
寒さもいよいよ本格化を見せ始めた十一月の
放課後の教室で、俺は
「
「勉強?」
キョトンとした表情で
相も変わらず一挙手一投足が
十月末に
それから約二週間が
「そそ、ほらもうすぐ期末テストだしさ。二人でいちゃいちゃと愛を語らい合いながら勉学に
「そんなこと言ってる時点で下心しか感じられないんだけど!?」
はぁ、と
大人びた顔立ちは同級生とは思えないほど美しく、相も変わらぬ
そんな彼女は学校のブレザーに黒タイツ。
加えて今日に至っては首にマフラーを巻いていた。
寒さの
本日も最低気温を
「それは仕方がない。俺は
「ばっ──もう! 人前でそういうのはやめてって言ったでしょ!」
ぷりぷりと
教室にはまだ半数ほど生徒が残っていたので、
特に
「これは失礼。……それで、勉強はどうかな?」
「へ、変なことしないなら別にいいわよ。どこでするの?」
「俺の家?」
「変なことしかするつもりないでしょ!?」
正解である。
「じゃあファミレスとか?」
「人が多いと集中できないのよね」
それはなんとなくわかる気がする。気が散って仕方ないよね。
「それじゃあ──」
俺は
☆
静かな校舎を二人で並んで歩く。
テスト期間前ということもあり、現在すべての部活動が禁止されていた。教室に残って勉強している者もいくらかいるが、大半の生徒は帰宅したり場所を移したりして勉強に
そんな中、俺たちがやってきたのは静かな校舎の中でも特に静かな
古めかしい引き戸に
「何気にここに来たの初めてね」
「そうなの?」
「
それはまぁ、なんとなくわかる。結構勇気いるよね。
なんてことを話しつつ
あれだ、トイレに行きたくなる
室内に他の生徒の姿はなく、平素なら
テスト期間前ということで委員会自体がお休みなのだろう。
そんな図書室内は
つまるところ──。
「二人っきりだね」
「へ、変態っ」
「いやいや、
「勉強」
ぐうの音も出ないんだなぁ、これが。
仕方がないので俺も彼女の
「よいしょ、と」
「ちょっと? 近くない?」
「むしろ遠いぐらいだよ」
「いったいどれだけ近付きたいの!?」
「できる事なら
「馬鹿じゃないの!?」
「だからこれから勉強するんじゃないか」
「それ以前の問題でしょ」
否定できない。
「あー、もうっ、馬鹿なことしてないで勉強するわよっ!」
そうしてすっかり勉強モードになった
どうやらこれ以上は相手にしてくれないらしい。
個人的にはもう少し雑談していたかったが、仕方がない。
もともと勉強するためにここに来たのだから。
それじゃあ俺も始めますか、と意気込んで勉強の準備を終えたところで、ふと
「

何しろ彼女が取り出したのは、メガネと呼ばれる
「な、なに!?」
「か、かわわわ、かわいい! すごく似合ってる! やばっ、いつもの
けれど仕方がない。それほどまでに似合っていたのだから。
全体的に丸みを帯びた
色はおとなしい黒で、レンズの奥に
「そ、その、実は最近ゲームのし過ぎで少し視力が落ちちゃったみたいで……それで昨日買ったんだけど……どうかな?」
「さっきも言ったけど、本当にかわいいよ!」
「ん。……ありがと」
「あと好きだよ!」
「し、知ってるわよ、ばか! ……そ、それもありがとっ」
顔を
そんな彼女を見て思わず
☆
「はぁ~、さむっ」
手に息を
あれからは真面目に二時間ほど勉強して、現在時刻は午後六時を五分ほど過ぎた
辺りはとっぷり夜の
正直そろそろ学校に防寒具を
一つのマフラーを二人で使う的なアレとか
何気なく見上げた夜空は晴れており、星を消し去るほどの光量で満月が
「テストは
「
「まぁ、私も
「がんばりたい?」
少々ニュアンスが
「ま、まぁ、その……あんたって、大学とか、どうする?」
「一応行くつもりで考えてるけど……え? なんで大学の話?」
「……つ、つまりは、その……い、
月光が照らす帰り道は、
彼女はこちらの様子が気になるのか、ちらちらと時たま視線をよこしている。
そんないじらしい姿に俺はと言うと──。
「……な、なるほど」
「照れてる?」
「むしろ照れないわけがないんだけど!? さて、市役所の窓口は何時までだったかな?」
「取りに行ってもまだ書けないから」
「ぐぬぬっ」
「ふふ、ほんとバカなんだからっ」
俺の様子がよほど
それからしばらく二人で話しながら歩いていると、駅が見えてきたタイミングで
「そう言えば、テストが終わればもうすぐね」
「確か二泊三日の京都だっけ?」
「そう。……楽しみ」
「俺も楽しみだよ、
「
「そうだね、
「修学旅行よっ!」
はぁ、とあきれた風にため息をつく
しかしその
──修学旅行。
それは花の高校生活においても五指には入るであろうビッグイベントだ。
我らの高校においてもそれは同様で、期末テストの後に
「それにしても京都かぁ。
寺社仏閣・古都京都。伝統ある日本家屋の立ち並ぶ『和』が
それは
「そ、そう! 有名どころだと
それにしてもこれほどテンションの上がった
彼女の意外な一面に、俺の愛は燃え上がる一方である。
もっといろんな
「すごく楽しみだね!」
「……っあ、その」
「? どうかした?」
ふと何かを言いたげに口をぱくぱくさせる
「そ、それからっ──あ、あんたが居るからっ! あ、あんたと……か、
最後は消え入りそうな声で、しかししっかりと伝える
顔は耳まで真っ赤に染まっており、
そんな彼女の様子に、もうすぐ冬だというのに全身が熱くなる。
胸中で彼女への
「俺も楽しみだよ、
「だから修学旅行!」