『ライナナ国物語』


 大陸の中で最も栄えているライナナ国にて内戦が起こった。ライナナ国の貴族であるアーク公爵家から数々の犯罪の証拠が内側からリークされ王から討伐命令が出された。

 討伐軍を率いるのは、ライナナ国が誇る勇者であり主人公・アルトと彼に心酔するヒロインたち。

 そしてそれにたいするのはアブソリュート・アーク公爵。ライナナ国にある闇組織を裏で操り、多くの国民を傷つけてきた黒幕だ。

 アーク領に攻め込んだ軍に抵抗するのは当主であるアブソリュートただ一人。しかし彼は強大な力で軍を相手に奮闘していた。

 アブソリュートとの闘いは五日間にも及んだ。

「ホーリーアウト!」

「ダーク・ホール!」

 勇者とアブソリュートの魔法がぶつかり合い相殺される。

 まだ余裕を見せる勇者に対してアブソリュート・アークは目に見えて弱っている。

「ここまでだ。大人しく投降しろ、アブソリュート・アーク」

 いま勇者たちの目の前にいる男、諸悪の根源であるアブソリュートに呼びかける。

 たった一人で勇者たち討伐軍に抵抗し続ける男。

 彼一人に何万もの兵士が犠牲になるほど強力な相手だった。

 だがそんなアブソリュートでも長く続く戦いに消耗している。

 勝敗はもう見るに明らかだった。

「お前のせいでたくさんの罪なき人たちが悲しい思いをしてきた。この戦場でも何万もの兵士が死んだ。だけど……俺はたとえお前でも殺したくはない。大人しく投降して法の裁きを受けるんだ」

 勇者は葛藤しながらアブソリュートに告げる。

 だがそんな提案をアブソリュートは一蹴する。

「この私に投降しろだと? 我が領土を土足で踏みにじり、荒らしまわるお前らに屈しろと? 国王のかいらい風情が図に乗るなよ勇者! 私は命ある限り領地と誇りをかけてお前ら賊を殺し続ける。そんなに犠牲者を減らしたいならこの私を殺してみせろ!」

 とても弱っているとは思えないほどの覇気をまといながら言い放つ。

 その風格は悪といえど、さすがは公爵と言えるだろう。

 だがまんしんそうなのは違いない。

 今の彼を支えているのは、決して膝をつくまいとする高いプライドとそのプライドを保つためにつちかってきた高い戦闘力だ。

 相手は決して折れない。

 ならばこちらも最後までやるしかない。

「アルト、甘さは捨てて立ち向かいなさい。アブソリュート・アークを始末することが一番犠牲者が少なくなる方法のはずよ」

 勇者のヒロインの一人マリアが助言する。

 彼女には何度も助けられてきた。師であり姉貴分であり、そして恋人でもある。

 彼女だけではない。

 幼馴染おさななじみのアリシアも聖女であるエリザも誰一人欠けてもここまで来ることはできなかった。

 彼女たちのおかげで今の勇者アルトがある。彼女たちがいれば負ける気がしない。

 勇者は頭を冷やし呼吸を整え敵を見据える。

「ありがとう、皆もう一度力を貸してくれ。いくぞ、アブソリュート・アーク。俺たちの絆の力でお前を倒す!」

 そこからまた白熱した闘いが続いた。圧倒的な力で実力差を見せるアブソリュート・アークであったが、対する勇者たちは圧倒的な数の力でそれらをカバーし対抗した。やがて、多くの被害を出しながらも勇者の剣はアブソリュート・アークを貫き勇者たちは勝利した。

 そして、闇組織の壊滅に貢献した勇者はその貢献が認められ、再建中であるアーク領を拝領しヒロインたちと仲良く過ごしたのだった。