〝ほんとにダイヤ斬ってみてくれんかな。修太朗ならいける〟

〝水聖だ。それにしても使ってるの初級ばっかだけどまさか初級しか使えないのか〟


 その後も隊のみんながいてくれたおかげで特に苦労することなく終えることが出来た。

 一昨日と同じように事務所へともどってから報告書を書く。

 反省会ではまたみんながめてくれた。

「終わりました」

「おつかれさまでした」

「お先に失礼します」

 隊長ともなると仕事量が多いのか湊隊長はまだ帰れないみたいだ。

「それじゃあ修太朗いくよ~」

「はい、行きましょう」

 どうやら今日は陸人さんたちも用があるのか凛と二人だけらしい。

 凛の行きつけという、職場の近くのおしゃれな居酒屋へ行くことになったけど、今どきの居酒屋さんのおしゃれ度にびっくりだ。

 俺の知ってる居酒屋とは明らかに違う。

 客層も異なっているようで、オッサンがほとんどいない。

「修太朗~、何飲む~わたしはカシスオレンジで~」

「それじゃあレモンちゆうハイで」

「修太朗レモン酎ハイすきなの~?」

「はい、お酒は好きなんですけどそんなに強い方じゃないんですよ」

「そうなの~意外。家でもウィスキーのロックとか飲んでそう」

「あ~無理ですね。そんなの家に帰れなくなっちゃいますよ」

「じゃあ、飲んでみる?」

「聞いてましたか? 帰れなくなりますよ」

「だいじょ~ぶだいじょ~ぶ、帰れなくなったらわたしがかいほうしてあげるから~」

 なんていい子なんだろう。

 不純な考えだけど、こんな子に介抱される男ってうらやましい限りだ。

 俺が学生のころ飲み過ぎたときは目が覚めたらだれもいなくなっていた。

 寒空に誰の介抱もなく今考えても背筋がこおるような思い出だ。

「かんぱ~い」

 凛といつしよに飲むお酒は本当に楽しく料理も三割増しでおいしく感じる。

 家でのいつぱいもいいけど、こうやってやさしいせんぱいと飲むのは格別だ。

 さっき、背すじが凍るような思い出にひたったばかりなのにお酒がすすんでしまうのは仕方のないことだろう。

「おかわり~」

「ちょっと飲み過ぎてないですか?」

「だいじょ~ぶ、だいじょ~ぶ」

 なぜか、俺から連想して飲みたくなったそうで、凛がウィスキーのロックをどんどん空けていく。

 これでもう五はい目だろうか。

 凛がお酒に強いのはわかってるけど、すだち酒よりいしさすがに飲み過ぎなんじゃないだろうか。

「しゅうたろ~、一緒にねこ飼おうよ~。りんろうとかよくない~? 花岡凛太朗~」

 花岡凛太朗? 猫の名前か? なんで花岡?

「犬はきら~い。犬こわすぎ~」

「なんでこわいんですか? なにかあったりしたんですか?」

「ありました~。でも、まだないしょ~」

「ないしょですか?」

「そう。ないしょ~。ほら、凛太朗ももっと飲んで~」

 凛、俺は修太朗。凛太郎じゃないです。

 これは、結構ってるんじゃないだろうか。

 それからも凛のペースは変わらず、ついに十杯目となってしまった。

「凛、さすがに飲みすぎですよ。そろそろ終わりにしましょう」

「え~もういつぱいたのんじゃった~。もったいな~い」

 いつの間にたのんだんだ? それにしてもさすがに飲み過ぎてる気がする。

「もう、控えた方がいいですよ」

「え~このSDGSの時代にもったいな~い。そうだ~わたしの代わりにりんたろ~が飲んで~」

「俺ですか?」

「そう、お酒もったいないでしょ~」

 凛と話してるうちにテーブルには十一杯目のウィスキーのロックが運ばれてきてしまった。

 凛はこれ以上飲むと危険な感じもするし、俺が飲むしかないか。

 ウィスキーなんかいつ以来だろうか。

 少なくともこの十年飲んだおくはない。

 ウィスキーのグラスを手に取って口へと運ぶ。

 うっ、きつい。のどが焼ける。

 これはちびちび飲んだら無理だ。

 かくを決めて一気にあおる。

「ガハッ、ごほっ、ごほっ」

「りんたろ~大丈夫?」

「大丈夫です。それじゃあ、もう帰りましょうか」

「うん、わかった~」

 お会計を済ませて、外に出るまではよかった。

 外に出たしゆんかん一気に来た。

 そもそも、ほろ酔いだったところにウィスキーを一気にあおり歩いたせいで回る。

 アルコールと一緒に視界が回る。

 俺のアルコール分解こうが全く役目を果たす気配はない。

「りんたろ~?」

 やばい。凛を送らないと。せめてタクシーを拾わなきゃ。

 かなり酔ってる凛を一人にするわけにはいかない。

 だけど、回る。

 視界は回るのに、頭がく回ってくれない。

 足がふらふらする。

 ダメだ。完全に酔ってしまった。

 ぼ~っとする。

 あれ? 誰かが支えてくれてる?

 ああ、凛か。

 ふわふあする。

「りん……どこ……タ…………ね」

 凛が何かしゃべりかけてくれてるけどよく聞こえない。

 とにかく、凛をタクシーに……。


§


「リリィン~リリィンリリィン~リリィン」

 こんな時間に誰だろう?

 うう~ん。頭が痛いし身体が重い。

 電話の音に重いまぶたをどうにか開ける。

 あれ?

 なんだろうこのかん

 なんか違う。

 とんが俺がいつも使ってる布団じゃない。

 ベッドもいつものベッドとは違う。

 てんじようも……違う。

 ここ、どこだ?

 え~っと、本当にどこだ?

 ぼ~っとして頭が回らない。

「うぅ~ん、りんたりょ~、もうだめ~」

 俺の横から、ごとのような声が聞こえてきてねむき飛び一気に意識がかくせいした。

 まさか……。

 おそるおそる声のした方へと顔を向ける。

「凛!?

 いや、寝言が聞こえた時点でその可能性しかなかったのかもしれない。

 だけど、目の前の光景に思考が完全に停止してしまった。

 なぜか俺のとなりに凛がいる。

 いるというか、ている。

 なんで……。

 目が覚めて女の子が横で寝ていたことなんかこの四十年一度もなかった。

 いや、厳密にいうと女の子ではないけど母親が横で寝てくれていたことはある。

 だけど、これは全くそれとはちがう。

 そもそも、ここはどこだ?

 俺の部屋でないことはちがいない。

 広くてきれいな部屋だけど、ホテルって感じでもない。

 それに、俺は昨日凛と一緒に居酒屋に行って……。

 お店を出てタクシーを探そうとしてたはずだけど。

 そのあとの記憶が無い。

 そして今のじようきよう

 理解はできないけど、大変なことをしてしまったのはわかる。

 やってしまった。

 なにもおぼえてないけど、凛が同じベッドに寝ている。

 そんな非現実的な状況が、俺を現実へと引き戻す。

 どう考えても俺がやらかしている。

 社会的に終わった……。

 俺は若い女の子相手になんてことをしてしまったんだ。

 よりによって、職場の先輩でアイドルな凛を……。

「りんたろ~、もうむりだよ~」

 全身から変なあせき出してくる。

 もう無理ってなにが?

 いったい俺は何をやったんだ?

 それに俺のかつこう

 着ていたはずの服はなく、下着だけになっている。

 そして、とんしに見える凛のかたはだが見えている。