たしていた。農家のリビングにメイドとは似つかわしくなさそうだが、そこは一流メイドのキャスリン。
「気配遮断」で自然に紛れ込んでいる。
……だから知らない間に刺されそうで怖いんだよ、この
「私はあのシーンが素敵だって思いましたよ」
「わたくしもですわ。今まですれ違い続けていた二人が、ソッと手を触れ合わせて――」
「「きゃーっ!」」
「…………」
今この場で、最も
よく、孤独を
誰も声をかけず、気に留めることも、気に留められることもなく人々は行き過ぎていく。同じ人間たちであるのに、通じ合えないだけではなく、お互いただの障害物であるかのように過ぎ去っていく。――言い得て妙だ。
が、そこに俺は一つ付け足したいのである。
自分の存在を疑いたければ「乙女の園」に行けば良い。
『どうして俺はここに
「シャーロットさま、それではこちらの絵物語は知っていますか?」
「もちろんですわ。絵師から直接取り寄せ、最新刊もチェック済みですわ」
「流石です。オスカルさまのあの手の平返しには驚かされていたのに」
「「実は――、きゃーっ!」」
シャーロットとマイアが身を乗り出すようにしてはしゃぎ合う。紅茶を口に運び、イチゴを摘まむ。
ホント、どうして俺はここに
俺も彼女たちに倣って――而して無言で紅茶を口に運び(ほろ苦い)、イチゴを摘まむ(甘酸っぱい)。どっちも美味しい筈なんだけどなあ……。
どうにも、シャーロットの好きな絵物語を、マイアも好きであったらしく、家に案内された途端、シャーロットは棚に置かれていたその本を見つけたのであった。そうしたらあれよあれよと言う間に一気に二人は意気投合。そしてロマンス絵物語に花を咲かせ、先ほどから領主であり貴族であり守り神であり、そして夫である俺をほっぽっていた。
まあ、妻が楽しそうにしているのはいいのだけれどもな?
俺じゃあ彼女たちの趣味には入れないしな?
それに、平民と打ち解けてくれるのはむしろ望むところで、友達が出来るのはいいことだしな?
たとえ俺に友達がいなくて、先ほどから妙に、メイドの細い眼が、憐れみを含んでいる気がしてしまうほどに、内心寂しく、動揺していてもだな?
……………………。
…………。
帰りてぇ……。どうして俺はここに
もうひと口、紅茶を咽喉に通した。
「きゃーっ」
「きゃーっ」
年甲斐もなく――と言えばぶっ殺されかねないが――黄色い歓声をあげてはしゃぐ二人。
アラサーであろうとも、女性はいつだって乙女なのだなぁ、と、しみじみしてしまう光景なのではあった。それだけに、
「…………デズモンドさま」
『きゃーっ』と、急に話しかけられても、俺の方が黄色い声を出すのは、どうにか踏みとどまった。
「どうした、キャスリン」
奧さま関連以外で話しかけてくるのはこれがはじめてではないだろうか。と、若手女子社員から話しかけられた部長のような気持ちで応えてしまう。
「いえ」とこのメイドはいつも通りの涼やかな美貌で、「マイアさんは字が読めるのですね」そこには少々感心した響きがあるようにも思えた。
「ああ、それか」
俺はちょっと得意げになりながらも、
「無料の学問所を作ってある。読み書き
と言いかけて、言葉を飲み込んだ。
「他にも……?」
「い、いや……」
この場でそれを言うのは
もしもこの家族がそういう家族だったら、いたたまれないことこのうえないからな……。
「まあ、とにかく、私は平民も字が読め、書け、計算も出来るよう、そうしたことにも努めているのだ」
「感服いたしました」
メイドの素直な賛辞には鼻も伸びてしまいそうになる。鼻の下じゃあないぞ?
これがランドルフのお爺ちゃんであれば、
『識字率が高く、下手をすれば街の者よりも学識を持った町民たち……、ほっほ、デズモンドさまは面白いことを為されますなァ。これでは無知による搾取を受けつけず、批評的思考により権威にも盲目的追従はしますまい。デズモンドさまの民はどのように育つのでしょうなぁ。ほっほ、面白い』
と、そこはかとなく薄暗くて血の薫りがする、褒め言葉とも言えない論評をなされていたものだから冗談じゃあないのである。そこに猟犬の牙のようなものが見え隠れしたことには見ないフリをしておいた。俺はただただ、その方が良いんじゃないかって思っただけで……。
血生臭さや打算とは無関係なのである。
ただただ深く考えていなかった、ってだけでもあるのだけれども……。
――まったく、このメイドを見習って欲しい。爪の垢でも煎じて飲めばいいというものだ。もしもそんな機会があれば、ご相伴にあずかるのもやぶさかではないけれど……。
本が売れる田舎町なんてここくらいのもんじゃないのか? ちなみに、うちの領は農作物や畜産物の評判も良く、そのおかげで平民の農婦でも絵物語を買えるくらいには潤っているのである。しかし、よく考えれば、シャーロットの好みがこの町の領民には丸わかりってことで……、言うなれば、自分の好みの同人誌が、
『領主夫人ご愛読、ヴィヴィアーヌ先生の新刊!』
と、ポップ付きで並べられているようなものなのだ。俺だったらもうこの町にはいられない。よかった、この世界にエロスがなくて。もしもあったのならば、シャーロットポップの横にデズモンドポップが置かれて眼も当てられないことになっていた。
………………。
――ま、まあ、共通の趣味のおかげでシャーロットは友達ができたんだから、良いよね…?
だが友達が出来るとしても俺のおすすめを置いてもらいたくはない。
と、自分の知らないところで好みが曝されてしまっていたシャーロットちゃん二十九歳は、やはり平民で農婦のマイアと盛り上がりに盛り上がっている。
――俺、つまんない……。
イチゴを摘まめば美味しいが、領主の威厳を保つ必要がなければきっと、
しょぼーん、
って、顔をしていたとは思うのである。前世のフェイスなら、誰もが眼を逸らしただろうが、今世のイケメン貴族フェイスなら、世の女性たちは放っておけずに慰めてくれるに違いないのである。まあ俺にそんな顔は出来なかったけどな……。
「はぁ、オスカルさまカッコイイなぁ。私も、『きっと――俺は、そのためにここに生まれてきたんだと思う。君を、愛するために』って言われてみたいですね」
と、マイアがしみじみとした様子で息を吐いた。大柄でも、農婦でも、見目麗しい女性の多いこの世界、マイアの憂いを含んだ吐息は艶めかしく、その厚めの唇には視線を吸い寄せられそうになるものである。だが、暗殺者メイドの、ほぼほぼ無表情の細い瞳の前ではグッと堪えるしかなかったし、それ以前に、
「――――」
「……あれ、どうかしました? シャーロットさま」
と、マイアは不自然に停止したシャーロットに声を掛けた。日焼けした農婦が見詰める前で、シャーロットはチラリと俺を見て、ちょっと視線を落としたかと思うと、また俺を見て、
カァアアア……
と頬を赤らめるではないか。
ウン、止めてくださいごめんなさいお願いします。
そう言えば言ったんだよなー、あの台詞。シャーロットとのエッチ中に。だけどここでそんな反応をされたら俺だって恥ずかしくなってしまうし、何よりも、
「あ」
と、マイアは気がついてしまったようだった。頬を赤らめながら俺にチラチラと視線を向けてくるシャーロットと俺を見比べて、
ニマリ、
と、決して平民が領主に浮かべてはならないような、生温かい視線を向けてきた。
『ふぅーん、へぇー、ほぉーん、あらあらまあまあ、デズモンドさま、やりますね』
くぅうっ、その目をやめるんだ! 不敬であるぞ!
そんな羞恥の巻き込み事故を起こされた俺を他所に、マイアはシャーロットに微笑むのだ。
「良かったですね、シャーロットさま」
「……………………はい」
蚊の鳴くような、消え入りそうな小さな小さな声。
顔を耳まで、イチゴのように甘酸っぱく染め上げて俯く最愛の我が妻を見て、
「可愛い……」
「ふぇッ!?」
ポツリとマイアが本心を漏らしてしまう。シャーロットはそれを耳にし、相変わらずの可愛らしい声で顔を上げた。美人な上に、可愛らしい成分マシマシ盛り盛りで赤らんだ顔も、恋色に潤んでしまったエメラルドの瞳も丸見えだ。
「――!」マイアが固まっていた。
――ウンウン、わかるぞ、その気持ち。
我が妻の可愛らしさにはビックリしてしまうよな。しかも俺は、以前の、養豚場の豚を見るような眼や、死んだ魚のような眼も知っているだけに、この可愛さはひとしおなのである。――が、
「あっ! す、すいません、私、シャーロットさまに失礼なことを……」
ハッと気がついたようにマイアは慌てた。
おいおい、それくらいで謝るならもっと先に謝る相手がいるのではないのかね、チミィ。その可愛い奧さまの旦那さまとか、旦那さまとかぁ!
さっきの生温かい眸は十分に不敬案件だとは思うが如何に?
「ご安心ください、マイアさん」とデキるメイドがフォローに入った。「マイアさんはただただ感想を述べられただけ。それにシャーロットさまが可愛らしいのは自明の理。可愛らしいものに対して可愛らしいと言うことの何が不敬になりましょうか。――そうですね、デズモンドさま」
「あ、ああ」
――うわっ、こっちに来た。
俺のことはフォローしないクセに。だがこのメイドの振りを全力で返すことにはやぶさかではないのである。
「そうだ、シャーロットは可愛らしい。可愛らしいシャーロットに可愛らしいと言うことに何が悪いことがあろうか。何もない。むしろ可愛いと言わないことの方が罪だろう」
領主らしく、淡々と、威厳を以て述べてやったのだ。
「うわぁ……」
とマイアのとび色の眼が生温かくなった。
――何だよその反応はッ! 不敬であるぞッ!
しかし、俺の横にいるシャーロットは、
カァアアア、
ぷしゅぅううう……
などの
――ウン、可愛い可愛い。
だから思わず机の下で、そのムチムチの太腿を撫で回してあげたくなっても――おかしくは、ないヨネ?
5
くくく、奧さん、スカートの上からでも、その肌のすべすべ加減と肉の柔らかさがわかるじゃないか。
なでなでさわさわ。
マイアたちからは死角になっているテーブルの下で、シャーロットの足を撫で回す。
「ふぅ、う……」シャーロットの、赤みの成分が変わりだした。
「どうかされましたか、シャーロットさま」
マイアが真剣にシャーロットを心配していた。
――俺、セクハラしたくなるやつの気持ちが、滅茶苦茶わかってしまった。
「いいえ、なんでもありませんわ。……んぅ」
こんなの、燃えないワケがない。
さわさわと撫で回しながら太腿の内側へとソッとスウィープさせていってやる。シャーロットはモジモジと太腿を擦り合わせて、際どいところへ向かおうとする俺の指を防ぎだす。
だがな、シャーロット、ぶっちゃけ俺は本丸へと攻め込んでやるつもりはないのだよ。
モジモジと腰を揺する彼女の太腿の谷間、キュッと閉じられむにゅっとカタチの変わっているお肉をなぞれば、向こうの太腿へと越境してやった。
「大丈夫ですか、シャーロットさま」とマイア。
「だ、大丈夫ですわ……。……ン……」
朗らかな笑みを浮かべようとしながらも、スカート越しに太腿を撫で回すいやらしい手に耐えて艶っぽく顔を赤らめる愛しの我が妻。こんな態度を取られれば、おじさんの劣情は燃え滾ってしまうワケなのだ。
それにシャーロットも、
『駄目、こんなところでは駄目ですわ、ですが……、こ、昂奮してしまっておりますの、わたくしはデズモンドさまに、もっと、もっと淫乱にされてしまいたくって、悦んでしまっておりますのぉ……』
そんな風に思っているのが、俺には、何故か手に取るように分かってしまうのである。
『
――そのお汁を是非この紅茶に入れたいッ!
「どうかしましたか? デズモンドさま、鼻の穴が少し膨らんでいますが」
「いいや、なんでもない」
やべぇ、マイアに指摘されてしまった。領主の威厳、領主の威厳……。
だがキャスリンよ、教えてくれても……いや? この場合、俺は彼女の敵だから注意するわけがない? 奧さまを気持ち良くして差し上げているからひとまず許すけど?
そんな気がしなくもなくなくもない。
「本当にシャーロットさま、大丈夫ですか?」マイアが心配そうな顔をした。
ふーむ、そろそろ止め時かな?
残念ながらチキンでセクハラ初心者の俺では、ぶっちゃけこれくらいで満足ではあったのだ。朝にも昼前にも散々ヤったしな。
はぁ……、ムチムチシャーロット太腿、幸せぇ……。なーでなーで、さーわさーわ。
「あ……」
と、太腿から手を離せば、シャーロットは残念そうな声を出した。
マジで……? この娘、もっとして欲しいの? それは、やぶさかではないのだけれど、
「どうした?」俺は白々しい声で訊いてやった。
「もう、デズモンドさま、おわかりになられてるくせに、酷いですわ」
ふふふふ、これがセクハラをされた女子の顔かね? 発情しておねだりする淫乱娘じゃないか。しかし、流石にもうこれ以上はする気は……と、手を引きかけたところで、
スルリ、
と、シャーロットの嫋やかな指が俺の股間へと滑り込んできた。
――ふぉうッ!?
彼女は微かに口元を歪ませ、濡れた
ヤベェッ! 滅茶苦茶背中がぞわりとしたぞぉッ!?
その
『デズモンドさまはわたくしに悪戯をして、こんなにもおち×ぽを硬くしていらしたのですわね? 本当に、槍みたいに硬くなっておられますわよ?』
すりすり
――ふぐぅッ、うッ! うぅうううッ!
『お返しですわ。わたくしに悪戯したことと、触ってくださらなかった、お・か・え・し♥』
――うぅううう……、
シャーロットめ、こいつ、俺の弱いところをちゃんと覚えてやがるっ。だって今朝、俺のおち×ちんをシコシコにゅぽにゅぷしながら、乳首をペロペロして滅茶苦茶上目で俺を観察してきていたのだったから。
ズボンの膨らみを、彼女は、まるでハープでも爪弾くかのようにして、
するり、するり
と撫で回しはじめた。
思わず、ビクンッ! と、腰が跳ねそうになるほどの鋭い快美感ではあったのだが、マイアの手前、この快楽に身を委ねるワケにはいかないのである。
「どうされましたの? デズモンドさま」
シャーロットの口元は淫靡に歪んで、嗜虐的でエロティックな視線で俺を見詰めてきていた。チロリ、とピンクの舌で軽く唇を舐めれば、ズボンの下のお肉の塊が、思わずビクッ、ビクッと跳ねてしまうのだ。
――こ、このぉ……、負けるかぁ……。
「……ふっ」
シャーロットが鋭い息を吐いた。何故なら、背後に回った俺の指が、
むんず
と、奧さまの豊満なお尻を、スカート越しにお鷲掴み申し上げたからであった。
むちむち、むぎゅむぎゅ
安産型で、適度なハリと脂肪を蓄えた極上のお尻。こねくり回すようにすれば、今度は軽くでも、奧さまの腰が揺すれだす。だが俺が揉めば揉むほど、すりすりと股間をまさぐる彼女の指も止まないのである!
くぅうッ!
そ、そんにゃ風に摘ままれにゃら……、しかも、挟んでシコシコってぇ……。
――ふ、ふぐぅううう……っ、
俺は愛する妻に、テーブルの下で固くなったおにんにんを押し揉み、撫でられ、擦られた。そのお返しに、彼女のお尻の割れ目に指を忍ばせてやるのである。
――濡れてる……。
イケナイ
領主の威厳を保つため、極力顔が変化しないように気をつけてはいるのだが、内心では下劣な笑み、浮かべまくりなのである。だが、シャーロットの責めも巧みになっていた。俺なんて、元から女性の弱い場所をいやらしく触っているだけだというのに、この娘ったら、
くんっくんっ、
と、その律動がマイアにばれないような巧みさで、俺の肉槍をぐりぐりと掌で押し込み押し揉むではないか。
なんて上達具合ッ! シャーロット、怖ろしい娘ッ!
彼女の手の平に押されてズボンの下は大洪水で、彼女だってスカートが濡れるほどの大洪水。領主夫婦そろって、領民の家で迷惑はなはだしいものの、これは負けられない戦いなのである。
「んひィッ!」
シャーロットがビクンっと跳ねた。
「だ、大丈夫ですか、シャーロットさま、先ほどよりも顔が赤くなって……」
「し、心配ありませんわ、マイア……。そ、その……、思い出してしまって……」
シャーロットのその言葉で、先ほどから、目くばせするように、そして何かしらの想いを伝えあうようにして見つめ合う俺たちに、マイアは気がつくものがあったらしかった。
「あら、ご馳走さまです」
マイアは、シャーロットと俺が、二人の世界に這入り込みかけているのだと解釈したらしいのだ。そうして、生温かい眼が俺の方にも寄せられたとき、
「ぅぐぅッ!」シャーロットの指が玉の方にもかかってきたではないか。
「………………」
「………………」
――ウン、追及されなかったのは善いが、何も案じてもらえないのも案じてもらえないで悲しいぞ、マイアよ。しかし、ヤバい……、このままじゃあ、こんなところで射精させられてしまいそうだ……。だが、ここで引くのはなんとはなしに嫌だ!
「……ふっ……」
シャーロットから抑えきれない甘い息が洩れた。
俺の指はもぞもぞと彼女のお尻の下へと這入り込み、ついには本丸の辺りでうねりだしたのであった。手の平を潰すシャーロットの尻の重みと柔らかさがたまらず、――しかも、本丸は火傷をしてしまいそうなほどに熱く燃え上がっていた。押せばじゅぶじゅぷとした感触が返って、そこはかとない牝の薫りまで感じるようにも思われた。
それを言うなら雄の薫りもだったが、エロスのないこの世界、流石に薫ったとしても、それの匂いだとはわからないハズ。だよね? それにシャーロットの反応も、勘のいい方であれば気がつくはずだが、マイアには気がつく様子は
――キャスリンと目が合いました。
「………………」
涼やかな美貌のほぼほぼ無表情な細い眼の一流メイド。相変わらず何を考えているのかわからない
はやく、はやく止めないと。
そのためには――、
「ひぃうっ、ふぅう……ッ!」シャーロットの肢体が強張った。
俺は中指を鉤状にして曲げていた。彼女の本陣へと、騎馬武者の如くに攻め入った。
じゅぶぅ、ぐぢゅぅう……、
あまりにも
俺は負けじと、強襲を仕掛けた本陣の隙間を擦り上げ、布ごとその防御を、
ヌヂュウッ!
「ふぐぅッ! ンッ、んぅうううッ!」
シャーロットは思わずといった
やった、やったぞ!
俺はえも言われぬ達成感に囚われた。その所為で、俺もびゅっびゅと射精してしまっていたのだが……、
ぷしゅっ、ぷしゅっ、
と、布ごと指を突き入れた蜜壺から、彼女の歓喜が噴き出しているのを感じたのであった。
《デズモンドは【
――ハイ、魔法が使えるのって、とてもとても便利ですな。
まさか、お互い最後までヤりきってしまうとは、思ってもいなかったのであった。
「本当に、仲が良いんですね」
と、マイアの生温かい眼にももはや慣れてしまったかも知れない。まさかバレてはいないと思うが、彼女が考えているよりももっとすごいことをヤってしまったのだったから。しかし、今の彼女は、生温かい眼というよりは、温かな苦笑だった。
「はぁ、はぁ……」
と、シャーロットは赤らんだ
「ンっ……」
と、時折ぶるりと余韻に震えられれば、俺の股間には再びエネルギーが
『デズモンドさま、もうこれ以上はおやりにはなられませんよね?』
と言わんばかりに、メイドが細い
――まあ、流石にもうこの場ではヤらないけどな。たぶん!
俺は妻の肩にソッと手を回して、労わるように撫でてやった。あえかな声を零し、彼女はすり寄るようにしてくれる。本当ならばチュッチュもしたくはなったところだったが、そこから再び火が点くのを恐れた俺は、あえて自重する!
それでも、ただただ労わって肩を抱くのはセーフなのである。
そんな俺たちに、
「はぁ」
と、マイアはため息を吐いた。そして若干遠い目をする。
「うちの旦那もそんな風だったらよかったんですけどね。すぐに結婚したのが悪かったのかしら。シャーロットさまみたいに、なかなか振り向かずに、ずっとデズモンドさまに追いかけさせるようにしていれば、もうちょっと……、いや、そうしてもなさそうだ……」
「マイアの旦那さまは、大事にしてくれてはいませんの?」
先ほどの余韻が残りながらも、そして俺に寄りかかりながらも尋ねたシャーロットに、マイアは肩を竦めて首を振る。
「確かに、身重のときは労わってはくれましたが、それ以外は全然。農婦なんて、女といっても、対等な労働力ですから。貴族さまのようには――」
「いいえ、違いますわよ」
シャーロットの声は力強かった。俺にもたれかかったままだったけど。
「貴族の女なんて、子供を産むだけの道具ですわ。そして労働しない分、子供が産めなければ……」
俺は、咄嗟にシャーロットの肩を強く抱いていた。俺のその反応に、マイアはシャーロットが子供を産めない体であったことに気が付いたらしい。とび色の瞳が泳いだ。しかし、シャーロットのトラウマを刺激したかと心配してのことだったが、シャーロットはすぐに柔らかく微笑んでいた。
「大丈夫ですわ。今は、デズモンドさまがおりますから」
マイアは、ホッとしたように肩を落としていた。
が、嬉しげな我が妻の様子は良いのだが、また生温かくなってきたマイアの眸には閉口してしまう。
「そうですね、デズモンドさまはずっとシャーロットさまを追いかけていたようですから。この領地に植えられる果物や野菜は、シャーロットさまに良いだろうか、って、ポロッと口に出してたのを聞いていますから」
――ふぉわッ!? 過去が突然現在に向かって射ってきたッ!?
「そうなのですか、デズモンドさま?」と、シャーロットの声には感激の響きがあった。「どうしてこちらを向いてくださらないのですか? …………――ふふ、嬉しいですわ」
照れすぎて、すりすりとしてこられる二十九歳児さまの方を向くことが出来ず、俺はあらぬ方向を向いて、
――キャスリンと目が合った。
こっち見んじゃねぇ!
嗚呼、相手してもらえるのはいいが、やはり「乙女の園」、どうして俺はここに
しかし、――この空気、悪くはない。
そして、
「わたくし、デズモンドさまに出逢えて良かったですわ」
シャーロットがしみじみと言うのである。
「デズモンドさまはこのようなわたくしでも良いと、わたくしを一人占めしたいと言ってくれたのです」
ウットリと、夢見る少女のように。
自分のお腹に手を当てながら。
止めて止めて! デズモンドのお腹が砂糖でいっぱいになっちゃうのぉ、らめぇええっ!
だがこの妻、俺のその様子を知ってか知らずか――いいや、知っていたに違いない。その上で更に砂糖を吐かせようとしてくるのである。
「デズモンドさま、これからはわたくしも領内の視察を行いますわ。これから一緒、ですわよ?」
「ああ、ありがとう、シャーロット。私もとても嬉しい……」
彼女の濡れて熱い宝石のようなエメラルドの瞳に見詰められ、俺はごくりと喉を鳴らしつつ、その想いに応えないわけにはいかないのである。
「あ……」
可憐な妻の唇から花びらのような声が零れ落ちた。
俺は、彼女の華奢な指――さっきまで俺のち×ぽを弄っていた指、と言うと台無しなのだけど、そうとでも言って茶化さないと、俺の砂糖値が耐えられない――を手に取ると、指を絡めながら言うのである。
「そうだ、これからは一緒だ。こうして領内の視察をすることも、朝も昼も夜だって」
「よ、夜……」
おやおやぁ? 何を考えちゃったのかなぁ? エッチなシャーロットちゃんはぁ。と、つい溶け落ちそうな笑みを零しかけ、寸前で踏み止まる。
「ふぅ」と気を取り直して。
「だから、これから私たちの生活を」性活を!「この領で作っていこうではないか。領民の前でこのようなことを言うのはなんだが、私がこの領地を守っているのは、君との生活の基盤が欲しかったからだ」
「私たちが良い生活を送れるのはシャーロット様のお零れというワケですか。ふふっ、久しぶりにデズモンドさまの貴族らしいところが見られた気がしますね」
――あれぇ? むしろそういう評価? ……ま、まあ、この世界の貴族はそういうところがあるけれど……。ツッコみどころが多い気がするけれど、シャーロットもほっこりとした感じで見ているから善しとするのである。
――して良いのか?
まあ気を取り直して(気を取り直してばっかりだ)、
「だから、私の望みは君だけだ、シャーロット。貴族としては失格だとは思うが、私に野心などはない。国や領地よりも君なのだ」
「デズモンドさま……」
と、蕩けきった眸を向けられると、今すぐベッドに連れ込んでしまいたい。が、流石にここで貴族を笠に着てベッドを貸せと頼むのは……ウム、自重すべきである。
そうして二人して見詰め合っていれば、あろうことかシャーロットは、
「ン……」
えっ!? どうして目を閉じて唇を突き出した!? 完全にキス待ち貌です、ありがとうございます! だけど俺、キス貌なんて教えた覚えないんだけどなぁ……、これが魔性、これが
んで、正直なことを言えばこのままキスしてしまいたいのだけれど、ここまで見せつけてきたマイアに、キスまで見せていいものか?
――いや、
キス待ち貌の妻を放って置くワケにはいかないのである。エロチート持ち(自称)の転生者としては!
俺は、マイアとキャスリンが見ているその前で、我が最愛の妻の肩に手を置くと、ゆっくり――、
「……ン、くちゅう……」
ちょちょちょーっとシャーロット!? 普通に舌を挿し込んでこないでくれません!? いや、シャーロットならいつだって大歓迎なのだけど、TPO、TPO! 迷子のTPOはおられませんか!?