Intermission 見知らぬ顔にはご用心



 ツワブキ高校の昼休み。

 1─Fの教室では、数人の女生徒が会話に花を咲かせていた。

 しばらくはドラマや勉強の話が続いていたが、次第にとある話題に移っていく。

 停学中のクラスメイトの話題だ。

 ぽかりと空いた席を見ながら、一人のキツネ目の女子が口を開く。

「入学早々、停学ってヤバいよね。なにやったらそうなるのって」

 それを受け、もう一人の女子も続く。

「男関係って話でしょ。相手が先生ってウワサもあるって」

「マジで? 先生なんてオジサンじゃん」

 笑いさざめく女生徒たち。

 離れた場所から男子生徒が声をかける。


「おーい、お前らがいじめるからだろ」

「女子こえー」

「は? あんたらこそ、適当に遊ばれてるだけじゃん」


 男子生徒のえんりよな笑い声に、女子たちもうわの不機嫌さで言い返す。

 ふと、会話がれた瞬間、


「──しらたまさんって、実際のところどんな人なんですか?」


 投げこまれた質問に一瞬、時が止まった。

 質問の主は、長い黒髪をていねいに編みこんだ小柄な女生徒。

 集まっていた女子たちは、互いに顔を見合わせる。


「……そういえば私、あの子と話したことないかも」

「だよね、いつも男子に囲まれてるしさ」

「男子の方が詳しいんじゃない?」


 白玉リコ。入学早々、クラスの男子に囲まれて、気が付けばいなくなっていた。

 ウワサ話に夢中なクラスメイトも、実際の彼女のことをなにも知らない。

 しばらく白玉のことを話していた女子の一人が、不思議そうに辺りを見回す。


「……ねえ、さっきのわいい子って誰?」

「え、ケイちゃんの知り合いだと思ってた」

「私、知らないって。白玉さんの友達じゃない?」


 見知らぬ少女はすでに姿を消している。

 夢でも見たかのように戸惑っていたキツネ目の女子が、ポツリとつぶやく。


「……白玉さん、女子の友達なんていたっけ」



 ──小柄な女生徒が、編み込んだ髪をほどきながら足早に廊下を歩いていた。


 人目をひく見た目にもかかわらず、生徒の間を目立たぬようにすり抜けていく。

 滑るような足取りで校舎から出ると、少女はほどいた長い髪をパッとなびかせる。


 足を止めずに校門に向かいながら、少女は小さくつぶやいた。


「……あの人は、お兄様には少しばかり刺激が強すぎますね」