アブソリュート・アークとして生まれてから十年が
生まれてからはひたすら自身を鍛え、勉学に関しては前世の蓄えもあったため、教師から教えてもらえることをすべて学び終えた頃には天才だと絶賛された。
また、戦闘面ではアーク家の騎士団に混じり、訓練や遠征に参加して家臣たちと交流しながらレベルを上げた。
初めは、スキルである【絶対悪】により何もしていないのに印象が最悪だったが、共に剣を交えていくうちに騎士団たちの見る目も変わっていった。仲良しというわけではないが今では普通に尊敬されている気はする。
自分の好きな作品に転生するという状況に当初は困惑もしたし、めっちゃ嫌われるしで驚くことも多かったが慣れていくとそこまで苦労は感じなくなっていた。
何よりも素晴らしいと感じるのは、アブソリュート・アークが才能に恵まれていることだ。まだ十歳にもかかわらず火、風、水、土のすべての四属性に回復魔法と闇魔法を使いこなし、剣術においても一度学べば勝手に強くなっていく異端児。
原作のアブソリュート・アークは自己完結型のチートキャラだった。高い魔力にものをいわせて、上級魔法を連発するゴリ押しに剣を使った接近戦。傷を負えば自分で治す回復魔法、まさに万能といえる。今はまだレベルが低いので原作のように強い魔法を連発できないがアブソリュートである自分には【絶対悪】という成長促進スキルがある。
ストーリーが始まるまで、ひたすら自分を鍛えて仲間を増やしていく方針はかなり順調に進んでいった。
いつも通り訓練をしていた時に父から呼び出される。
父は王国の闇組織の元締めだが、父との関係は良好だった。初めはどんな怖い人かと思ったが、アブソリュートに対しては思ったよりはまともな父親であった。
(敵には容赦なかったけどね。前に帝国の闇組織がライナナ国に入ったとき拷問している所を見せてもらったけど、エグすぎて固まっちゃったもんね。DVされなくてホントよかった)
そうこう考えている間に父の書斎に着きドアをノックする。
トントン
「アブソリュートです。入室してもよろしいでしょうか?」
「入りなさい」
書斎に入り父と向かい合う。アブソリュートに似た顔つきに黒髪、黒目の怖い顔をした男である。年は
部屋には父と執事に私の三人だけだ。父に促されて向かいの椅子に座る。
「勉学や訓練に関しては報告で聞いている。さすがはアーク家の次期当主だ。これからも
(久しぶりに褒められた気がする。ちょっと
「ありがとうございます。精進致します」
「ふむ。では前置きはこれぐらいにして本題に入ろう。来月ミカエル王子の十歳の記念パーティーがある。王族主催のパーティーで今回はお前の同年代が多く集まる。アブソリュートお前も出席しろ」
(ミカエル王子か。確か原作では主人公側に付いていたよな。主人公は候爵家の後ろ盾を得て学園に入学するので現時点では関わりはないが、はてさてどういった人物であったか)
「承知しました」
「ふむ。あまり言いたくはないがお前はスキルのせいで誤解を受けやすい。パーティーでは大人しくしておけ」
(まぁたしかにスキルのせいで印象最悪な私は、傘下の貴族の子供でさえあまり怖がって近づかない。こんな私がパーティーに行ったら
「分かりました。用件は以上でしょうか? なら私は訓練に戻りますので失礼いたします」
退室し、パーティーに関しての対策を考えながら私は訓練に戻った。

「まさか私の威圧をものともせず
愉快そうに笑う現アーク家当主ヴィラン・アーク。
「確か現段階ではレベルは40を超えていると報告を受けておりましたが、少し怪しく感じましたな。まだ上をいっているかもしれません」
執事兼諜報官のスハイが答える。
彼はヴィランの側近であり、領地を持つ貴族でもある。
「流石だな。幼いながらにして騎士団の訓練に耐えるだけでなく、この前私の拷問を目にしても顔色ひとつ変えずにずっと見ていたんだよ。精神面に関しても文句はない」
「十歳の子供に見せるものではないでしょう。それとアーク家の使用人や傘下の騎士団に関してはアブソリュート様の印象は徐々に改善しつつありますが、その他に関してあまり
「闇組織の勢力を今後率いるにはかなり時間がかかるか。まぁ、アブソリュートが継ぐ頃には恐らく王国上位の強さになるだろうから、最悪力で
「おかげで従ってはいますが人望は全くありませんがね」
「アーク家とはそういうものだ。一番大切なのは誰から見ても明確に分かる力、すなわち暴力だ。人望は二の次で構わない」
「まあとにかく今後傘下の貴族たちへの求心力を得るためにはアブソリュート様の印象を改善しなければなりません。でないと今後内側から崩壊する可能性があります」
アブソリュートの悪印象により求心力が得られない、これこそが原作での敗北の原因であり、これを改善できるかで今後大きく変わる。
このパーティーはターニングポイントとなるのであった。