身体を焼かれ、押さえ付けられ、穿たれ、三重苦に藻掻き苦しむ母蜘蛛に追い打ちが掛かる。

「牛太郎、必ず殺せぇっ!」

巨大な鳩の影から棍棒を構えた牛鬼が現れて、力強い雄叫びを上げながら突進を始めた。

B級上位である牛鬼の力は、A級下位である絡新婦の母蜘蛛の四割。

だが母蜘蛛は、五鬼童や春日と交戦した後、鳩達に五割五分を削られている。

さらに地獄の亡者達が押さえ付け、蒼依の力を借りた一樹の矢が痛撃した。

もはや力関係が逆転している牛鬼の巨大な棍棒が、動けない母蜘蛛の身体を激しく打ち据えた。


他方、突入した一樹は、巨大な鳩から飛び降りて沙羅に駆け寄った。

そして噛み裂かれた右腕と左足から入った毒を見て、沙羅に告げる。

「これから地蔵菩薩の修法を用いて、毒を打ち消す。俺の気を体内に直接送るしか、助ける手段が無い。人工呼吸と思ってくれ」

意識が朦朧としている沙羅が、ほんの僅かに頷いた。

一樹は無心となって、真言を唱え始める。


『オン・カカカ・ビサンマエイ・ソワカ』

(願い奉ります、地蔵菩薩様、地蔵菩薩様、地蔵菩薩様、あなたを讃え敬い、成就を縋ります)


無心で唱え続けた一樹は、万病熱病平癒の気を練ると、口付けで沙羅に神気を送り込んだ。

「ん……ふぅ……」

一樹の神気が、毒に蝕まれた沙羅の身体に流れ込んでいく。

やがて大量の神気を送り込んだ一樹は、そっと唇を離した。

「水仙、糸で俺と沙羅の身体を結び付けろ。大鳩に乗せて、病院に運び込む」

「はいはい。それとママッ、ボクはダーリンに付いたから。ママを倒すくらい強い人だから、ママも本望だよね。だから化けて出ないでねーっ!」

暴れる牛鬼と、娘の毒を残して、一樹は焼け落ちた巣から飛び去った。