
「これで、最後、か」
何かが生まれた痕跡のあった遺跡で入手した手がかりである黒い粉の最後の一粒。それを、瓶から地面に落とすタウラ。
骨製のリビングソードを倒した際に手に入れたそれを、ルストから
「問題は、それらしき場所がないこと、だな」
タウラの目の前には切り立った崖。前の遺跡のように入り口となりそうなものは一切見当たらない。
「しかし、それでも。手がかりは、ここを指し示している」
じっと目の前の岩の崖を
タウラは懐からアレイスラ教の経典を取り出す。片手に経典を、反対の手に抜き身の剣を掲げると、目を閉じ祈るように
「
タウラの全身をうっすらと覆う魔素が、さざめくように波打つ。
ルストがそのさまを見ていたら、魔素の動きが、託宣を得るときとよく似ていると思っただろう。
目を開けたタウラの瞳は、どこか
その魔素をまとった剣先が崖に触れた瞬間だった。
ノイズのような耳障りな音が辺りに響く。それはまるで鍵で閉じられた扉を、強引に解錠して力ずくで開くような音、だ。
剣先が、崖にめり込んでいく。
ギチギチと耳障りな金属音を立てながら、剣が半ばまでめり込んだときだった。がらがらと音を立て、タウラの目の前に、岩が崩れ落ちてくる。そこには、人ひとりがギリギリ通れるぐらいの穴が開いていた。
はっとした顔を見せるタウラ。しかしその瞳はすぐに復讐に
剣を構えると、開いたばかりのその穴へと身を
どこまでも続くように思える穴。狭くなることはないが、決して広がりもせず、ただただ奥へ奥へと続いている。肩をすぼめ、背を屈めてようやくタウラが通れるほどの狭さだ。狭い場所が苦手な者であれば恐怖を覚えてもおかしくない道行き。
しかしタウラの瞳には、ただ
「不思議な光だ。壁がうっすらと発光しているのか。もしかしてこれが話に聞く、ダンジョンとやらか」
そう呟くタウラ。
「くっ、さすがにこれは、狭い」
タウラは広い空間に出ていた。
「なんだ──これは」
広い広い空間に巨大な何かが見えた。
今まさに目覚めたかのように身じろぎをすると、ゆっくりと動きだすそれ。
あまりの威容に体が硬直してしまいピクリとも動けなくなるタウラ。しかしそれが幸いしたようだ。それは、タウラに気づくことなく、目の前を通り過ぎていく。
ダンジョンの壁が崩れていっているのか、
気がつけば、それはすっかりタウラの目の前からいなくなっていた。
ようやく身じろぎをすると、あとを追うように動きだすタウラ。
ダンジョンには大穴が開き、巨大なそれは外に出て、さらにどこかへと進み続けているようだった。
「──この方向は、もしやっ。はやく、カリーンに知らせなければっ!」
慌てたように呟くと、タウラもその場から走り去っていった。