ミカエル王子の誕生日パーティーの後、ホセ伯爵家のクリスやクルエル子爵令嬢のレディが頻繁に屋敷に来てくれるようになった。
クリスたちはこれまで遠巻きにしていたことを謝罪し、傘下の貴族たちと距離が縮まるようにお茶会などを開催してくれるようになった。その
別にスキルのせいだし気にしてはいなかったけど裏切られないくらいには親密にはなりたかったので素直に甘えさせてもらった。
今はクリスとレディの三人で魔法の訓練を終えてお茶を飲んでいる。
「さすがでしたわ、アブソリュート様! 火、水、土、風の四属性に加えて回復魔法と闇魔法も使えるなんて、わたくし感激しました! 尊敬しております、しゅき‼」
この、たくさん褒めてくれる女の子はレディ・クルエル子爵令嬢。この娘は歓楽街を営んでいるクルエル子爵家の娘だ。クルクルとしたツインテールが特徴的でアブソリュートをヨイショしてくれるよい娘である。おまけに男の
「いや、使える魔法が多いだけで大したことはない。貴族が戦うなら
固有魔法は決められた血統の者しか使えない貴族に代々伝わる魔法である。
条件は十五歳になり継承が認められている者。それまではどんなに才能があっても使えない。
アーク家の固有魔法は『
しかもただの精霊ではなく『精霊王の系譜』と言われる上位精霊十二体の中から呼べるのだ。
原作ではこの魔法は討伐軍の四割を壊滅させるほど強力である。何より裏切らないのがよい。今から待ち遠しく感じる。
(このままいけば、原作のアブソリュートを超えることができる。原作のアブソリュートに負けそうになるくらいの勇者なら今の私なら絶対に負けない。)
俺、アブソリュートは自然と頰が緩み
圧が漏れ出しクリスがゴクリと喉を鳴らす。
レディは
「はうっ! 素敵……」
頭がピンクになっていた。
落ち着いた俺は表情をいつもの仏頂面に戻した。
(あっ、そうだ……)
「クリスよ。学園に入学する時のために侍女を用意したい。そのために、奴隷から選び教育を施したいのだが、お前からホセ伯爵に話を通してもらえるか?」
「ええ。分かりました。ですが、アーク家から見繕えば早いのではないでしょうか?」
「この家の者は好かん」
「「っ!」」
二人は悲しそうな顔をした。
(いや、変に勘繰らないでよ。原作では皆いなくなるから絶対裏切らない人が欲しんだよね。奴隷なら主人を裏切らないし……うん完璧。主人公に隙を与えたくないしね!)
ちなみに生まれた時にいたメイド服を着た老婦は三年前に亡くなった。今はその時の老婦の娘(四十八歳)が俺の面倒を見ている。高齢化の進んだ職場に若い子をいれなければアーク家の屋敷は熟女メイド喫茶状態だ。
いやらしい!
「分かりました。最上級の奴隷を用意いたします。何かご要望はありますか?」
「種族は問わない。だが、自衛能力を持っている者が好ましい」
「なるほど‼ わたくしなんてどうですか」
「いらん」
私は一蹴した。
レディが、はぅ〜と崩れ落ちる。
クリスは華麗にスルーし
「分かりました。そのようにいたします。ご用意できたらご連絡します」
その後は適当に会話をして解散した。

「確かにアーク家の侍女もアブソリュート様を怖がっていましたし、これでは学園でも気分はよくないでしょうね」
クリスはアブソリュートへの配慮が足りなかったと猛省した。
少し考えたら分かったはずなのに。
「はう〜。お
白々しいとレディを見る。
「さっきから、それはなんですか?
レディ・クルエルという女は厳格でかなり計算高い少女だったはずだ。
少なくともこの前見たときは、こんなに軽そうな女ではなかった。
「あら? だってアブソリュート様はあの通りお堅いじゃない。距離を詰めるならこういったキャラの方がいいかと思って。それに面倒そうにはしていましたけど拒絶はしてなかったじゃない?」
ハァとため息を
「というと、さっきの惚れている感じを出していたのはフリだったということですか?」
アブソリュート様の心をもてあそんでいるのかと思い、軽くレディを睨むが、肩をすくめてレディは言い返した。
「いいえ。純愛ですのよ。わたくしも貴方と同じようにアブソリュート様を誤解して、独りにさせてしまった。そしてあのパーティーで助けられた。スキルのこともあの後聞かされて胸が張り裂けそうになりましたわ。もし、今後アブソリュート様がまた独りになりそうになった時、今度は絶対お
前言撤回だ……レディがそこまで考えて道化を演じていたなんて素直に尊敬した。
やはり最初に彼女に声をかけたのは正解だった。
「それにイケメン高位貴族なんてよく考えれば将来有望じゃない? 他の女が手を出さないように
(後者の理由の方が本音の気がしてきた……。まぁアブソリュート様の味方が多いに越したことはない。とりあえず、奴隷に関しては父と相談しよう)
クリスはそう考えアーク家を後にした。