〝いやいやいや、修太朗避けてる〟

〝イケオジかいもすげえええええ〟

〝人間……なのか?〟

〝それが修太朗〟

〝魔王のよめにして〟


「ガアアアアアアアアアアアアア~!」

 大ゴブリンが三度目の咆哮をあげると、全身の筋肉がりゆうし、一回り大きくなった気がする。

 咆哮を終えると同時に殴りかかってくる。

 なんとなく風切り音が増し、スピードも上がった気はする。

 ただ、それだけだ。

 よく見ていれば十分かわせるし、当たらなければいいだけなのでそれほど危険は感じない。

 むしろ、腕からの出血は増えているようにも見える。

 大きくなって血流がアップした上に、こちらにラッシュをかけてきたせいで腕からの出血量が増えたのかもしれない。


〝イケオジすげえけどゴブリンキングとまらねえ〟

〝これ、ゴブリンキングが止まらなきゃ勝ち筋なくね?〟

〝修様~!〟

〝スピード全然落ちん。王種けたちがう〟

〝片腕なくてもこれか〟

〝怖すぎる〟


 血を流しているからか大ゴブリンの動きがじよじよおそくなってきた。

 もういつでも倒せそうだな。

 これ以上時間をかけてもまずいし、そろそろ終わりにするか。

 隙だらけの大ゴブリンをけに斬りつける。

「ボギン」

 鈍い抵抗とともにこつ部分に当たったしゆんかんけんが根元から折れてしまった。

「あああああ~!」

 支給品の剣が折れてしまった。

 やってしまった。名刀とおぼしき切れ味を見せていた剣が折れてしまった。

 完全におれのせいだ。

 俺の技量不足。

 それに尽きる。

「りんたろ~~~!」

「修太朗さん!」


〝やべえ、剣が折れた〟

〝標準装備じゃ無理だった〟

〝良く標準装備でここまで〟

〝おわた〟

しゆうりようのお知らせ〟

〝さらば修太朗〟


 とにかく手持ちの武器が無くなってしまった以上魔法で倒すしかない。

 大ゴブリンの動きは見えてるし問題ないな。

 周りにめいわくかけないようにしとめるには氷かな。

「大気に宿るゆうきゆうせいれいよ、そのれいぶきを放て。が求めに応えて、ここにその姿を現せ! 『アイスバレット』」


 剣が折れたとはいえ、かなりのダメージをあたえたのはちがいなく、さらに動きの鈍った大ゴブリンの反撃をかわしながらちようきんきよから氷のだんがんを放つ。

 さすがに動きながらの上、酷い二日酔い状態での詠唱は魔力のせいぎよまで意識をくことが難しく、発動した弾丸は学校で的をこわしてしまったそれと同等程度まで大きくなってしまっていた。

「ボンッ」

 きよだいしてしまった氷の弾丸が大ゴブリンの頭にれると、れつおんとともに大ゴブリンの頭がはじけた。

「なっ!」

「あっ!?

「うそっ」

 うん問題なく倒すことが出来た。

 周りから声が上がったのが聞こえる。

 もしかしてだけど『アイスバレット』が大きくなりすぎて悪目立ちしてしまったかもしれない。

 それよりも、やり過ぎて俺が弾けなくてよかった。


〝あ〟

〝は〟

〝お〟

〝え〟

〝ええええええええええええええええええ〟

〝たおした? たおしたよね〟

〝なんか氷のばくだんがさくれつしたように見えた〟

〝キングの頭が……〟

ちようきゆうほう?〟

〝初級。間違いなく初級魔法『アイスバレット』だけど威力はちようきゆう

〝ごめん。頭が悪いのか理解できない〟

〝ゴブリンキングをワンパン〟

〝おおおおおおお~!〟

〝すげえ、すげえ、すげえよ修太朗。いや修太朗さん〟

〝もう好きにして〟

〝うおおおおおお。俺は歴史のもくげきしやに!〟

〝これはCG!? いやCGをえる現実〟

〝同接500万超えてる。統合チャンネルでもこの数字はやべえ〟

〝500万人が勇者修太朗誕生の目撃者〟

〝あれ? 魔王修太朗じゃなかったか〟

〝勇者で、魔王で、イケオジでとにかく最強!〟


 しぶとく動いていた大ゴブリンも頭をなくして動くことはなくそのまま消滅した。

 大ゴブリンは倒したけど、まだそれだけだ。

 たかが大ゴブリン一匹倒したからって戦況が変わるわけもない。

 俺はすぐに周囲のモンスターへと意識を移す。

 理由はわからないけどモンスターたちの動きが鈍り、うきあしっているようにも見える。

 そのすきをくように隊員たちが攻撃をかけ盛り返していく。

 俺もみんなに置いて行かれないよう、魔法を連発してモンスターを倒して回る。

 さっきは魔力をめすぎたので意識して魔力量をおさえて放つ。

 やっぱり剣とは違い、自分のペースで放てる魔法は戦闘が楽だ。

 おかげで大ゴブリンとの戦いで使った体力も結構もどってきた。

 運動不足気味の俺に剣での戦いが向いてるかと言われればかなり微妙だ。

 今後のためにもどこかで剣の使い方も習った方がいいんだろう。

 スニーカーを買ったにもかかわらずまだジョギングには行けてないし、健康のためにも体力をつけるためにも早く始めた方がいいな。

 それからしばらく戦闘を続けると、ようやくその場のモンスターをいつそうすることに成功した。

「りんたろ~!」

「凛」

 よほど俺の戦い方が危なっかしかったのか凛は俺へと飛びついてきた。

「りんたろ~心配したよ~。えぇ~ん」

 え!? 本当に泣いてる?

「死んじゃうかと思った~ええぇ~ん」

 そんなに心配してくれてたのか。

 ぼ~っとしていた頭が一気に冷えてかくせいした。

 この中じゃ俺が一番新人だろうし、やむを得ない部分もあったとは思うけど女性を泣かせるほど心配させるとは。

 これは、もっとうまく戦えるようにならないとまずい。

 反省だ。

 いや、それよりもやらかした俺の事をなみだを流すほど心配してくれた凛には感謝しかない。

 いつしゆん、聖女なのではと錯覚しそうになるけど、ここは現実世界。そんなはずはない。

 いや、もしかして聖女ってジョブもあったりするのか?

 いずれにせよ、これほど心配してくれてるせんぱいめぐえたことに感謝しかないけど、そんなに密着されると朝方見てしまった凛の姿が頭を過ってしまう。

 俺は、なんて情けない男なんだ。

 こんな時に、そんなよこしまな考えが頭を過るとは。

 俺は、必死に雑念をはらい凛に応える。

「心配おかけしましたが俺はこの通り傷一つないですから。安心してください」

「ほんと心配したよ~まさか一人でゴブリンキングに突っ込んでいくとは思わなかったし~」

「いや、だって凛が逃がすなって」

「そんなの言うわけないでしょ~」

 え!? どういうこと?

 もしかして俺の聞き間違い?

 戦いの最中だったし仕方がない部分もあったと思うけど、凛はあの時なんて言ってたんだろう。

 たしかに逃がすなっぽい声が聞こえた気がしたけど。

 もしかして耳まで老化か!?

 そうなら結構ショックだ。

「修太朗さん、おつかさまです」

「あ、湊隊長」

「この度はだいかつやくでしたね」

「ありがとうございます。初めての事だったんで必死でした」

「それにしてはゴブリンキング相手にゆうがあった気がするけど」

「まあ、あれは大きいだけのゴブリンでしたからそこまででも」

「大きいだけのゴブリンですか」

「はい、ゴブリンはゴブリンですから」

「修太朗さん……」

 え~っと、湊隊長のこの反応はどういう反応だ?

「あっ、すいません。俺支給された剣折っちゃいました。べんしようとかした方がいいですかね」

「ああ、大丈夫ですよ。あくまでただの支給品ですから」

 あれだけの剣だ。本当はかなりのわざものだろうけど、新人の俺のためにただの支給品ということで済ませてくれようとしてるんだろう。

 湊隊長も本当にやさしい人だな。

 再度かくにんしてみたけど、本当に弁償しなくていいらしい。

 値段は怖くて聞くことは出来なかったけど、湊隊長がおこられたりはないよな。

 しばらく、その場にとどまり追加のモンスターがいてこないか確認していたが、どうやら本当に収まったようだ。

「終わったようですね。それでは引き上げましょうか」

 みんなでその場に残されたドロップを拾い集める。

 なんと魔石の数は二十。

 そして大ゴブリンからはびた剣がドロップしていた。

 モンスターから魔石がドロップする事にも驚いたけど、アイテムまでドロップするとは本当にゲームか何かみたいで驚きだ。

 ただ、残されたのは錆びた剣が一本。

 まあ、大きいだけのゴブリンだったしそんなに多くは望めないか。

 湊隊長が話をしてくれて、剣を折ってしまった俺がとりあえず使わせてもらうこととなった。

 ただ、錆びた剣だし、支給されていた業物のような切れ味は望むべくもないかもしれない。

 いずれにせよ、大事な剣を折ってしまった俺が悪い。

 この剣っていだらさびが落ちるんだろうか。

 明日からのたんさくが少し心配だけど、湊隊長たちもいる事だし、まあ心配はいらないか。

 もうなにも無いのを確認して、全員で地上へと向かう。

「凛、ちょっと近くないですか?」

「全然近くないです~。死ぬところだったんですよ~」

「そんなことはなかったですよ」

「りんたろ~は、昔から自己せいが過ぎるんです~」

 昔から?

 どういう意味だ?

 よくわからないけど、心配からか凛がぴったりと横についてくれて、ずかしい。

 お母さんのような気持ちでいてくれてるのかもしれないけど、俺の方がお父さんでもおかしくないのに。

 そのまま歩いていると、カメラをたずさえた隊員が俺へと声をかけてきた。

「え~っと、新人さんですよね」

「はい、そうですが」

「よかったらインタビューいいですか?」

「インタビューですか?」

「はい、ゴブリンキングを退けた新人さんに

「わかりました」

 桜花さんにも昨日インタビューを受けたばかりなのに、またインタビュー。

 みんな俺のインタビューを見ても仕方がないと思うんだけど、たのまれれば仕事なので断るというせんたくはない。

「え~っと、それでは所属とお名前からお願いします」

「はい、今月から後藤隊に入隊しました新人の花岡修太朗です」

「はい、今日はすごいかつやくでしたが、お年をおうかがいしても大丈夫ですか」

「はい。四十さいになります」

「これだけ強くてこれまで防衛機構に所属されていなかったのは何か理由が?」

「いえ、ほうを使えるようになったのが最近なので」

「そんなこともあるんですね。これまでに武道か何かをされてたんですか?」

「いえ、まったく。普通のサラリーマンでした」

「そうなんですか!? ゴブリンキングをはじめ、モンスターをたおす姿はまさにえいゆうそのものに映りました」

「え、英雄ですか? そんないいものじゃないですよ。たまたまです、たまたま。たまたま私が倒す事になっただけで、加減が分からず出しゃばってしまいました」

「ゴブリンキングはたまたまで倒せるようなものではないと思うのですが」

「そうなんですかね。なにぶん初めての事だったのでよくわからないです」

「ちなみに花岡さん、ごけつこんは?」