第4章 四十歳のルーキー
「おはようございます」
昨日しっかり一日休ませてもらった。
やっぱり勤務の次の日がほぼ休みって
一昨日使うことのなかった中級と上級
初日で一階層でやれる感覚はある程度
やっぱり、他の隊員の存在が大きい。
一人だとこうはいかないと思うけど安心感が
朝出勤後装備を整えてすぐにダンジョンへと向かう。
「
「はい、よろしくお願いします」
「今日は様子を見て下の階に降りれるようなら降りてみようと思います」
「そうなんですか」
二日目でもう下の階へ降りるのか。
「今日は、最初から
それはそうだろう。何しろ同接150万という数の
それにしても平日の朝からそれだけの人が見てるって考えただけでもすごいことだ。
「は~いみんな~、きょうも始まるよ~。もちろんみんなお待ちかねの大型新人さんも登場するからね~」
〝おおっ、りんちゃ~んおはよ~〟
〝はじまった。まちきれない〟
〝一昨日のが俺の目の不調でないことを
〝大型新人
〝まってた〟
〝すごくまってた〟
昨日と同じようにスライムを
「花岡さん、ゴブリンが来ます」
「はい」
ゴブリンの姿は俺にはまだ見えないけど後藤隊長には見えているんだろう。
さすがは後藤隊長だ。
「花岡さ~ん、視聴者さんがお待ちかねですよ~。お願いしま~す」
「俺でいいんですか?」
「はい、花岡さんがいいんで~す」
「わかりました。それでは行かせていただきます」
実は昨日ひどい全身筋肉痛に襲われてまだ今日も痛みが残っている。たぶん一昨日使った『ギリスマティ』の副作用だ。ほとんど運動してなかったところにいきなり強化魔法で動いたものだから
やっぱり年かな。
今日は一昨日よりも少しだけ
「古今東西の英霊よ、気高き、その力、その魂、その権能を我に示し、敵なるものを打ち倒す英知を授けたまえ『ギリスマティ』」
うん、問題なさそうだ。
今日は
身体からは濃い金色の光が立ち上る。
〝キタ~〟
〝闘気が!〟
〝エフェクトがかっけ~〟
〝強者のオーラ〟
〝闘神
ゴブリンへと
身体に痛みはあるけど問題なく動く。
このスピード感も一昨日体験済なので驚きはない。
サクッと
返す刀でもう一
うん、やっぱりモンスターとはいってもゴブリンはそれほど強くない。
『ギリスマティ』の効果がてきめんだ。
これだけスパッと斬れれば技量とか関係ないな。
昔読んだ
〝おおっ、フレームアウトしそう〟
〝今日も
〝やっぱり
〝あのゴブリンが
〝人類の敵が紙〟
〝本当にあれゴブリンだった? あのゴブリン?〟
〝すごすぎ。修太朗。すご太朗〟
「ふ~おわりました」
「お
「いやいや、相手はゴブリンですから」
一昨日に続き後藤隊長が褒めてくれるけど、こんなに褒められるとうれしい反面照れくさい。後藤隊が褒めて伸ばす方針なのは一昨日で十二分に理解できたけど、それでもやっぱり照れくさい。
「隊長、花岡さんってもしかしてあれっすか」
「そうみたいですね。大仁田さんが最初にサクッと倒しちゃったからじゃないですか?」
「いや、だって花岡さんにいい所見せたくて本気出しましたから」
「ふふっ、おかげで花岡さんのゴブリン評はかなり低いみたいですね」
「おかしいですって。だってゴブリンですよ?
「まあ花岡さんですからね」
「ですよね~」
〝
〝修太朗なら
〝いや、普通に鉄でも
〝標準装備が
〝もしかしてあれは勇者に伝わる伝説の武器〟
〝勇者修太朗
〝修太朗様~こっち向いて~〟
さすがに二日目なのでペースアップして、どんどん進んで行く。
「あれってもしかして」
「そうですよ~あれが二階層への階段です」
目の前が開けて少し広いスペースに出たと思ったら下に向け大きな階段が現れた。
大きなホテルとかにありそうなサイズの大きな階段が下へと続いているのが見える。
「花岡さん、せっかくなのでこのまま下に降りましょう」
「はい、わかりました」
当初からそう言われていた通り順調に来ているというところだろう。
大仁田さんに続いて階段を降りていくとそこにもさっきと同様にダンジョンのフロアが広がっていた。
「すごいですね。こんなのが何層も。ちなみにこのダンジョンは何層
「今わかってるのは十九層までですね。私たちの
「そんなにあるんですか!?」
「はい」
「ちなみに十一層って日帰りで行けるんですか?」
「いえ、さすがにそれは無理ですね。
「そうなんですか」
十一層
すごい世界だ。
二階層を大仁田さんの先導で進んで行く。
今のところそう一階層と違いはない。
モンスターもいないので自分たちの足音だけが
静かだ。
みんながいてくれるので
「花岡さん、敵です」
「はい」
先頭を歩く大仁田さんがモンスターの出現を知らせてくれる。
「ウルフハウンドっぽいです」
ウルフハウンドというくらいだから
「隊長、どうしますか?」
「そうですね。花岡さんやってみますか?」
「え!? 俺ですか?」
「はい。もし危ないようなら私が責任をもってフォローしますから。それに花岡さんなら大丈夫だと思いますし」
「そうですか。わかりました、やってみます」
後藤隊長がここまで言ってくれてるんだからきっと問題ないんだろう。
犬だしそこまで怖いモンスターではないのかもしれない。
いや、モンスターじゃなくても犬は苦手だけど。
〝おおっ、いきなり修太朗〟
〝ウルフハウンドはスピードあるし結構手ごわいぞ〟
〝
〝いや、ゆっても勇者だし〟
〝聖剣がうなるか〟
耳をすませば複数の
慎重に進んで行くと大型の狼っぽいモンスターが姿を現した。
大きい。
完全に犬の
それに野性的な
初めてのモンスターを前に
変な
しかも、あの時の犬と比べてもはるかに大きく、
いや、大丈夫だ。後藤隊長がいけるって言ってたしダメなら後藤隊長が助けてくれる。
「ふ~っ、行きます。「その
俺の
おそらくは敵モンスターはスピード型。
なんとなく剣でもいける気もするけど、
風の
慎重に魔力量を調節し風に乗せ開放する。
解放された風の槍がウルフハウンドの身体を
続けざまに風の槍を発動し、残りのハウンドに向け順番に放っていく。
魔法のすごいところは、初心者の俺が放っても
風を選択したのは正解だったようだ。
「やっぱり魔法すごいな」
大型のウルフハウンドに緊張したけど思ったよりあっさりと倒すことが出来た。
昨日小谷さんが使っていたので
風魔法は学校で一度も使ってなかったから、ちょっと心配だったけどぶっつけ本番で
「隊長、どうにか上手くいきました」
「はい、ご苦労様でした。
「ありがとうございます。
「花岡さん、私にはもっと気楽な感じで大丈夫ですよ」
「はい、ありがとうございます」
「隊長、今同接180万超えたみたいっすよ。本当に200万いくんじゃないっすか?」
「まあ、花岡さんですからね」
「たしかに。ていうか俺いります?」
「何言ってるんですか。大仁田さんのファンも熱いじゃないですか」
「なんでか俺のファンってマダムが多いイメージなんすよ」
「マダムキラーですね」
「別に殺してないですって」
まだ一回だけだからはっきりとしたことは言えないけどこの感じなら二階層も初級魔法で行けそうだ。
中級は使ったことないし、調整が上手くいくかちょっと不安ありなんだよな。
〝おおっ『ウィンドスピア』連発〟
〝命中しまくってる〟
〝ウルフハウンドの動き無視〟
〝風
〝いや、りんりんは
〝そう可愛いは正義〟
〝イケオジも正義〟
〝イケオジずるい〟
〝やっぱ近接だけじゃなく放出系もやべーな〟
〝ウルフハウンド、今回は相手が悪かった〟
ウルフハウンドがいたところを確認すると地面にキラキラしたものが落ちている。
「何か落ちてますね」
「ああ、
「これが魔石ですか。宝石みたいですね」
「まあ、ある意味宝石より価値がありますから」
地面に落ちているそれは青みがかった小さな宝石のようだ。
話には聞いてたけど、もちろん実物を見るのは初めてだ。
これが魔石。
ダンジョンのモンスターを倒すと時々残されていることがあるというエネルギー
色々と使い道があるらしく隊長が言っていたようにある意味宝石よりも有用らしい。
昨日の一階層では一度も出なかったので、二階層だからドロップしたのかもしれない。
「ドロップはきちんと
「そうなんですか」
「給料より普通にこっちの実入りが多いので心配いりませんよ」
「いえ、別にそういう心配は……」
給与だって前の会社より多いのにそれより多い!?
希少な魔石とはいえ、この小さな青い石がそんなに高いのか。
宝石よりも価値があるって値段もなのか。
それを等分でもらえるとは待遇がよすぎる気がする。
まじめに
「それじゃあ特に
「はい」
魔石は
「花岡さん、歩きながらインタビューいいですか?」
「インタビューですか?」
喜田さんに
いくら新人でも、俺のインタビューに
だけど少しでも
「花岡さんのご
「趣味ですか? 特には……」
「好きな食べ物は?」
「焼き鳥ですかね」
「ご
「え~っと、恥ずかしながらしたことがないです」
「タイプの女性はどういった」
「いえ、自分は選べるような立場ではないので」
「それは、女性から選んでもらえれば特に条件はないということでしょうか」
なんか思ってたインタビューと違う。
結構、俺の痛いところをえぐってくる。
「それはもちろんですが、そんな
「そうですか。そうでもないと思いますけど、花岡さんは今流行の無自覚系というやつでしょうか」
「無自覚系ですか? いや、どうでしょうか。自分ではよくわかりませんが」
無自覚系? そんなのが今の流行なのか? そもそも何を自覚していないのかよくわからない。
「視聴者のみなさん、ということのようです。無自覚系大型新人花岡修太朗隊員のインタビューでした。次回のインタビューもお楽しみに」
え? またインタビューがあるのか? しかもお楽しみにって、今のインタビューのどこにお楽しみ要素があったんだ?
〝きゃ~修太朗様~〟
〝ここにいます。ここにいますよ~〟
〝どこにお見合い写真おくればいいですか?〟
〝修様~今すぐあなたのもとに参ります〟
〝いまのマジか?〟
〝あの感じキャラじゃなさそうだな〟
〝きた~無自覚系イケオジ〟
〝ごちそうさまです〟
〝いや、配信であれはズルい〟
〝女性票がやばいことになるんじゃ〟
〝独身なのか。これは人気出るわ〟
〝つぎはもっと
〝ナイス
「隊長、同接もうすぐ190万いきそうっすけど」
「ふふっ、すごいですね。この隊の新記録じゃないですか?」
「いや、でもインタビューですよ。モンスターとの
「さすがは花岡さん数字持ってますね」
「まだまだですよ~。花岡さんの
「そうですよね。まだ二日目ですから。でもまじめな話なんであの人独身なんだろ。わからんすね」
「花岡さんですから」
「そうですね。まだまだ
初めてのことばかりで
まあ、本来後藤隊は十一階層まで進んでいるそうなので、完全に俺のペースに合わせてくれている状態だ。
俺が慣れるために、モンスターを
配信もあるし皆さんの出番を
本当に隊の皆さんには感謝だ。
こんなに安全にダンジョンでの実地経験を積めるとは思っていなかった。
今日一日で二階層のモンスターにもだいぶ慣れることが出来たし、次回は三階層に向かうらしい。
これだけ厚いサポートを受けているので、初めてでも焦ることなくダンジョンに
ダンジョンを引き上げ、報告書を書き上げる。
報告書も小谷さんが
今日の仕事をすべて終えたけど時刻はまだ十八時だ。
後藤隊長はまだ書類仕事が残っているようだったし、定時ぴったりの退社に少しだけ罪悪感を覚えてしまったけど、「先に帰ってください」といわれてしまったのでおとなしく帰る事にする。
マンションに
「ふぁ~っ、うまい」
部屋に戻ってシャワーを浴びてからの
いままで身体を動かす機会が少なかったけど、ダンジョンは歩くし戦闘で身体も動かすしかなりの運動だ。
剣なんか今まで一度も振ったことなかったんだから当然か。
そして運動の後の
これが文字通り格別というやつだな。
しっかり身体を動かして、仕事終わりにこの一杯。
コンビニの焼き鳥がまた合う。
しかも夢にまでみた防衛機構でモンスターを倒して、少しだけど世の中の役に立ててるだろうし、給与もアップした。
これ以上は望むべくもないけど、ほろ酔い気分で今日の事を思い返してみる。ゴブリンもウルフハウンドもそれほど強い感じでもなかったし自分なりにうまくやれている感覚もある。
そういえば喜田さんにインタビューされたけど、
若くてきれいな人にインタビューされるとなお
結婚なんて高望みはしないけど、これで
いや、そんな夢みたいなことがあるはずないのはわかってるけど、すべてが変わった今ならなんて。
身体が疲れてて少し酔ってしまったかな。
いつになく感傷的になってしまった。
あまり気にするのもよくないと思い、ほろ酔いのまま眠ってしまう。
「う~ん、あれ……。いたい」
もう朝か。よく
やっぱり初めてのダンジョンで疲れてたんだな。
「これって」
目を覚まして身体を動かそうとすると全身が痛む。
これはあれか。昨日の身体強化の反動か。
だけど、最初に身体強化を使って戦った後は、痛いには痛かったけどここまでじゃなかった。
なんでだ?
もしかして……。
これが世にいう老化!?
まさか筋肉痛が日を置いて
いや、でも本当に痛いし、実際にこうなるとショックはでかい。
自分がオッサンだという自覚はあるけど身体もか。
今までの運動不足が完全にたたってる。
隊の人たちはみんな二十代だ。
何もせずに同じにやっていけると思ったのが
俺は、大いに反省し、身体を無理やり起こしてから運動を日課とすることを決意した。
いきなりジムとかいくのはハードル高いし、まずはジョギングとかからだな。
もちろんジョギングシューズなんか持ってないので、お昼からスポーツ用品店に向かい、それっぽいウェアと店員さんに
さすがに今日は身体が痛いので明日の朝からかな。
スポーツ用品店の店員さんが
スポーツ用品店なんかめったに行くことなかったし、親切な人に担当してもらえてラッキーだったな。
