「え……」

 これって、防衛機構のメインチャンネルだよな。

 日本はもちろん世界に向けて発信しているはず。

 そんなチャンネルでこの質問か。

 くっ……えぐられる。

 俺はダメージをかくし答える。

「いえ、独身です」

「え!? そうなんですか」

 え~っとこのリアクションは何でしょうか。

 何で質問した人がそんなにおどろいたようなリアクションを。

 そんなに四十歳独身が珍しかったのか。いや珍しいのはわかってるんだけど。

 それでも、そのリアクションは結構クル。

「それじゃあ、かのじよさんとかは」

「……いません」

 世界に向けて俺のプライベートが……。

 ちようしやは俺に彼女がいてもいなくてもどうでもいいのはわかってるけど辛い。

「え~~っ、そうなんですか!?

 この驚きよう。

 まるで世界のちんじゆうを前にしたかのような驚き方だ。

「わたしも独身なんですけど、どうでしょうか?」

「え~っと、どうでしょうかとは?」

「彼女としてはどうでしょうか?」

「それは、大変すばらしいと思います?」

「本当ですか?」

 いや、これはいったい何のインタビューなんだ?

 インタビューへどうこたえるのが正解なのかが分からない。

「はい、は~~い、そこまで~~。りんたろ~は疲れているのでインタビューはここまでで~す。視聴者のみなさ~ん、ネクストりんたろ~は後藤隊チャンネルで~」

 凛がインタビューをごういんに終わらせてくれた。

 メインチャンネルのインタビューをそんな終わらせ方して大丈夫なのかとは思ったけど、それより俺の為にそんな行動をとってくれた凛に感謝だ。

 ただ、ネクストりんたろ~ってなんだ。

 ちょっと意味不明のワードが飛び出していたのは気になる。


〝花岡修太朗四十歳独身彼女なし〟

〝おいおいおい、これ大丈夫か? ゴブリンキングキラーだぞ?〟

〝修太朗彼女いないの? 遊びまくってるだけ?〟

〝修太朗ばんざい。新たな英雄誕生だ。しかも独身、彼女なし〟

〝英雄にはほうひめがマストね。修太朗にはワタシ

〝これ、ゴブリンキングとうばつより花岡修太朗独身彼女なしの方がニュースなんじゃ〟

〝もうトレンドってる。しかも世界トレンド〟

〝世界トレンドってヤバいな。世界の修太朗。四十歳独身彼女なし〟

〝修太朗様~今この文香がまいります~〟

〝さいごのリンたん? りんたろ~ってだれ?〟

〝これ、後藤隊ヤバイな。動画の再生数もヤバイ。修太朗もヤバイ〟

〝世界が修太朗にれる〟

〝男の俺でもあれは惚れる〟

〝まさか修太朗、どっちもいけるのか?〟

〝地味にドロップ拾ってたな。錆びたけん

〝ゴブリンキングのドロップってあんななの?〟

〝あのクラスのドロップは属性持ちとかが多いんじゃないか?〟

〝それじゃあ、あれは錆び属性の剣?〟

〝錆び属性WWW〟

〝錆びもしたたるいい男〟


「りんたろ~、ちょっといい?」

「はい、ありがとうございました。助かりました」

「そうじゃなくて~、インタビューにそんな正直に答えなくていいんだからね~」

「そうなんですか? だけどうそはまずくないですか?」

「嘘じゃなくてごまかすとかできるでしょ~。世界中にりんたろ~が独身なのがバレちゃったし」

 ぐっ……改めて人から言われると抉られる。世界中にか。

「まあ、それは結婚しちゃえばいいだけなんだけど」

「いいだけって、そんな簡単に結婚出来たら苦労しないんですよ」

「だ~か~ら~わたしがいるから~」

 凛、本当にジョブ聖女だったりしないか?

 酔っぱらった俺を家にめてくれてなじるどころか、こうやって優しくなぐさめてくれるなんて。

「その言葉だけでじゅうぶんです。本当にありがとうございます」

「本当にわかってる~? 本当なんだからね」

 凛のづかいが心にみる。

 時刻をかくにんするともう十一時を回っている。

 朝が早かったから、結構な時間ダンジョンにいたことになる。

 流石さすがにちょっと疲れた。

 大ゴブリンとの戦いはそれほど疲れなかったけど、そのあとのインタビューでどっと疲れてしまった。

 仕事だから仕方がないけどインタビューは当分えんりよしたいな。

 インタビューというものがあんなに疲れるとは思わなかった。

 いや、俺のインタビューがそうそうあるはずもないし考え過ぎか。

 いずれにしても、ダンジョンでのイレギュラーを無事に切りける事が出来てよかった。

 これが俺のやりたかったこと。

 モンスターから世界をまもる。

 俺の知り合いを、周りの人たちを護る。

 まだただのルーキーだけど、周りの人たちのおかげで、今この場にいる防衛機構の隊員の一員であることにじゆうじつ感を覚える。

 前職をめてでも防衛機構に入ってよかった。

 そのまま地上へのルートに大きな問題が起こることもなく無事に戻ることが出来た。


 残務処理は隊長格がやってくれるとのことだったけど、湊隊長にし付けているようで申し訳なかったので手伝いを申し出た。

 湊隊長も疲れていると思うけど、しっかり手当てがつくからだいじようと断られてしまった。

 本当は無理にでも手伝った方がよかったんだろうけど、ふついも完全には治まってなかったしづかれしてしまったのでありがたく帰らせてもらうことにした。

「あ、修太朗さんひとつ聞いてもいいですか?」

 去り際、昔、俺が車の事故に出くわしてヒーローのごとをしたことを、いくつか質問されてしまった。

 そういえば以前の会話でそんなこともあったとだけ話した気はするけど、湊隊長って俺の会話の内容まで気にかけてくれているなんて驚きだ。

 ずいぶん前のことだし、がらにもないことだったので湊隊長に真顔で質問されると少し気恥ずかしさを覚えてしまった。

 それにしても湊隊長結構くわしかった気がするけど、なんで知ってたんだろう。

 詳しい内容まではだれにも話したことない気がするけど、もしかしたらこの前の飲み会で口が軽くなって話したのかな。


「りんたろ~このあとどうするの」

「帰ってますよ。朝早かったですから」

「そっか~。じゃあ、今度はゆっくり朝食食べようね~」

「あ、はい」

 そのまま、凛とも別れて自分の部屋へと戻り、すぐにねむることにした。

 こういう時に今の部屋は近いので助かる。

 そういえば凛のあれはどういう意味だったんだろう。

「今度はゆっくり朝食食べようね~」

 あれは、またいつしよに食べるという意味だったんだろうか。

 いや、そんな深い意味はないのかな。

 いまさらだけど今日食べた凛が作ってくれた朝食しかったな。

 よく考えたら母親以外の人が作ってくれた手作りの朝食なんか食べるのいつぶりだっただろう。凛はやさしいし、料理もくて、かわいくて最高のおくさんになりそうだな。

 まあ、俺には全くえんのない話だ。

 出勤してダンジョンにもぐって、休みの日は部屋で寝る。

 充実してるけど、どう考えてもそういう出会いはなさそうだし、そこは期待できそうにはない。ダンジョンに出会いを求めるのは無理があるな。

 朝も早かったしさすがに眠くなってきた。

 それにしても、あれだけの数のモンスターを相手にするのも、あんな人数でいつせいに戦うのもはじめてだったしいい経験になったな。

 四十歳になってから四ヶ月。

 俺のだいどう士としての人生はこれからだ。